サンフランシスコ発--米国時間1月6日に開幕したMacworld Expoで、米Appleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobsは、小型のiPodミュージックプレーヤーや新しいマルチメディアソフトウェア、そしてMicrosoft Officeのアップデート版を発表した。
新世代の超小型ハードディスクを採用した「iPod mini」は、厚さ2分の1インチ(約1.27センチメートル)の名刺サイズで、約1000曲分に相当する4Gバイトの容量を持つ。iPod miniにはシルバー、ゴールド、ピンク、ブルー、グリーンの合わせて5色のバリエーションがあり、価格は249ドル。米国内では2月、その他の国々では4月に発売される。
iPod miniと複数の新しいソフトウェアパッケージの発表は、Macintoshコンピュータの誕生20周年の幕開けとなった。
「今後も多数の発表が控えている。20周年にあたる今年は素晴らしい年になるだろう」と、トレードマークとなっている黒のタートルネックシャツとジーンズを身にまとって基調講演の壇上に上ったJobsは、そう語った。
自社のビジネスの中心を、パーソナルコンピュータから、パソコンをハブとして利用するマルチメディアソフトウェアやハードウェアまで幅広く拡大したAppleにとって、今は非常に重要な時期となっている。しかし、マーケットシェアの小さいAppleが独占していたマルチメディアの分野でも、いくつかの方面からWindowsベースのマシンが急速に追い上げを見せている。
iPodに関しても、「Appleにはすぐにライバルが登場するだろう」と市場調査会社米Creative Strategiesのアナリスト、Tim Bajarinは指摘する。
たとえば、米Rio、米Creative Labs、米Archosの各社は、いずれも20Gバイトの容量を持つ音楽プレーヤーを200ドル半ばで販売している。この価格は容量が5分の1のiPod miniと同じで、20Gバイト版iPodの販売価格399ドルよりも安い。
また、iPod miniにもライバルが登場する。5日には、Rioが4GバイトのNitrusプレーヤーをリリースすることを明らかにし、他のメーカーもこれに続くと見られている。
それでも、iPod miniのインタフェースとデザインは購入者を惹きつけるだろうとBajarinは述べている。
Expoに参加していたMonique Krauer-Redmondも、Bajarinの意見に同意する。Krauer-Redmondはバイオテクノロジー関連会社のGenentechのIT部門で働いている。「iPod miniのサイズが気に入ったし、重さもちょうど良い。iPodを購入したいが、miniが出たことでどれにするか決めるのが難しくなった」(Krauer-Redmond)
だが、もう1人の参加者で州立チコ大学の学生、Jeffrey Cutterは値段の高さが問題になると考えている。「小型でとても格好いいが、まだかなり値段が高い」(Cutter)
さらに前進したiPodとiTunes
249ドルのiPod miniは、小型の廉価版音楽プレーヤー登場の噂が数週間前から飛び交う中で、今回最も期待された発表だった。Jobsはまた、既存の10Gバイト版iPodについても、299ドルに価格を据え置いたまま、容量を15Gバイトにすると述べた。これまでに出された各iPodと同じく、iPod miniも、MacとWindowsの両方に対応する。
Jobsは、iPodの販売台数が、11月時点でMP3プレーヤー全体の31%のマーケットシェアを収めていたことにも言及し、またこの年末商戦には好調な売れ行きを示し、前四半期には合わせて73万台を販売したと語った。
同社のiTunes Music Storeでのダウンロード数に焦点を当てたJobsは、同社が12月中旬の2500万曲から数字をさらに伸ばし、現時点で3000万曲以上を販売したことを明らかにした。12月後半には購入数が急上昇し、1週間で190万曲に達したという。
Jobsはさらに、米Napsterや米Musicmatchといったライバルとの競争が激化する中で、iTunes Music Storeが合法オンライン音楽ダウンロード市場の70%を維持しているとのNielsen/Netratingsの数値も公表した。
Jobsは、数年前から5%を切ったままのコンピュータ市場における同社のマーケットシェアを持ち出し、「シェアで5%を越えるのは気持ちいいものだね」と語った。
iTunes Music Storeは、昨年春に最初のMac専用サービスが始まった時から、Appleが最も力を入れてきたものだ。同社は、iTunesのWindowsバージョンを10月にリリースしたが、これは由緒あるQuickTimeマルチメディアソフトウェアを除けば、Apple唯一のWindowsベースの主要ソフトウェアであり、このサービスが同社の戦略にとって、いかに重要なものであるかを改めて示した。
これらの発表は、今週ネバダ州ラスベガスで開催されるConsumer Electronics Show(CES)開幕の前日に行われた。CESでは、米RealNetworksをはじめとする複数の企業がデジタル音楽ストアの発表を予定している。
なお、iPodのバッテリ寿命やiBookの信頼性の問題に憤慨した顧客の抗議行動が計画されているとの噂も流れたが、Jobsの基調講演前にはこのような行動は一切なかった。参加者は忠実なMacintoshファンが中心で、旧製品に文句を付けるよりも新しいiPodの話を聞く方に関心があったようだ。
新しいiLifeとMac版Office 2004
今回発表された多数の新製品の中でも、Appleは特にiLife製品にかなり大幅な変更を加えている。この更新に伴い、iLifeには新たにGarageBandという家庭用レコーディングソフトウェアが追加された。
ソフトウェアシミュレーションによる数十種類もの音源、仮想ギターアンプ、そしてレコーディングおよびミキシングの機能を搭載した同ソフトウェアは、プロのスタジオで利用する機材の大半を、デスクトップで実現するものだ。
Appleはこれまで、ミュージシャンとの共同作業で認められてきており、2002年には「音楽業界への技術的貢献」からグラミー賞まで受賞している。かつて、ミュージシャンには、Digidesign Pro Toolsなど僅かな数のサードパーティー製ツールしか選択肢がなかった。
GarageBandのリリースは、Sonic FoundryのAcidやCakewalkのSonarといった低価格ソフトウェアパッケージによって、ミュージシャンがPC陣営に流れていることを認めた証といえる。GarageBandには、これらの先行するプログラムで開発された、数多くの機能が含まれている。
このほかに、iPhotoの新バージョンも発表された。Jobsによると、この新バージョンは最大2万5000枚の写真を扱えるようになり、大量のデータ取扱時にも速度が低下することがなくなったという。これまでのバージョンでは、大量の写真を読み込もうとすると速度が大幅に低下していた。
新バージョンではさらに、同社のRendezvousソフトウェアを利用することで、無線もしくは有線ネットワーク経由で、異なるコンピュータ間で写真を簡単に共有できるようになっている。
同社のベーシックデジタルビデオ編集ソフトウェア、iMovieにも、オーディオ処理やタイトル作成機能の改善、AppleのiSightウェブカムからのビデオ読み込み機能など、いくつかの新機能が搭載された。同社のDVD制作ソフトウェアであるiDVDではナビゲーションとエンコーディングの両機能が改善されている。
Jobsによると、GarageBand、iTunes、iDVD、iPhoto、そしてiMovieが同梱されるiLifeパッケージの価格は49ドルだが、新しいMacには無償で搭載されるという。同社は昨年慎重に検討した結果、今後はiPhotoやiMovieの無償ダウンロード提供を行わないが、この戦略には一部の顧客から不満が出る可能性がある。
ソフトウェア関連としてはさらに、今春リリースされるMicrosoftのOffice 2004と、Final Cut Express家庭用ビデオ編集ソフトウェアの新バージョンなども発表された。
多くの見込み客がMac購入の重要な要件としてOfficeとの互換性を検討することを考えると、Mac Office 2004が出ることはAppleにとって朗報だ。Microsoftはこれまで、次期バージョンのMac版Officeについて多くを語ってこなかった。
今回のMacworldでは、主力製品であるMacのアップデートはひとつもなかったが、ただしサーバ関連はXserveおよびXserve RAID製品の新モデルが発表された。
新しいXserveでは、CPUがG5に変わったほか、いくつかの変更が加えられている。2GHzのシングルプロセッサ搭載サーバの価格は2999ドルで、またデュアルプロセッサ搭載モデルのほうは3999ドルとなっている。
ストレージ関連では、Xserve RAIDが新たにアップデートされ、データ保存容量が最大3.5テラバイトに増加した。価格のほうは、1テラバイトモデルが5999ドルで、3.5テラバイトモデルが1万999ドルだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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