「ストレージはDAS(直接接続型ストレージ)でひとつのサーバがひとつのストレージにつながっていた時代から、複数のサーバと複数のストレージがつながるNAS(ネットワーク型ストレージ)へと進化した。今後ストレージ分野で重要となるのは、“情報ライフサイクル管理”だ」。米EMCのCEO、ジョー・トゥッチ氏は28日、EMCジャパン主催のフォーラムにて今後の事業展開についての記者説明会を行い、情報ライフサイクル管理の重要性を語った。
情報ライフサイクル管理とは、データという情報が作られた時点から、そのデータを破棄する段階に至るまで、データを保護し、活用し、アーカイブするといった一連の管理をいかに行うかということだ。ハードウェア面における情報ライフサイクル管理についてトゥッチ氏は、「データやアプリケーションの重要度によって、どのようなハードにデータを保存すべきかが違ってくる。これまでは重要なデータとそうでないデータが混在していれば重要なデータにあわせてハイエンドのストレージを提供する形が主だったが、標準的なストレージのコストを1とした場合、ハイエンドのストレージはコストが4倍かかる。いっぽうテープライブラリのコストは0.15程度となるので、あまり重要でないデータをテープライブラリに保管することで、コスト削減が実現できる」としている。
米EMC CEO、ジョー・トゥッチ氏 | |
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また、ソフトウェアでできる情報ライフサイクル管理については、「データ管理とコンテンツ管理にわけられる」とトゥッチ氏。データ管理で重要となるのは、データのレプリケーションやアーカイブ、デザスタリカバリなどに加え、情報保存における規制に準拠しているかといったことだ。この分野についてトゥッチ氏は、「独自技術に加えて新たにこの分野のソフトウェアを強化すべく、Legato Systemsを買収した」と語る。
いっぽうのコンテンツ管理については、「データベース化や構造化されていないデータの量は、データ全体の半分以上を占めている」と指摘、このようなデータをうまく管理し、データにタグをつけるなどといったインテリジェンス機能を提供することでマーケットチャンスが広がるとしている。「IDCやガートナーの調査でも、エンタープライズソフトウェア分野で一番伸びるとされているのがこの分野だ」とトゥッチ氏。EMCは今月14日、コンテンツ管理ソフトウェアを提供するDocumentumの買収を発表したばかりだ。
ハードやソフト面に加え、販路についても同社は新たな戦略を立てている。10月1日付けで日本法人の代表取締役社長に就任したばかりの中山隆志氏は、「これまでEMCは、主にハイエンド分野での直販における成功が大きかった。今後さらにEMCが伸びるためには、カバレッジを広げてシェアを伸ばさなくてはならない。そのため、今後特にパートナーとの関係に力を入れていきたいと考えている。SIerや代理店など、販路を増やすことも含め検討中だ。これが今後のEMCの躍進につながるだろう」と語った。
なお、EMCジャパンは28日付けで、同社の検証施設であるジャパン・ソリューション・センター内にシステム実運用のためのテストを行う「メタソリューションラボ」を開設している。200テラバイト規模のSANを構築した同ラボでは、約140台のサーバを仮想で500台以上のサーバに見立て、あらゆる環境の検証機会を顧客やパートナー企業に提供するのだという。
トゥッチ氏は、2003年度のストレージ市場の成長率が約3〜4%とされている中、「EMCの2003年度の売上げは11%アップしている」と主張、また現在同社の時価総額が315億ドルにのぼり、62億ドルの現金を抱えているとし、「R&Dやセールス、サービス、買収を行うための資金力は十分備えている」と語る。今後の具体的な買収先については「ノーコメント」としたが、財務体質は健全であり、今後もマーケットシェア拡大を目指すと語った。
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