NECは3月29日、スウェーデンに本社を置くERPベンダーのIndustrial and Financial Systems(IFS) ABに1億スウェーデンクローナ(SEK、約15億円)を出資すると発表した。これによりNECはIFSの7.7%の株式と10.7%の議決権を持つ。また、中国やアジアにおいて共同で製品開発から保守までを行うことも明らかにした。
IFSは1983年に創業し、製造業を主なターゲットにERPパッケージの開発・販売を行っている企業。ソフトウェアをコンポーネント化し、顧客のニーズに合わせて導入・変更が容易にできる点が特徴だ。2003年の売上高は23億3500万SEK(約350億円)で、調査会社のPlant Wide ResearchによればERP業界で第5位の座にあるという。1997年には日本法人を設立している。
左からNECの金杉明信氏、スウェーデン大使のミカエル・リンドストロム氏、IFSのベント・ニルソン氏 |
NECでは1997年よりIFSと業務提携を行い、国内での販売や製品の共同開発などを行ってきた。同社では現在までにIFSのEPRソフト「IFS Applications」を48社76サイトに納入しているという。今回の発表はこの協業関係を強化するもの。
NEC代表取締役社長の金杉明信氏は今回の出資について、「前々から単なる協業だけではない関係を模索していた。ソフトウェア業界では何を一緒にやっていくかという信頼関係が重要であり、この信頼関係がベースにあったことが大きい」と語る。またIFSの創業者で副会長を務めるベント・ニルソン氏はNECの出資を受けることで「事業規模を拡大できるだけでなく、R&Dを共同で行うことでお互いが成果を有効活用でき、IFSは日本市場に対する知見を得られる」とメリットを強調した。
NECは中国・アジアにおけるITソリューション事業を今後の成長事業の1つと位置付けている。同事業の売上規模を年率20%で伸ばす方針で、2005年度には220億円にしたいと 金杉氏は話す。
IFSに出資する約15億円は、昨年12月に行った増資の中から工面するという。金杉氏は増資の際に「今後の成長戦略に資金を使う」と話していた。IFSに対しては役員を1名派遣する用意もあるという。
NECでは今回の提携をもとに、中国をはじめとしたアジアでの共同事業展開を行う。開発面での協力関係としては、IFSの本社に共同開発チームを発足するほか、IFSがオフショア開発を行っているスリランカR&Dセンターにも要員を派遣する。また、中国・アジア地域においてコンサルティングや導入支援など営業活動全般を統括するIFS事業推進チームを共同でシンガポールに開設する。時期は2004年度上旬を予定しており、NECからは4名派遣される予定だ。さらにIFSの上海サポートセンターでは日系企業向けに日本語サポートも提供する。
ERP市場は2000年頃まで急成長を遂げたものの、ここ数年は横ばいが続いている。しかしIFSのニルソン氏によると、製造業を中心にアジアなど世界中に生産拠点を置く企業が増えていることから、各拠点の情報をリアルタイムに連携して迅速な事業展開を可能にするERPへのニーズが再び高まっているという。NECの金杉氏も「企業は国境を越えたサプライチェーンをいかに早く管理するかが重要になっている」と指摘。今後の成長に自信を見せた。
今回の協業に基づく販売目標数については、2004年度が25社、2006年度までの3年間で100社としている。
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