欧州連合(EU)がMicrosoftに制裁を求める裁定を下したことに対し、複数の米連邦下院議員が米国時間24日、これに激しい非難を浴びせ、6億1300万ドルにのぼる前例のない制裁金を課すというこの決定について、EUの規制当局者に再考を迫った。
European Competition CommissionerのMario Montiに宛てたこの書簡のなかで、米下院国際関係委員会に属する10人の議員は、Microsoftに対する米国での訴訟が、すでに同社の独禁法に関する重要な問題を解決済みだと述べ、また米国企業の商習慣については米国が率先して監督していくことが「最大の重要性を持つ」という連名の警告を発した。
民主・共和両党の議員5名づつが署名したこの書簡には、「この訴訟は、米国企業に関するもので、欧州で異議を申し立てた側も主として米国企業であり、しかも関連する製品の設計に関する決定も米国で行われたことだ」と記されている。なお、この書簡に署名したのは、フロリダ州選出民主党議員Robert Wexler、インディアナ州選出共和党議員Dan Burton、カリフォルニア州選出民主党議員Adam Schiff、オハイオ州選出共和党議員Steve Chabotらだ。
米司法省が独禁法違反でMicrosoftを追求した訴訟の結果、両者は2002年に和解に合意したが、この和解内容は「同社の過去の行為に関する問題を解決するための、包括的な規制のスキームを確立しただけでなく、将来予想される競争上の懸念に対処するための、法律遵守に関する詳細な枠組みも定めた。この規制のスキームは、Microsoftが自社製品に新機能を追加できることを保証するが、ユーザーやコンピュータメーカーがこれらの追加機能を見えないようにしたり、競合製品を使用することも認めている」と、同書簡には記されている。
下院議員らは、1998年にクリントン政権によって更新された、1991年の独占禁止に関する協力合意に言及した。「我々は、欧州委員会の調査結果が、Microsoftに対する司法省の先の和解合意の価値を減じることがないよう望んでおり、また親交条約で定められた国際協調の原則を尊重することを望んでいる」と書簡は述べている。
通常の政治的な尺度から見れば、この書簡は強い調子で書かれているが、書簡自体は欧州に引き下がるように明確には求めていない。しかし、この書簡に添付された声明のなかで、Wexler議員とニューヨーク州選出のPeter King共和党議員は、さらに批判を強めた。「米国企業の競争力を我々が維持するのは当然のことだ。本日の裁定は、欧米間の友好関係を傷つけ、米国企業が欧州市場に参加するのを阻止するものだ。欧州連合は、この裁定を再考すべきである」と、Kingは語った。
米国と欧州諸国との間で、独禁法の適用をめぐる衝突が起こったのは、今回が初めてのことではない。かつて、先に米国の規制当局が承認していたGEとHoneywellとの合併案をEUが拒否した際にも、大西洋の両岸で緊張が走ったことがある。この時、George W. Bush大統領はEUの決定に対して公に非難を加えたが、この決定については各方面から、米国企業を犠牲にして、AirbusやLufthansaといった欧州企業の利益を優先するべく考案された、保護主義的な動きと見られていた。
さらに、米国側の政府当局者が、欧州側の当局者について、臆面もなく大きな政府を支持する輩との見方を示すことも時にある。2001年には、時の司法長官代理補佐のWilliam Kolaskyが「EUには国家主義的伝統が色濃くみられ、政府による市場への介入の有用性に大きな信を置いているようなところがある」と講演のなかで不平を述べたことがあった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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