「すべてのユーザーのために、WindowsからウェブブラウザとMedia Playerを切り離すことはできない」
Microsoftは以前から何度もこの主張を繰り返してきた。しかし実際には、先頃アジアのいくつかの国で、必要最小限なものだけに機能を絞った自社製ソフトウェアの各バージョンを提供するとの誓約を行っていることから、欧州連合(EU)に対する自社の主張の正しさをすでに自らの手で弱めているのかもしれない。
タイの国民にオープンソースソフトが動作する低価格なPCを提供するという同国政府の計画に直面した際に、Microsoftは、Windows XPとOfficeの機能縮小版を組み合わせた特別パッケージを40ドルで提供するという手段でこれに応じた。同様の廉価版提供は、最近マレーシアでも始められている。
欧州委員会は現地時間24日、Microsoftに対して今後90日以内に、Windows Media Playerを搭載しないWindows OSをPCメーカーへ提供しなければならないという裁定を下した。この裁定のなかで、欧州委員会は、ほとんどの消費者がすでにOSとMedia PlayerのバンドルされたPCをハードウェアベンダーから購入していると述べているが、ただし必ずしも欧州の消費者にMedia Player抜きのWindows PCが提供されなければならないと結論づけているわけではない。
Microsoftのアジアでの戦略が、今回の決定にどのような影響を及ぼしたかについては、いまだに明らかではない。なお、同社はすでに控訴の意向を明らかにしている。
Microsoftの幹部らは、アジアにおける廉価版の提供について、海外での製品提供に柔軟性を持たせられるようになったことの現れだと説明している。「我々がタイでの実験を利用して確かめたいのは、『発展途上地域の人々の要求に応えるために、我々は製品を分割できるのか』という点だ」と、Microsoftでビジネス戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるMaggie Wilderotterは述べている。「各地のニーズに応じて、3つのレベル(良/優良/最高)の製品のなかから、どれをどう提供すればいいのかを知りたい」(Wilderotter)
Microsoftの幹部らは、Windows XPのエントリーレベル版は発展途上国向けだと述べたが、しかし他にどの国で同様のプログラムが実施されるかについては明らかにしなかった。同社では、サーバソフトウェアや他のエンタープライズ製品について、同様のプログラムを実施する可能性はこれまで示唆していない。
だが、アナリストらは、世界中の政府からのプレッシャーが高まるなかで、こうしたプログラムがMicrosoftにダメージを与える可能性がある前例を作ってしまったと指摘していた。例えば、調査会社のGartnerは、Microsoftが堅持してきた世界統一の価格モデルがこうしたプログラムの実施で急速に浸食されることになると予想している。「国民が英語を使えるどこかの国で、この種の廉価版提供を始めてしまえば、Microsoftが現行の価格モデルを維持することは、格段に難しくなるだろう」と、Gartnerのアナリスト、Mike Silverは述べている。
それと同じくらい重要なのは、こうしたプログラムによって、各地域のニーズに合わせるためにMicrosoftが各主要アプリケーションを分割するという前例をつくってしまったということだ。
「皆がすでに行われていることを指して、製品の機能縮小版を提供できる証拠だというのは避けられないことだと思う」と、市場調査会社Red MonkのアナリストであるStephen O'Gradyは述べている。
だが、EUの裁定がどんなインパクトを与えるかは、欧州の消費者に提示されるべきだと欧州委員会が主張するWindowsの具体的なコンフィギュレーションの具合によるところが大きいと、同氏は付け加えている。アジア諸国で提供されている機能縮小版Windowsでは、主にPC初心者が使いそうもないようなテクニカルツールが省かれている。これに対して、EUではWindows Media Playerという広く利用されているユーザーフレンドリーなソフトウェアに主眼が置かれている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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