Office 2003--企業はアップグレードに慎重姿勢

 Microsoft Officeの新バージョンが、21日(米国時間)に発売となる。しかしアナリストらは、企業が発売後すぐに大量アップグレードに飛びつく可能性は低いと述べている。新Officeに追加された機能が複雑で分かりにくいことなどがその理由だ。

 米Microsoftにとってドル箱パッケージであるOffice--今後はOffice Systemという名で呼ばれることになる--の今までのアップグレードは、使い勝手の良い新機能の追加や、場合によっては機能の削除に力点が置かれていた。しかしMicrosoft会長Bill Gatesが、21日に行われるニューヨークでの発売イベントで売り込もうとする新Officeアプリケーションでは、ほとんどの改善点が目に見えない部分に隠れてしまっている。

 そうしたなかで、最も大きな改善点は、さまざまな機能がXML(拡張マークアップ言語)ベースとなったことだ。XMLは異なるコンピューティングシステム間でのデータ交換を可能にする方法として、急速な成長を遂げている標準だ。XMLがサポートされることで、OfficeユーザーはWordからWebサービスを利用したり、Excelスプレッドシートから企業データベースにデータを自動転送したり、InfoPathフォームのデータをCRM(顧客管理)システムにフィードしたりすることが可能になる。

 一方で、XML機能は、IT管理者らに新たな懸念を生じさせていると、調査会社米GartnerのアナリストMichael Silverは言う。Officeと、より多くのアプリケーションが連動するようになると、Officeがこうしたシステムを破壊しないことを確認するため、ITスタッフが行なうテストの数も増えることになる。

 「Officeを他のビジネスシステムと統合できるよう、MicrosoftがOfficeに何かすればするほど、アップグレードの周期が長くなる」とSilverは話す。「XMLに本当に価値を感じる人々は、一部の分野ですぐに移行しようとするかもしれない。しかし、テストやリリース準備を行なうには、かなり長い時間がかかるだろう」(Silver)

 Microsoftは、米Hewlett-Packard(HP)や米Lockheed-Martinなど、複数の顧客がOffice Systemのテストを開始したと発表している。

 しかし、今回ほど複雑ではない従来のアップグレードでも、ほとんどの企業が全社にOffice新バージョンを導入するのは、通常、発売から1年〜1年半後のことだ、とSilverは述べている。多くの企業は危険を冒さず、最初の「サービスパック」--バグ修正プログラムを集めたもので、Microsoftが定期的にリリースしている--が発行されるまでアップグレードを控えていた。Office 2003では、Windowsオペレーティングシステム(OS)の新規リリースの場合と同様、企業が採用するまでに数年かかりそうだ。

 Officeの新機能の多くは、最先端のサーバソフトウェアに依存している。これは、Windows Server 2003オペレーティングシステムなどの、サーバソフトウェアの普及を促進しようというMicrosoftの意図的戦略だ。Microsoftがソフトウェアのブランド名を「Office System」に決定した背景には、こうした理由があると同社幹部は話している。

 「Microsoftにとって、Office Systemは非常に重要だ」と、Officeなどのアプリケーション部門を担当するMicrosoftバイスプレジデント、Jeff Raikesは述べている。「人々はOfficeを箱、つまりアプリケーションそのものだと考える傾向がある。この認識を変えるのが、我々の課題だ。我々は、彼らの視野を広げなければならない」(Raikes)

 しかし、Officeの関係する範囲をバックエンドのサーバにまで拡大させたことで、これをインストールするには、多方面にわたる調整が必要となってしまったと、市場調査会社米Directions on Microsoftのアナリスト、Paul DeGrootは指摘する。

 「もはやクライアントソフトをインストールすれば済む、という話ではない。これは(サーバとクライアント双方での)多次元的なインストールであり、そのせいで販売サイクルが長引くことになる。ほとんど最初から、サーバ(OS)の移行の問題がでてくる」(DeGroot)

 Raikesは、Officeの範囲を広げたことによって、販売プロセスがより困難になったと認識していると述べている。

採用パターンに幅

 新Officeをできるだけ魅力的にすることは、Microsoftにとって極めて重要だ。金融アナリストによると、Microsoftが販売しているOfficeなどのクライアントベースのソフトウェア製品は、同社の全売上の約3分の1、経常利益の60%を占めているという。

 MicrosoftのOffice担当部門でバイスプレジデントを務めるKurt DelBeneは、Officeの採用パターンには幅が生じることが予想されると語った。同氏によると、多くの企業が、たとえばOutlookの新バージョンで改良された電子メール管理機能など、純粋にクライアント側の改善点を利用するため、すぐにアップグレードを行なうという。それに対して、サーバ関連の機能が採用されるには、より長い時間がかかる可能性がある。

 「クライアントソフトが主導的になる場合と、サーバソフトが主導的になる場合があるようだ。サーバソリューションの利用準備が整う前でも、クライアントを導入することは可能だ。ユーザーはまず、Outlookなどの機能に惹きつけられてクライアントソフトを使い始め、次ぎにやや時間が経ってから完全なソリューションを利用するようになる」(DelBene)

 ただし、たとえアップグレード需要が予想以上に強くとも、これまでのOfficeのバージョンアップの時に見られたような、売上の飛躍的な伸びは、今回期待できそうにない。

 Officeの売上高は、2001年度にはほぼ横ばいで、続く2002年には持ち直したが、これは論争を巻き起こしたSoftware Assuranceライセンスプログラムが導入されたためだった。証券各社では、、2003会計年度には92億3000万ドルだったOfficeの売上が、2004年度には100億ドルを突破すると予想している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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