企業でのVoIP、導入のピッチは緩やか

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 2003年には、VoIPを新規に導入するとの企業による発表が毎日のように出され、各社の間ではVoIP(Voice over Internet Protocol)がブームとなった。しかし、実際の作業はようやく始まったばかりというのが、現実のようだ。

 旧式の構内交換機(PBX)を廃止して、エンドツーエンドのインターネット電話を利用したいと企業の大半が考えるようになるまでには、数年はかかるだろうとアナリストらは述べている。したがって、米Cisco SystemsなどIP電話推進派が主張するIP電話の未来が実現するまでに、まだ相当時間がかかる可能性がある。

 「大企業が旧式のシステムを放り出し、新たなシステムに切り替えた例はまだない」と市場調査会社米IDCのIP電話プログラムディレクター、Tom Valovicは述べている。

 ほとんどの企業は、VoIPの設置を段階的に進めている。Cisco Systems製や3Com製のIPベースのPBXを使用している企業は、リモートオフィスや支社など、限られた場所にしかVoIPを設置していない。仏Alcatelや米Avaya、加Nortel Networks、独SiemensなどメーカーのIP対応PBXを採用し、従来のデジタル電話とIP電話の両方を設置している企業もある。また、一部で完全なIP電話ソリューションを配備し、それ以外のオフィスでは徐々に移行するといったように、両方の方式を採用している企業もある。

 「IP対応のPBXを設置している企業の約90%では、IPと時分割多重方式(TDM)の両方が使用されている」と米Infonetics Researchの主任アナリスト、Brian Riggsは述べている。

 TDMは、通話のためにエンドツーエンドの接続を実現するので、回路切替技術としても知られている。一方IPでは、通話の音声をより効率よく伝送するためパケットに分割し、受信側でパケットを結合し直す、パケットスイッチ方式を利用している。

 企業の規模と既存のIPインフラの状態により、VoIPネットワークの設置が完了するまでには数年かかることもある。たとえば、シカゴにある中小企業向けの会計・コンサルティング会社Grant Thorntonは、2001年にVoIPの設置作業を開始してから、すでに3年めに入っている。

 同社には全米に51のオフィスがあり、従業員数は約3500人。そんな同社では、従業員が既存のデジタルアナログ回線を使い続けることも、IP電話も利用することもできるように、交換機による電話ネットワークも維持可能なAvaya製のハイブリッドPBXソリューションを導入している。

 「こうしたものの設置を始めると、やらなければならないことがいかにたくさんあるか実感することになる」とGrand Thorntonの国内通信マネジャー、Kevin Lopezは言う。「最初に5桁のダイヤルシステムを実装した際、多くのIPアドレスを変更しなければならないことが分かった。我々は、ネットワーク全体を始動するためには、実に多くの作業が必要なことを実感したため、より長い時間をかけて取り組むことにした」

 同社はそれ以来、統合型メッセージなどのサービスを徐々に配備してきており、従業員がノートパソコンから電話をかけられる「ソフト」電話技術をまもなく実装するところだ。同社の一部のオフィスでは、すべてIP電話に切り替えられているが、ほとんどのオフィスでは依然IPと従来の交換電話ネットワークの両方が混在しており、VoIPの普及率は約7%しかないという。

運営コストのかかるIPインフラ

 企業の規模が大きければ大きいほど、サービス設置に時間がかかるケースが多い。IP電話の基本的な導入が、時間のかかる労働集約的な作業であるばかりでなく、現在使用されているIP技術にも、従来のデジタル電話以上に管理やメンテナンスが必要となるためだ。

 「普通のデジタル電話はアップデートする必要がなく、ただ線をつなぐだけで使える。しかしIP電話ではソフトウェアのアップデートが必要になる。そのためのスタッフを確保し、こうしたアップデートが必要な時期をユーザーが理解できるようにしなければならない」

 大規模なネットワークでは、既存のIPインフラがVoIPサービスによる負荷増を処理できることを確認するため、より多くのテストを実施する必要もある。なかには、インフラを追加配備しなければならない企業もあるだろう。

 たとえば全米規模のダイエット会社米Jenny Craigは、1年半かけてネットワークをIP対応に切り替えた。同社は北米のオフィス430カ所と、オーストラリアとニュージーランドにある130のオフィスを暗号化IPトンネルで単純に結ぶことからスタートし、現在ちょうど、支社間でIP電話サービスを開始しようとしているところだ。

 「我々はまだ、VoIP技術に手をつけ始めたばかりだと思う」とJenny Craigの技術ディレクター、Jeff Nelsonは言う。「さらに進めば、あらゆるものがIP経由で行なわれるようになるだろう。しかし我々は、時間をかけて進めていこうとしている」(Nelson)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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