米Apple Computerがまた、「自社の技術を使うと破格の低コストでスーパーコンピュータを構築できる」と吹聴している。だが、同社の宣伝文句を真に受けるわけにはいかないというのが真相のようだ。
同社最高経営責任者(CEO)のSteve Jobsは、先週サンフランシスコで開かれていたMacworld Expoの基調講演の中で、バージニア工科大学が1100台のPower Mac G5を組み合わせて構築したスパコンについて自慢話をした。このシステムは、世界で現在3番目に高速なものだが、しかし構築コストはわずか520万ドルだった。ちなみに、同等以上の性能をもつ他のシステムの構築には、この何倍ものコストがかかっている。
実際Appleでは、自社の製品をスパコンに応用できるよう、いくつかのコンポーネントを出している。Xserveサーバには2.0GHzのG5プロセッサが2基搭載されており、またMac OS Xは(BSDという)Unixから派生したオペレーティングシステム(OS)をベースにした強力なOSである。そして新たに発表したXgridソフトウェアは、複数のコンピュータに分散して計算処理を行わせるものだ。
しかし、ユーティリティコンピューティング実現の土台になると見られている重要な技術、クラスタをつかったスパコンとなると、Apple製品を使ったシステムには目に見えないコストが数多く存在する。たしかにバージニア工科大学が機材の購入に支払った金額は520万ドルだが、このなかには構築作業に関わった同大学関係者の人件費数百時間分が含まれていない。全体で19.25トンにもなるコンピュータやルータなどの機材を使ってシステムを組み上げる作業には、数多くの教授陣、スタッフ、学生などが、ボランティアで参加していた。
大学なら、多数の大学院生に手伝わせて、プロセッサ、メモリ、ネットワーク機器をどう組み合わせれば、企図するタスクに最適の形になるかを考え出すことができる。また学生からも力を借りて、他のコンピュータ向けに書かれたプログラムをApple製品で構成するシステムに移植することも可能だ。なお、スーパーコンピュータ分野では、Appleの製品を使ったシステムは普及しているとは言い難く、(スパコンを性能順に並べた)トップ500のリストのなかには、現在このバージニア工科大学のシステムしかない。
このため、同大学でのスパコン構築は、教育目的のプロジェクトとしては非常に素晴らしいものといえよう。だが、実験的な試みにはそれほど興味のない企業ユーザーは、他のベンダーの力を借りることになりそうだ。米Linux Networx、米RLX Technologies、米IBM、米Sun Microsystems、米Dell、そして米Hewlett-Packard(HP)などの各社では、スパコン構築に関するシステムの設計、ソフトウェアのインストールや設定、そして機材の配線接続などのサービスを提供しているが、これらのベンダーがMacを利用することはまずないだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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