2004年の国内IT投資、4年ぶりのプラス成長で12兆1700億円に

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年01月16日 19時51分

 IDC Japanは16日、エグゼクティブセミナーを開催し、2004年の国内IT投資に関する予測を発表した。3年連続でマイナス成長となっていた国内のIT投資金額は今年からプラス成長となり、2004年は前年比2.2%増で12兆1700億円となるという。

 発表にあたった同社リサーチバイスプレジデント/シニアITアナリストの佐伯純一氏によると、これまでのマイナス成長の主な要因は、経済の不透明さや2002年のITバブル崩壊、国内企業の業績不振など。それが今年は経済環境が改善されつつあることや、投資が控えられていた2000年問題以降からの買い換えサイクルが訪れることからプラス成長へと転じるという。

VPN市場が成長

IDC Japan リサーチバイスプレジデント/シニアITアナリスト、佐伯純一氏

 個別分野の市場規模予測によると、IP-VPNサービスおよびインターネットVPNの成長が顕著だ。2003年の市場規模は、IP-VPNサービスが1110億円、インターネットVPNが200億円で、2007年までの成長率はそれぞれ19.3%と30.5%だという。

 PCについては、2003年の伸び率が3.7%、2004年は4.5%と予想されている。ビジネス市場におけるPCへの投資は、成長しているものの目立った動きは見られない。ホームユースでのPCは、海外状況の不安定さなどが個人消費に響き、昨年前半大きく落ち込んだが、2004年は買い換えが進むとされている。いっぽうプリンターおよび複合機の市場では、プリンタが減少傾向にあるいっぽう、複合機の伸びが2003年は30.8%と顕著なため、全体ではプラス成長になるという。

 サーバ市場をx86、RISC、メインフレーム別に見ると、2003年はx86がプラス成長となり、RISCサーバとメインフレームが同程度のマイナス成長となった。この傾向は今後も続くだろうと佐伯氏は述べ、「Unixサーバやメインフレーム市場は予想以上に縮小した。これまでUnixサーバの縮小は2007年頃まで起こらないと予測されていたが、それが早く訪れた格好だ」とコメントしている。これはハイエンドのサーバがx86機に置き換わっていることを意味するため、「市場規模が拡大するものではない。サーバ市場は縮小に向かっている」としている。

 メインフレーム減少の影響を受けているのがディスクストレージ市場で、当面マイナス成長が見込まれている。またこの市場ではギガビットあたりの価格減少幅が年30%を超えており、低価格化も市場が縮小している原因のひとつといえるだろう。

 ソフトウェア市場は成長し続けるという予測になっているが、エンタープライズアプリケーションの導入が一巡したこともあり、成長は鈍化するだろうと佐伯氏。また、オープンソースのソフトウェアを導入する企業も増加傾向にあり、投資は抑え気味になるという。同じくアウトソーシングや管理サービスなどのサービス分野も、成長傾向は続くが低い伸びにとどまるとしている。

ITベンダーの生き残り策は?

 IT投資金額がプラス成長に転じると予測されているものの、各製品・サービスの低価格化は避けられないようだ。ハードウェア分野ではシェア争いや海外での生産、中国ブランドの浸透などで低価格化が進み、ソフトウェアではLinuxをはじめとするオープンかつ無料のソフトを選択するケースが増えている。ネットワークやテレコム業界でもIPを利用した低価格通信が普及しつつあるのが現状だ。またITサービスにおいては作業の標準化が進み、さらにカスタム比率が低下していることから、ユーザー企業はコストを抑えることが可能となっている。ベンダーにとって利益率は低くなり、「成長が厳しくなる危険性がある」と佐伯氏は指摘する。

 このような状況下でベンダーが生き残るためにはどうすればよいのか。佐伯氏は、「ユーザー側はIT製品の高性能化・高機能化より、自社のビジネスチャンスをいかに拡大できるかに関心を示している。ITベンダーはこのようなユーザーのニーズに対し、積極的な提案をし、ビジネス環境を共に作り上げていくべきだろう」という。「IT投資規模がこれまであまり伸びなかったのは、ユーザーが望むような提案ができなかったためだ。生き残るためにはさらにアグレッシブなソリューションを持ち、ユーザーと共に責任を持ってビジネスを作り上げる覚悟が必要だ。2004年はITベンダーにとって新たな挑戦の年となることだろう」(佐伯氏)

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