企業システムにオープンソースソフトウェア(OSS)を導入する際、ITマネージャーはどういった点を考慮すべきなのか。JavaとLinuxを中心としたシステム開発を行うテンアートニの代表取締役社長 喜多伸夫氏は23日、アットマーク・アイティ主催の「企業情報マネージャーのためのオープンソース導入セミナー」にて講演を行い、OSSを導入するにあたってのポイントをコスト面や技術面から説明した。
一方で、ビジネスシーンにおけるOSSをサポートする動きが活発になっていることも事実だ。OSDLの設立はエンタープライズクラスのLinuxをサポートする目的も含まれており、コミュニティでは検証しきれない大規模Linuxシステムのテストも行われている。さらに、2003年にはRed HatがEnterprise Linuxシリーズを発表し、国内の地方自治体などでもオープンソース関連団体が設立されるなど、「OSSをビジネス上で活用しようという動きは確実に進んでいる」と喜多氏は述べている。
OSSを採用するにあたって議論されるポイントのひとつに、TCO(総所有コスト)の削減は可能かどうかといったことがあげられるが、喜多氏は「LinuxとWindowsを比較した場合、ライセンスコストを削減することは可能だが、システム開発や運用コストを考えると必ずしも単純に比較することはできない」としている。それは、たとえばメンテナンスについて考えた場合、プロプライエタリソフトウェアのメンテナンス費用はベンダー側がすべてコントロールするためエンドユーザー側で決めることは不可能だが、OSSではエンドユーザー自身がメンテナンスできるといったことを含め選択肢が存在するためだ。しかし喜多氏は、「ユーザー側にOSSを受け入れるビジョンがあれば、中長期的にはコスト削減できるだろう」としている。
では、技術的な面からOSSとプロプライエタリソフトウェアを比較するとどうなのか。喜多氏は、「Windowsを選択するということは、Microsoftという単一企業にすべてを依存することになる」という。つまり、単一企業の戦略に左右されることはもちろん、テクノロジーの進化もベンダーの進化にゆだねられるということだ。一方OSSを選択するということは、「アプリケーションや開発環境などの選択肢も広がり、単一企業のテクノロジーの進化に左右されることはない」と喜多氏は説明する。ただ同氏は、選択肢が広がるということは、ソフトウェアの組み合わせが幅広いことを意味するため、「すべてのバージョン間、ソフトウェア間での稼働確認ができているとは限らず、できていない際にはテストのための余分なコストがかかる。また、OSSをサポートできる企業が不足していることも事実だ」と警告も与えている。
さらにセキュリティについても「Windowsはシェアが大きいため狙われやすいが、セキュリティホールについてはOSSもWindowsと同様に存在する」としている。ただWindowsにセキュリティ問題が起こった場合はMicrosoftの対応を待つしかないが、「OSSはコードが開示されているため自ら対応しようと思えば可能だ」と喜多氏はいう。
IDCの調査によると、2002年の有償サーバOS市場におけるLinuxのシェアは23.1%。さらにNetcraftの調査では、Apacheウェブサーバのシェアは67.1%にものぼっている。「高いシェアが信頼性を物語っている」と喜多氏は述べ「ビジネス用途にOSSを使える環境は整いつつある。各企業の技術的リソースやOSSサポートができるSIerと相談したうえでメリットとデメリットを把握し、アプリケーションにあわせてOSSとプロプライエタリソフトウェアを使い分けるのがよいだろう」と語った。
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