オープンソースを武器にSIビジネス拡大を狙うNTTコムウェア - (page 2)

インタビュー:末松千尋(京都大学経済学部助教授)
構成/文:野田幾子
編集:山岸広太郎(CNET Japan編集部)
2004年01月09日 10時00分

オープンソースによるソフト開発の変化

末松: 先ほど、技術を自分たちできっちり押さえるために人材育成をしたいとおっしゃっていましたね。NTTコムウェアにはLinux技術者が約3000人いると伺っています。

長野: そうです。ほとんどの技術者がLinuxとJavaを理解できるように教育しています。とにかく自分たちで開発するのが重要だと思っていますし、外注文化になってしまうのを避けたい。一応我々もEJBのフレームワークのようなものは持っていますし、EJBの部品を再利用しようとは言っていますが、ソフトハウスに発注しているとそれがなかなかうまくいかないんですよね。

末松: NTTコムウェアはオブジェクト化が進んでいるということでしょうか。

長野: 大きく成功しているわけではありませんが、少しずつ進んできています。オブジェクト化は、何をするにもキーになると思っていますから。

末松: いま経営の方でオブジェクト化──つまりモジュール化に関する議論がありましてね。日本の経営は「インテグラルモデル」と言って、人間関係が濃密なのが強味であり、それを分解すれば日本のよさがなくなるのでは、という議論が盛んなんでが、私は、インテグラルモデルだけでは、今起きている競争ルールの変化へは付いていけない気がするのですが。

長野: 確かに日本文化に即した企業作りが有効な業種もあるでしょうが、IT産業に関して言えば、分野ごとに専門家を育てていかなければ、競争に参加さえできないでしょうね。

末松: 特にいまオープン化の波により、インターネットに潜在する資源をどんどん使う時代にITが変わってきているでしょう。これまで様々な分野の企業に話を聞いてきましたが、例えば家電や携帯電話端末の分野でも「一から十まで自社で開発するのでは、製品が出来上がるまでに時間がかかりすぎる。既に存在するものは活用しないと、世の中のスピードに付いていけない」と言うんです。しかし、自動車産業のような日本型経営の本丸にも、とうとう変化が来ています。

長野: なるほど。金型開発でもインクスのような会社が出ていますしね。実はソフトウェアの世界は製造業に比べて、我々が入社したときと何も変わっていないに等しいと、個人的には危機意識を感じているのですよ。要は、上の世代がやってきたことを単に同じようにやっていけばいいと思っていて、形だけは真似してきても本質を無くしてしまっているのではないかと。団塊の世代が若手に技術が継承しないで去ってしまえばもっとおかしくなるのではないか。2000年問題はクリアできましたが、これから来る2007年問題、つまり団塊の世代が退職してシステムのメンテナンスができなくなることの方がもっと深刻なのでは、という話もあります。

末松:今まではどちらかというと見せると言うよりは、他の人に分からないように書くと言っても過言ではないといった感じだったということですか。

長野: どの企業の技術者もそうだったのではないでしょうか。仮にグループ内企業ではオープンにしていても、外部の企業へは公開できないことがほとんどでした。なぜなら、下請けの企業が儲からなくなってしまうという現実がありますから。

末松: 他の人にわかるように書くということは、これまでの技術者のあり方からいくとかなり画期的だということですね。そういう意味では、Linuxやオープンソースはうまくできていますよね。

長野: ええ、そうなんです。オープンソースとして他人にソースを見せることによって、自分たちだけがわかればいいといった時代に比べて開発力が上がったと感じています。過去に開発してきたものはどんどん蓄積されてもきますしね。ですから、オープンソースの採用によってもう一度、技術者の教育をし直せると考えています。これまで商用ソフトの世界では、技術者は米国へ研修に行き、自分が習ってきたことをただ偉そうにダビングするだけだったし、私たちもそれが必須だと思いこんでいた。それを大きく変えられる機会なのです。

末松: オープンにすることで白日の下にさらされ、技術が向上する。当たり前のことですが、これまでなされてこなかった。オープンソースが契機となって、当たり前のことが実行されるようになるという事例は非常に多いと思いますが、こんなところにも現われていたんですね。

インタビューを終えて

 技術を隠匿し、新参者にはわからなくして、自身の存在価値を守る。これは、ソフト業界の問題というご指摘だったが、日本に代表されるクローズな社会全体の問題といえるのではないだろうか。共同体の仲間全員が脱落しないように、どんな非効率があっても全員を守りきるという温情が悪く出た側面である。それでもなんとかなる社会環境であれば議論の余地もあるが、全体が死滅するとしたら、それがありえないのは明らかである。これは中国人に、「日本は社会主義国家」と揶揄されるゆえんでもある。

 そのような環境では、革新にはついて来られない人が出るから、革新は悪ということになってしまう。真に革新的な試みをする企業がやってこられなかったのも当然だろう。

 シリコンバレーの企業のマーケティング・バイブルには必ず「アーリーアダプターをねらえ」とあり、日本でもオウム返しにされるが、日本に本当にアーリーアダプターがいるのだろうか。いるとすれば、信念に裏付けられた強い意思を持つ人もおられるが、現状では、奇人、変人の部類だろう。

 日本の再活性化にだれでも簡単に貢献できることがある。どちらでもよい場合は、(ベンチャーから買えとまでは言わないが、せめて)より革新的な企業の方から購入することである。アーリーアダプターが少しでもこの国に増えれば、いつかはベンチャーが成功する日も来るかもしれない。

2004年1月9日 末松千尋

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