日々増加の一方をたどる迷惑メールに対する取り組みは、企業の中でも重要度を増している。HotmailやOutlookなどの電子メールプラットフォームを提供するMicrosoftにとっても、迷惑メールは他人事ではない。同社は昨年から約50名の専門チームを結成、迷惑メールへの取り組みを強化してきた。そのスパム対策テクノロジー&ストラテジーグループでジェネラルマネージャーを務めるライアン・ハムリン氏が来日し、同社の迷惑メール対策について説明した。
Microsoftスパム対策テクノロジー&ストラテジーグループ ジェネラルマネージャー ライアン・ハムリン氏 |
「迷惑メール対策において重要な分野は主に5つ。それは、テクノロジー、業界連携、ユーザー教育、法規制、そして取り締まりだ」。このようにハムリン氏は述べ、技術のみでは迷惑メールの撲滅につながらない点を強調した。この5つの各分野について、ハムリン氏はMicrosoftとして取り組んでいる内容を語った。
まず業界内での連携についてMicrosoftでは、AOLやYahoo!などの競合他社とすでに連携し、迷惑メール対処法に関する業界ガイドラインの作成を行っているとした。ハムリン氏は「競合と協調しつつ対策に取り組むことが重要だ。この問題は1社だけで解決できるものではない」と述べる。
法規制についてハムリン氏は、昨年迷惑メールを規制するためのCAN‐SPAM法が米国にて策定された例を挙げ、「こういった法律のサポートは重要だ」と主張。Microsoftとしても、法律を盾に迷惑メールの取り締まりを強化すべく、2003年には全世界で80件(うち50件が米国内)の迷惑メール関連訴訟を起こしていると述べた。
また、ユーザーの教育に関しては「迷惑メール対策をユーザーに押し付けることはしたくないが」(ハムリン氏)としたうえで、「それでも迷惑メールの被害者にならないためにユーザーを教育することは大切だ。わけのわからないメールのリンクをクリックしないよう、またメールアドレスを気軽に教えないよう、注意を促さなくては」という。
そしてテクノロジーについては、現在の取り組みとしてSmartScreenという学習機能を持ったフィルタリング技術をMSN、Hotmail、Outlook、Exchangeなどに採用している。さらに、ハムリン氏によると同社は今後Computational Proofという技術を導入し、正当なメールにはハッシュ値を付加することで、ハッシュ値が確認されたメールは優先処理し、ハッシュ値が付加されていないメールの処理の優先度を下げるという処理をシステム側で実現する予定だという。
ハムリン氏は、現在Hotmailに1日30億通の迷惑メールが届いていることを指摘する。Hotmailでは、迷惑メールであると判断したメールをシステム側に通知するようユーザーに対して呼びかけている。迷惑メールを研究するためのリソースを十分に備えているMicrosoftでは、フィルタリング技術が向上しつつあり、「迷惑メールの数は増加しているが、わが社の製品やサービスの利用者が受け取る迷惑メールの数は減少傾向にある。以前迷惑メールの総数とそれを受け取る数は比例して増加傾向にあったので、これは大きな進化だ」と説明する。さらにハムリン氏は「今後新たな技術の導入で、迷惑メールそのものが減少するはずだ。約2年後にはこの問題を封じ込め、消費者を保護できる日が実現する」と述べた。
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