IT大手企業がつくるグループが、無線端末へ配信する音楽やビデオの権利を保護するために、秘密裏に進めてきた取り組みの内容を披露すると見られている。この計画に詳しい情報筋が明らかにしたもの。
情報筋によると、これまで「Project Hudson」と呼ばれていたこの取り組みが、米国時間2月2日に公に活動を開始するという。この取り組みを進めてきていた業界団体のOpen Mobile Alliance(OMA)が、この日デジタル著作権管理(DRM)技術の新しい仕様を発表する。併せて、この技術の普及に務めるIntel、Nokia、松下(Panasonic)、Samsungが中心となって、新しいライセンス認可団体を設立することも発表となる。なお、当初は東芝も認可団体のメンバーだったが、その後脱退している。
このライセンス認可団体の名称は、Content Management License Administrator(CMLA)となり、OMAのデジタル著作権管理標準の最新版の導入普及に務めていく。
CMLAは、無線ネットワーク接続対応の携帯電話など、増え続ける各種デバイスでの著作権侵害に対して、映画スタジオやレコード会社各社が抱く不安の緩和を狙う。この計画に詳しいある情報筋によると、CMLAのDRMスキーマは携帯電話に組み込まれ、暗号化されたファイルが規格に準拠したデバイスにストリーム配信されるようになるという。OMA DRM 2.0 Enabler Releaseと呼ばれるこの仕様は、802.11標準あるいはWi-Fiと呼ばれる標準ベースの無線ネットワークに接続する端末機器もサポートする可能性を秘めている。
情報筋によると、CMLAはDRM分野では比較的新しい計画だが、既に主なコンテンツ権利保有者からの支持を集めているという。少なくとも2社の大手エンターテイメント企業がこの構想の一部に関与している兆候として、OMAが2月2日にロサンゼルスで開くイベントに、Sony Music EntertainmentとUniversal Music Groupの関係者が出席すると見られている。OMAはこのイベントでDRMソフトの最新版をリリースする予定だ。
エンターテイメント企業各社は、自社に所属するアーチストを売り込む新たな手段の1つとして、また商品の新たな販路の1つとして、無線端末機器を活用しようと考えている。多くの大手レコード会社は、リングトーン(着メロ)の制作に乗り出している。また、スポーツイベントのハイライトやニュース放送をベースにした15〜30秒の長さの動画を、携帯キャリアを通じて販売するテレビ局も増えている。携帯電話を使ったテレビ試聴から得られる収益はまだ計測できる段階ではないが、一方携帯電話向けの着メロや音楽ダウンロード配信の市場は、昨年全世界で40億ドルの規模があった。
DRMは、メディア企業にとってますます重要な技術になりつつある。各社は、使用許諾を得ていないコンテンツに容易にアクセスできるようにしてしまう高速インターネット回線やファイル共有ネットワークから、著作権侵害に関する非常に困難な課題を突きつけられている。
ソフトウェアメーカー各社は、オンラインで配信もしくは再生されるたびに利益の一部を得られるようなセキュリティ標準を提供し、メディア業界のDRMに対する需要から利益を得たいと考えている。各社はまた、著作権で保護された音楽やビデオを合法的に再生するために、自社から技術をライセンス取得しなくてはならないハードウェアベンダーからも、相当の使用料を徴収することになる。
Microsoft、Apple Computer、ソニー、IBM、RealNetworksなどの各社が、競合する互換性のないDRM製品を次々に市場に投入し、消費者の間には相互運用性の問題が生まれている。たとえば、AppleのベストセラーであるiPodデジタルミュージックプレーヤーは、同社のiTunes Music Storeから購入する楽曲に採用されている独自のDRMしかサポートしていない。ほかの音楽ダウンロードストアから購入するDRM保護された楽曲は、iPodで再生することができないし、iTunesの楽曲をiPod以外のMP3プレーヤで再生することもできない。
OMAのウェブサイトによると、Nokia、Motorola、Sony Ericsson Mobile Communications、Siemensの各社が合わせて46機種の携帯電話機に、OMAのDRMの初期バージョンを採用しており、またEricssonとOpenwave Systemsは同技術を採用するサーバを開発しているという。
Microsoftの不協和音?
OMAの仕様と、競合する他のDRMスキーマ--特にMicrosoftのWindows Media技術が対応するかどうか、するとすればどう対応するかは明らかでない。
Microsoftはしばらく前からOMAに参加しており、自社がオープンな標準と相互運用性を支持している証拠として同団体との関わりを指摘している。しかし同社はこれまで、Windows Mediaや関連する各種のDRMツールを事実上すべての機器へのコンテンツ配信用の標準にしようと、容赦なく取り組みを進めてきている。
MicrosoftのWindowsデジタルメディア事業部でグループマネジャーを務めるJason Reindorpによると、DRMにとっては相互運用性がカギを握るという。
「DRM技術は、端末機器やサービス間で、メディアのシームレスな流れを実現しなくてはならず、我々はこれを実現できるよう業界の各方面との協力を進めている。全主要レコードレーベル、映画スタジオ、そして50社以上のオンラインコンテンツサービスのほか、60種類のポータブルデバイスがWindows MediaとWindows Media DRMを採用している」(Reindorp)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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