理想のITシステムを考える:オラクル、富士通、IBM幹部が集結

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年11月20日 19時22分

 日本のIT業界のリーダーともいえる面々がガートナージャパン主催のイベントに集結した。都内にて開催中のSymposium/ITxpo 2003で基調講演パネルディスカッションに登場したのは、日本アイ・ビー・エム常務執行役員ソフトウェア事業担当の堀田一芙氏、日本オラクル代表取締役社長の新宅正明氏、そして富士通経営執行役常務システムプロダクトビジネスグループ長兼プロダクトビジネス企画本部長の伊東千秋氏だ。3者は、リアルタイムエンタープライズ実現に向けての課題や方向性について語った。

 まず現在の企業の課題としてIBMの堀田氏は、「経営者が自社の強みを把握し、それに基づいた優先順位を決めること。そしてビジネス戦略とIT戦略をつなげたものにすることが重要だ」という。また富士通の伊東氏は、「オフィス業務やサプライチェーンでのIT活用はうまくいっていても、営業現場などで何が起こっているのか、うまくトップが把握できていないことがある。現状を迅速にトップに伝えるようなしくみが必要だ」と語る。

 つまりは企業全体としてすべてがつながった仕組みがリアルタイムエンタープライズに向けての第一歩というわけだ。全体がつながったITインフラを整えることができれば、運用管理コストの削減も可能となる。オラクルでは実際に、全世界のオペレーションをひとつのコンピュータシステムに1本化するというプロジェクトを実践しているのだという。世界のビジネスプロセスに共通性を持たせ、情報の集中管理を行う。これにより、システムの簡素化が実現でき、セキュリティも向上する。「フロントエンドのオペレーションは現地が独自で行うが、今後すべてのバックオフィスオペレーションはつながることになる」と新宅氏は説明する。

左から日本IBMの堀田一芙氏、富士通の伊東千秋氏、日本オラクルの新宅正明氏

 顧客にITサービスを提案する立場にもある3社だが、顧客へのアプローチはどのように行えばいいのだろうか。伊東氏は、「製品を単体で販売することはますます困難になっていくだろう」と指摘する。「常にインテグレーションが必要となり、協業モデルが主流となる。また協業においても、顧客に提案する前に自分たちで迅速な構築ができるモデルを作っておかなくてはならない」(伊東氏)。一方の堀田氏は、「IBMにも数々のソフトウェアブランドが存在するが、顧客からはやはりインテグレーションのニーズが高いため、ひとつのブランドにこだわってはいられない。単独商品はソリューションではないのだ」という。堀田氏によると各商品は部品でしかないため、オープンな部品を集めてソリューションという形で提供するアプローチを取らなくてはならないと語る。「いまやアプリケーションは、処理の速さよりもインテグレーションのしやすさが重要となっているのだ」(堀田氏)。

 同時に新宅氏は、顧客サイドもITを活用していくにあたって自主的なモチベーションを持たなくてはならないと指摘する。「すべてを統合することも重要だが、統合以前に何をどう情報化するのかを決めるのは顧客の責任。その提案に基づいてベンダーはシステム構築を行うのだから、その段階で不備があるようではどうしようもない」と新宅氏。

 ITインフラが整っていないと、運用管理コストの上昇にもつながりかねない。伊東氏は、運用管理コストがあまりにも膨大で、企業は新規のIT投資ができなくなっていることを指摘し、「個別にシステムを作っていては、いつまでたってもシステムごとに別々の管理方法が必要となってくる。やはり全体を統合できるようなアーキテクチャでなくては、顧客の手間も増え、運用管理コストがかさみ、しいてはわれわれベンダーに新規の案件が来なくなるという悪循環から脱することができない」という。

 結局、「成功」といえるITシステムとはどのようなものなのか。堀田氏は、「顧客の成長につながるシステムこそ成功しているシステムだ」という。伊東氏はさらに具体的に、「個別のITシステムを見て成功かどうかが決まるのではなく、今のシステムが将来につながり、それが結果の出るものかどうか、つまり長期的に見てライフサイクルマネジメントができるかどうかだろう」という意見。いっぽう新宅氏は、「レガシーを作ってはいけない。アップグレードできるような仕組みをつくらなくては」という。

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