2003年頃から大手ITベンダーが一斉に打ち出した、ユーティリティコンピューティングという言葉。しかしその実態はなかなかつかみにくいのが現状だ。ユーティリティコンピューティングが市場に登場した背景は何なのか、そしてどのような課題があるのだろうか。このような問題について、IDC Japan ソフトウェア リサーチマネージャーの井出和之氏が2月18日に講演を行った。
IDC Japan ソフトウェア リサーチマネージャーの井出和之氏 | |
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ユーティリティコンピューティングとは、企業がコンピュータやネットワークなどを自社で所有するのではなく、ITベンダーが提供するコンピューティング能力を利用して使った分だけの料金を支払うというコンセプト。ユーティリティは、もともと電力・ガス・水道などの公共事業を指した言葉だ。井出氏は、電力会社がなかった頃にはどこの工場にも発電機があったと指摘し、「電力も最初からユーティリティだったのではなく、自前で作るのが当たり前だった」と話す。その上で、「コンピューティング能力を電力になぞえれば、ITビジネスがユーティリティサービスへ移行するのは至極当然の動きだ」とした。
さらに井出氏は、ユーティリティコンピューティングが登場した背景についても説明した。システムの複雑化に伴い管理が難しくなっている一方で、ユーザーの保守要員は削られてきており、IT予算も以前より厳しくなっている。ここに、ユーザーがユーティリティコンピューティングを求める理由があるという。ユーティリティコンピューティングは初期導入コストが小さく、利用料に応じて課金される点が特徴だ。さらに高い信頼性が前提となっているため、ユーザーにとってはメリットが高いという。
ビジネス面、技術面で課題は山積
しかしこのことは、ベンダーから見るとビジネス上の課題にもなる。ベンダーは膨大な量のリソースを提供することになるため、インフラコストをどう負担するかが問題となる。そのため、ベンダーは財務基盤を強化することが欠かせないという。また、顧客の利用量の計測方法や、サービスレベルの規定方法についても、顧客が納得できるような体系をいかに築くかが問題だとした。
井出氏は技術的な課題についても紹介した。まず挙げられたのが、ビジネスポリシーの記述方法の問題だ。ビジネスポリシーとは、いくつかのジョブに対してコンピューティング能力をどのような割合で割り当てるかを記述したもの。問題は、この実装方法がベンダーによって異なることだ。そのためユーザーがベンダーに合わせた記述方法をする必要があるのだという。
もう1つの問題はベンダー間の相互運用性だ。現在各社が発表しているユーティリティコンピューティングは、データセンターでの利用を想定したものが多いが、これは自社環境下で実現しやすいからだと井出氏は話す。複数のベンダーのシステムを組み合わせて利用することは、「今のところ非常に難しい」(井出氏)という。ベンダーは標準化への対応を進める必要があるが、ユーザーも標準化動向に気を配る必要があるとした。
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