米MS、Office 2003の発売に向けて“他社と協調”に方向転換

 米Microsoftは企業向けOfficeスイート、Office Systemのリリースを数カ月後に控えている。Office 2003をはじめ、PublisherやVisioなど、デスクトップパソコン向け製品をすべて含む同スイートは、他のソフトウェアベンダーにもまずまずの評判だ。

 Office 2003の売りは、ファイルをXML形式でも保存できる新機能。これにより、企業のデータベースやCRM(顧客関係管理)などのソフトウェアで、データを読み込むことが可能。MicrosoftはこのXMLとの親和性によって、過去数回のOfficeアップグレードを見送ってきた企業ユーザーを、今度こそ引きつけたいと考えている。

 Officeがデータを共有する必要があるバックエンドソフトの多くは、Microsoft以外のベンダーによるものだ。このため同社は、競合製品との相互運用性を考慮し、これまでの強硬路線を改めなければならない。

 Microsoftは先月、Office 2003対応アプリケーションの開発を推進するために、ソフトウェアベンダーに向けたいくつかの取り組みを発表した。すでに米Hewlett-Packard(HP)、米EDS、米Xeroxなどの大手企業と提携を結んでいるという。また、同社が運営するOffice MarketplaceやMicrosoft Office Solutions Directoryといったサイトでは、パートナー企業が自社のOffice関連製品を紹介できるフォーラムを開設した。

 バックエンドソフトの世界では、たった1つのアプリケーションのために、企業にシステムを丸ごと買い替えさせようとする戦略は時代遅れとなった。既存のソフトウェアと連携できる製品を求める企業が増えたからだ。Microsoftが他のソフトウェアベンダーと手を組み始めた理由はここにある。他社と持ちつ持たれつの関係を築く必要性に迫られたわけだ。

 米調査会社のアナリストであるPaul DeGrootは、「Officeを成功させるには、他社製ソフトとの連携を望むユーザーに目を向けなければならない。Microsoftはこれに気づいたようだ」と語る。「これまでのように自社路線を他社に追随させるのではなく、新技術の開発においてリーダ的な役割を果たす方が、Microsoftの成功の確率は高いだろう」(同氏)

 相互運用性を確保するには、XMLなど、広く普及している業界標準をサポートするのが一番だ。事実、Microsoftをはじめとする大手ソフトウェアベンダーは、企業データの保存にXMLを利用している。またMicrosoftは、ウェブ関連技術の標準化を進めるW3C(World Wide Web Consortium)と協力し、XMLの標準策定にも積極的に関与してきた。

 MicrosoftのOffice System部門担当マネージャーのDan Leachは、「当社がXMLの策定に熱心に取り組んできたのは、業界全体の役に立つからだ。当社が、ソフトウェア業界のリーダー企業としての役割を真剣に受けとめていることを、他社に理解してもらいたい」と述べた。

 業界標準のXMLをサポートすれば、たしかに異種プラットフォーム上でもデータ認識が可能になる。しかし、XMLはソフトウェアの基盤に過ぎず、Microsoftをはじめとするソフトウェアベンダーは概して、文書を定義する際に独自のXMLタグを使っている。

 またMicrosoftが、Officeを推進するために他社と協調路線を歩んでいるとはいえ、同社のWebサービスに対する取り組みでは、自社製品に最も有利なWebサービスの標準を確立しようと、米Sun Microsystemsや米Oracleに対して一歩も譲ろうとしない。

 一方で、Office 2003が果たしてどの程度XMLに準拠するのか疑問視する向きもある。DeGrootは、「基本的な相互運用性を保証できる程度」に準拠するとみている。「どこまでを指して“標準”というかについては、以前から問題になっている。Microsoftは、第三者から送られてきたファイルを閲覧できるようにはするだろう。しかし、ファイルを開いて製品番号を変更したり、データを書き換えることができるとは限らない」(同氏)

 バックエンドソフトのベンダーはMicrosoftと手を組むことで、Microsoft独自のXMLタグを入手できる。つまり、バックエンドデータを閲覧したり変更する際のインターフェースとして、Officeアプリケーションを自社の顧客に提供できるようになる。Microsoft Wordほど広く普及しているインターフェースは存在しないため、Microsoftとの提携はバックエンドソフトのベンダーにとっても悪い話しではない。

 「企業向けソフトの大手である米J.D. Edwardsなどが、自社戦略でOffice 2003を視野に入れているのは、ユーザーがMicrosoftのアプリケーションに慣れ親しんでおり、非常に使い道の広いインターフェースであるからに他ならない」(米IDCのアナリストのSusan Funke)

 Office SystemをめぐるMicrosoftと他社ベンダーとの協力関係が、相互利益に裏打ちされたものであることは間違いない。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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