「コスト削減より企業優位性を重視せよ」:ガートナー、アプリケーション統合戦略を語る

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年09月12日 16時53分

 ガートナージャパンのリサーチディレクター、飯島公彦氏は12日、都内にて開催されたInfoteria Day 2003にて基調講演を行い、リアルタイムエンタープライズ時代に必要とされるアプリケーション統合の現状と方向性について語った。「ビジネスのスピードが早まるにつれ、多くの企業はリアルタイムエンタープライズへとシフトをはじめている。リアルタイムエンタープライズは、最新の情報を活用して、ビジネスプロセスを管理・実行する上での無駄を継続的に除去し、競争優位性を保つ。そのためにアプリケーションの統合が要求される」(飯島氏)

 飯島氏は、ビジネスにおける変化が周期的なものから連続的になり、これまで数年周期で立てられていた企業戦略が1年以下の短期的な周期で立てられるようになったこと、また顧客の利便性へのニーズや時間的なニーズが高まってきたことを指摘し、「企業のITインフラは変化に対する適応能力を持つことが不可欠だ」と語る。「リアルタイムエンタープライズでは、変化を早期に感知し、戦略を立て、迅速に実行に移すことが求められる。このような適応能力を持つためには、アプリケーション統合が不可欠だ」(飯島氏)

 アプリケーション統合の必要性は多くの企業が自覚しており、そのための取り組みも進みつつある。ガートナーが2002年8月に日本企業930社を対象に行った調査結果によると、アプリケーション統合を行っていないと答えた企業はなく、半数近くが「(統合の)割合はまだ少ないが、今後増えていく」と答えている。ただ飯島氏は、この調査結果で「統合がほぼ完了した」と答えた約10%の企業でも、ほとんどのシステム統合は事業部レベルにとどまっていることを指摘する。

ガートナージャパン リサーチディレクター、飯島公彦氏
これは、これらの企業がアプリケーションを統合させる理由として、業務効率の改善、コスト削減、情報共有、既存資産の有効活用など、ビジネスに適用させることが目的であることを前面に出していることからもよくわかる。そこで飯島氏は、アプリケーション統合が企業戦略に結びついたものであるべきだと述べ、「これからは企業の競争優位獲得のためのシステム統合を検討すべきで、そのためには部門レベルの統合ではなく、全体的な連携を考えなくてはいけない」という。

 また飯島氏は、アプリケーション統合の実現方法として、システム連携に必要な機能のみをプログラミングしているケースが多いことも指摘する。「この方法は、コストがかからないのは事実だが、目先のことしか考えていないやり方だ。変更の頻度が高くなると、このような方法ではスピードについていけないのみならず、ビジネスリスクも高くなる」と飯島氏。また、統合を阻害する大きな要因は、スキル不足や費用の問題、費用対効果が不透明なことに加え、「社内のすべての機能をうまく調整することが困難であることも問題だ」と語る。

 アプリケーション統合に向けての課題は多いが、システムが複雑化する要因は増える一方だ。企業の買収や合併、レガシーアプリケーションの存在と新規アプリケーションの登場など、複雑化が進むことで、ITの活用はコスト削減どころか企業にとってコスト増となる可能性もある。そこで飯島氏は「複雑性を予防的にコントロールするガイドラインを作るべきだ」という。BPM(ビジネスプロセス管理)などが注目されているのはそのためである。飯島氏によるとBPMは、プロセスの一貫性・統合性・可視化の改善のみならず、コアプロセスが何であるのかを特定し、新しいプロセスの可能性を見出すことも援助するという。

 「新しいアプリケーションを構築する期間は短縮化され、数カ月でアプリケーションが完成することもめずらしくなくなった。しかし単一のアプリケーションが企業に貢献するケースは少なくなってきている。これからは企業戦略に基づいたアプリケーション統合を進め、統合を数カ月単位で完成させる方向に持っていくことが望ましい。そのためのテクノロジーが何であるかを考えることが重要だ」と飯島氏は述べた。

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