10月23日、日本経済新聞が「富士通と米サン・マイクロシステムズが高性能Unixサーバの事業統合で合意した」と報道した。CNET Japanの取材に対し、サン・マイクロシステムズの広報は「富士通とは良いパートナーだが新聞報道のような事実はない」と全面的に否定した。一方、富士通広報は「パートナーとして話し合いは行なっているが、従来の枠組みを超えるものについては何も決まっていない」としており、両者の姿勢には微妙な違いがある。
現時点では、新聞報道を裏付ける具体的な情報は出ていないが、業界関係者の間ではエンタープライズサーバ市場の情勢を考えるとあり得ない話ではないという声が大きい。IT投資の落ち込みやIAサーバの台頭などでサンは業績不振にあえいでいる。同社の売り上げは10四半期連続で減少しており、米国時間の10月20日には格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズがサンを要注意企業のリストに加えている。一方の富士通は、今年に入ってインテルとメインフレームクラスのIA-Linuxサーバの開発で合意し、従来のメインフレーム/Unix路線から方針転換をはかったと見られていた。
ガートナー ジャパンのデータクエスト アナリスト部門でエンタープライズ・システム担当主席アナリストを務める亦賀忠明氏は、ここに来て統合説が浮上した背景として「IA-Linuxでメインフレームという戦略では、それが富士通のコアになるのかという懸念が出てきたのではないか。富士通の中にはチップを自社で作ってこそベンダーとしての地位を保てるという考えがある。サンを再生させてUnix市場を復興させた方が自社にとって競争上有利だと考えたとしても不思議ではない」と推測する。
富士通はサンからSPARCアーキテクチャのライセンスを受けて自社で開発・製造したPRIMEPOWERという高性能Unixサーバを販売する一方で、サンのOEM機も販売しているが、国内ではPRIMEPOWERの売れ行きが好調。「サンと競合している部分を見直し力を合わせた方が良いと考えるのが合理的だ」と亦賀氏は言う。
統合した場合、サンにとっては単体でのサーバ開発コストを削減できるメリットがある。サンはSun Java Systemという同社のソフトウェア製品と関連サービスを統合した新しい製品体系を発表しているが、亦賀氏は「これはサンが生き残りをかけた戦略商品。複雑で高コスト化してしまった情報システムを、スマートで低価格なシステムに置き換えるというコンセプトを打ち出し、個別には競争力の弱い自社のソフトウェア製品を統合することで競争の軸を変えようという戦略だ。しかし、このコンセプトを実現するにはソフトウェアへの開発投資が必要で、サーバのハード開発ばかりやっている余裕はないはずだ」と指摘。「富士通と事業統合することで、サンは開発投資を軽減しメインフレームクラスの信頼性を確保できる。富士通にとっても世界的な販売チャネルが手に入るメリットがある」(亦賀氏)という。
しかし、富士通とサンが統合したとしても効果は限定的なものになりそうだ。「Unixサーバという観点で言えば、サンのシェアは39%。4%の富士通と統合して43%になれば、2位のHP(32%)に10ポイント以上の差を付けられる。しかし、サーバ市場全体でみれば3位のサン(14%)と5位の富士通(4%)の合計18%では、1位のIBM(31%)や2位のHP(28%)に及ばない。それでも4位でサンを追いかけるデルの10%に差を付けて、現在のポジションを守る効果はある」と亦賀氏は言う。
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