マイクロソフトに襲いかかる新たな課題 - (page 2)

Mike Ricciuti(CNET News.com)2004年03月18日 10時00分

---Intelの最高経営責任者(CEO)であるCraig Barrettは、米国の教育制度では学生が科学や数学を十分に学べないと言っています。弁護士やコンサルタントの養成に偏っていると。この意見をどう思いますか。

 アジア諸国と比較すれば、彼の言う通りです。そして、Intelの廊下を歩けば同じ傾向が見られます。Microsoftではそうでもありませんが。技術系人材の多くは、何らかの形で米国外で教育を受けたことのある人です。また、移民として人材が入ってくる場合、科学分野のほうがより客観的に扱われるという考えがあります。つまり、その人物のコネ(またはコネ不足)や言葉のアクセントが障害とならないかもしれないということです。司法や政治、営業など、ほかの職業では、それが昇進コースの障害となる可能性があります。

 科学の分野では、常に移民の割合が非常に高いと言えます。(ハンガリー出身の)John von Neumannや(英国出身の)Alan Turingなどが米国の科学に果たした貢献は計り知れません。

---海外アウトソーシングについてのMicrosoftの立場はどのようなものですか。どの開発を米国内で行い、どの開発を海外で行うかをいかにして判断するのですか。

 興味深い問題です。商品開発を複数の場所で行うより、研究を複数の場所で行うほうが簡単だということが分かっています。商品開発プロジェクトの一部はインドや中国で行う予定ですが、最も重要な部分は現状どおり米国で行います。最も優秀な労働力はここにあると考えるからです。

 米国は、最も優秀で有望な人材を国内で育てるだけでなく、他国から米国に来られるように再び力を入れるべきです。少し前、ある人の雇用機会を予測するには、その人がどの国にいるかということだけを考えれば良かった。しかしPCとインターネットのおかげで、人々は「コミュニケーションネットワークと共同作業用のソフトウェアがあるのだから、雇用機会を決める最大の要素は教育レベルであるべきだ」と言うようになりました。

 インドでもスキルのない労働者がハイテクの仕事を得ているわけではありません。しかしインドの大卒者は、ソフトウェア開発の分野に限らず、コールセンターや建築、法務関連の業務などありとあらゆる分野で仕事を得ています。どんな仕事でも、今では適度な効率で、遠方でできるのです。

 世界はこうして、より多くの人間のスキルとイノベーションを利用しようとしています。そして、そのために生まれる低価格化は、すべての人にとって素晴らしいものとなります。まさに世界がより豊かになるのです。一部の貧しい国々が今、積極的な開発サイクルに参加するようになる。それは誰にとっても素晴らしいことです。

 米国は、「何を得意分野として維持すべきか」を自問しなければならなくなるでしょう。我々は、知的財産とより良い教育システムの重要性を再認識しなければなりません。1980年代、我々は日本の脅威について心配していました。日本は次々と米国の産業に参入してきて、支配権を奪うのではないかと恐れていたのです。当時を振り返ると「その心配は間違いだった」と言えます。しかし、このことがある程度の謙虚さを生み出しました。単に日本のモデルに合わせるだけでなく、米国の違いや良さを強調することに再び力を入れるようになりました。米国の研究大学の良さも再認識されました。

---それがこの“健全なパラノイア”を生み出したと。

 その通り。我々は、自分たちのコスト構造や焦点、効率性が正しいのかどうかを問い直しました。1990年代の情報通信は世界中に利益をもたらしましたが、その利益は特に米国に偏りました。米国は既に世界で最も裕福な国であることを考えると、これは印象的なことです。

 海外の高学歴な人材をとりまく今日のグローバル競争は、我々にも自分たちの役割や研究資金に関する原則、我々の独特な立場を維持するのにつながる教育のあり方について考えさせるものです。

---だからこそ、政府は自国に有利な法律を制定する責任があると。

 もちろんです。これは大きな問題ですから。政治家も有権者も、今後どのような道を選ぶべきか真剣に考える必要があります。一部の人はこう言うかもしれません。「世界の貿易制度から離脱しよう。企業は高い品質の商品を安すぎる価格で提供している。そうすると消費者は、生活を良くするためにその商品を購入したくなる。これらの商品を買わせないようにしよう。自由貿易には逆行しよう」と。これは、次のような意見と対立します。「よし、我々の競争力をどのようにして上げようか。そして世界中の皆が豊かになるなら、これは良いことだ」

 これは戦争のように、勝者と敗者があるものではありません。この場合、誰もが勝者となる可能性があります。ただしそのためには、何らかの専門分野を持つ必要があります。米国は常に、他国よりも高いコスト構造を持つわけですから、そこを埋め合わせるだけの生産性を持たなければなりません。懸念ばかりを抱いて、我々の強みを理解していない人もいます。強みとは、移民、教育、そして知的財産のことです。

---Microsoftは、どの技術やイノベーションを使って、コンピュータ業界離れを起こしている学生や世間の人々の関心を引こうと考えていますか。彼らの気持ちを高めるために、Microsoftは何をするのですか。それは、オープンソースやLinuxが強い関心を引き出したのと同じ効果を得られるのでしょうか。

 どんな効果があったと?

---この技術や動向に対する人々の興味を引き、自分たちが何かを変えている、何か新しいものの開発に参加できると感じさせたことです。

 それは非常に限られた現象です。本当です。コンピュータ科学専攻の学生のうち、Linuxに携わっている人数を考えてみてください。数百人の学生がLinuxに関わっているのは事実です。しかしコンピュータ科学は、オペレーションシステムとカーネルの段階から次に進んでいます。マシン語を学ぶことはもうないでしょう。Linuxに携わっている人と、米国の学生に起きていることの間に何らかの関係があるとは思わないでください。それははるか遠い外国での話です。米国ではありません。

---わかりました。では、人々の興味を引くためのイノベーションとして、Microsoftは何をしていますか。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]