EUの裁定はマイクロソフトの将来を左右するのか? - (page 2)

Mike Ricciuti (CNET News.com)2004年03月25日 23時47分

 Microsoftはすでに、次期Windowsの「Longhorn」に、ホームエンターテインメント、インターネット検索、インスタントメッセージング(IM)、モバイル技術や他の分野の機能が統合されることを明らかにしている。

 Longhornは、CEOのSteve Ballerが「統合型の技術革新」と呼ぶ戦略に基づいて開発が進められており、Microsoftが今後数年間にリリースするほぼすべての製品計画を形づくっているものだ。「我々はこの機能統合により、顧客に対して他に見られない価値を提供する」と、Ballerは昨年夏に社内向けに発表した戦略メモのなかでそう述べている。

 Longhornは明らかにMicrosoftの統合戦略の中心となるものだ。「Longhornのクライアント版に加え、OfficeのLonghornバージョンや、Longhornサーバの機能強化、Longhorn開発ツールやMSNのLonghornバージョンもリリースする」とBallerは記している。

 まだ開発の初期段階にあるLonghornは、2006年頃の発表が見込まれており、次のような主要技術が統合されることになる:

ストレージ:  WinFSには少なくとも、MicrosoftのSQL Serverデータベースから借用した技術がいくつか含まれることから、この動きはWindowsにデータベースソフトをバンドルするものと解釈できると、アナリストらは述べている。EUの裁定を考慮に入れると、この動きが独禁法違反にあたると主張する競合企業が現れることは十分に考えられる。

オーディオ/ビデオ:  Microsoftは単なる音楽やビデオの再生ソフトを超えた技術の開発に取り組んでいる。同社がすでにデモを行っている新しいソフトウェアでは、Longhornのストレージ機能をベースに開発された柔軟性の高い3次元アプリケーションを通じて、オーディオ/ビデオクリップの保存やカタログ化、またはそれを見つけ出すことが簡単にできるようになる。このソフトウェアをMedia Player(Longhornにバンドルされるか、あるいは別に提供される)と組み合わせることで、MicrosoftはRealNetworksやAppleをはじめとする競合他社に対して決定的な優位性を手にすることになる。

オンライン音楽配信:  メディア再生用ソフトをめぐる他社との競争に加え、Microsoftは今年後半にオンラインでの音楽販売サービスを立ち上げる計画をすでに発表している。このサービスが将来ある時点でWindowsにバンドルされる可能性がある。この計画について、Microsoftはまだコメントしていない。

アプリケーション開発:  Longhornのサーババージョンは、現行のWindows Server 2003をさらに上回り、機能フル装備のアプリケーションサーバを、オペレーティングシステムに組み込んだものになる。このアプリケーションサーバには、トランザクション管理機能、改善された統合サポート機能、同社の.NETアーキテクチャの新バージョンなどの各機能が含まれる。こうした統合戦略は、スタンドアロンのアプリケーションサーバや統合用ソフトウェアを開発する、IBM、Sun Microsystems、BEA Systemsなどの競合各社に狙いを定めたものだ。

音声認識:  MicrosoftはLonghornに音声認識技術を組み込むことを計画している。この技術を使ったソフトウェアは、Windowsの一部の機能を音声で制御できるようにするもので、ナビゲーションメニューを選んだり、書類を開いたりすることが可能になる。なお、IBMや他の規模の小さな企業が現在Windows向けの音声認識ソフトを発売している。

セキュリティ:  顧客のほとんどが、今後Windowsに新たなセキィリティツールが追加されるのを歓迎するだろうが、Microsoftのライバル各社はこうした動きを警戒することになる。Longhornでは、同社の「Next Generation Secure Computing Base」が導入されるが、この技術は以前「Palladium」と呼ばれていたものだ。このソフトウェアが提供する機能のなかには、システムやネットワークへのセキュリティの脅威を自動的に監視し、障害発生を回避するというものも含まれる。これが、Symantecやその他のセキュリティソフト開発元の提供するウイルス対策ソフトに含まれる機能の一部と重複する可能性がある。

モバイル:  Microsoftはすでに、同社の「MapPoint」というマッピングソフトを携帯電話ネットワークと連携させるための、新しいソフトウェアの提供を始めており、これを利用してロケーションベースのサービスを提供しようとしている。Longhornの登場で、「Indigo」(開発コード名)とよばれる新しいソフトウェアを通じた携帯機器との連携が強化されることから、こうしたサービスの計画はさらに加速するだろう。Indigoは新しいOSに組み込まれることになっている。

メッセージング:  Longhornは、Microsoftが取り組むリアルタイム・コミュニケーション市場への進出を念頭に置いて開発が進められている。同社は昨年「Office Real Time Communication Server 2003」という製品を発表して、この取り組みを開始した。Indigoには、リアルタイムのメッセージングサービスが含まれるが、Microsoftはこの機能によってIBMやSunなどのIMソフトを開発する他社に対して、優位に立てる可能性がある。

 今回の裁定が下される前に、アナリストのRosoffは、Microsoftにとって重要なのは、EUが具体的にどのような表現を使うかだと述べていた。同氏によると、裁定が対象とする範囲がかなり狭いものであれば、Microsoftは1つか2つの特定の分野でバンドルを制限されるだけで済み、将来の製品計画に劇的な変化が生じることはない。だが、反対に、広範な対象を網羅する裁定が下された場合には、Microsoftがビジネスを行う事実上どの分野でも、バンドルの制限が適用されることも考えられるという。

 「悪魔は細部に宿る」とRosoffは語り、さらに「EUはMicrosoftの進める製品開発すべてを邪魔することなく、しかも同社を規制できるような、うまいやり方を見つけ出さなくてはならない」と付け加えた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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