サーバ技術の統合で成功したIBM

 米IBMは、サーバ市場における自社の最大の問題を、おおむね自力で解決することができた。

 IBMのサーバグループは過去10年間、統一されていない製品ライン、グループ内の内部抗争、新技術の導入の遅れ、顧客に対する傲慢な姿勢が原因で、ライバルたちの後塵を拝してきた。

 しかしここにきて状況は一変した。IBMは過去数年間に、サーバラインを刷新してサーバ間でコンポーネントやソフトウェアを共有できるようにすると共に、組織再編を行い、またLinuxのように社外で発明された技術の導入にもより積極的になった。

 その結果、サーバ市場でトップを走るIBMはライバルたちとの差を徐々に拡大している。また、ある製品ラインの販売を通じてサービス契約や他の製品の販売拡大を図る、いわゆる「自社製品を利用した自社製品販売拡大戦略(sell our stuff with our stuff:SOSWOS)」を実行している。

 この最大の功労者は同社のシニア・バイスプレジデント、William M. Zeitlerということでアナリストたちの意見は一致している。Zeitlerの洗練された語り口調や丁寧に撫で付けられた髪を見ると、彼が数十年間に及ぶIBM Systems Groupの伝統を打ち破り、大胆な改革を行おうとしている人物とはとても思えない。

 これまでZeitlerは伝統よりも現実的対応を重視してきた。IBMでは、当時コンピューティング業界の最新技術の1つだったLinux OSとIBMの製品ラインの中でも最古の部類に入るzSeriesメインフレームとを統合する構想について、社内で見解が二分していた、とZeitlerは振り返る。社内では、無料で入手可能なLinuxをサポートすれば、メインフレーム上のソフトの販売利益が減少しかねないとの懸念の声が上がった。当時、同社のソフト販売の利鞘の厚さは有名だった。しかし結局、同社はLinuxの採用に踏みきった。

 市場調査会社のGartnerによると、2001年から2002年にかけてサーバ市場は430億ドル規模に成長し、市場占有率トップのIBMはシェアを2.1%増の31.1%にまで拡大した。第2位はHewlett-Packardの25.2%で、これに15.1%のSun Microsystemsと7.5%のDell Computerが続いた。これら4社のうち、IBMとDellだけがシェアを拡大した。

 IBMは1990年代にはSunに遅れを取っていた。当時、インターネット企業はどこも狂ったようにサーバを買い漁っていた。しかし、その後にやってきた現在の経済不況はIBMにとって追い風になるとZeitlerは確信している。

調和の取れた統合

 4つのサーバラインの技術的統合は、恐らくIBMのサーバグループにとって最大の技術的挑戦であり、また同社が戦略を転換した最大の理由の1つだったといえるだろう。この取り組みは2000年にZeitlerがサーバグループ担当となる以前から開始されたが、サーバラインの販売についてはZeitlerが指揮を取ることになる。

 かつては各サーバラインにそれぞれ別のOSやソフトが搭載され、プロセッサも別の製品が使用されることがしばしばあった。しかし今では4つのサーバライン全てにLinuxとJavaが採用され、プログラマたちの悩みの種であるサーバライン間の根本的な差異の一部は解消されている。

 ハードウェア設計の構想については機種を問わず適用が可能だ。例えば、Unixサーバ「pSeries」やミッドレンジサーバ「iSeries」には、ほぼ同じハードが使われ、またどちらもPower4プロセッサを搭載している。IBMはIntelプロセッサを搭載したxSeriesに高性能マルチプロセッサ機能を導入した。最上位モデルのzSeriesに採用された、同一のコンピュータ上で複数のOSを実行する技術はpSeries、iSeries、xSeriesにも導入された。

 サーバ技術の一部は、いずれメインフレームラインにも浸透していくと思われる。メインフレームとPowerプロセッサを設計しているIBMの2つのエンジニアリングチームは緊密に連携しながら作業を進めており、同社はいずれ改良型Powerプロセッサそのものか、あるいは少なくともその設計構想を間違いなくメインフレームに導入する、との見解もある。

 このような変化は決して今回が初めてではない。IBMはかつて、Powerプロセッサ以前のプロセッサ向けに設計されたソフトを無駄にすることなく、PowerプロセッサをiSeriesラインに導入した実績がある。

囲い込み戦略の教訓

 IBMは、製品ラインの多様化は顧客ニーズが多様化した結果であり、また顧客、とりわけ不満を抱いている顧客の意見は大変有益だったと主張している。IBMは既存顧客を同社のハード/ソフト製品に釘付けにするために、自社版の新技術を導入する、いわゆるアカウントコントロールを行ったため、一部の人々は長年IBM製品の利用をさけていた。

 Zeitlerは、このような顧客を囲い込もうという発想が「15年間の暗闇の谷」につながったことを認めた上で、しかしIBMはその後自己改革を行ったと主張する。「我々はオープンスタンダードを信奉している。顧客たちはあまりに知識や経験が豊富なため、いわゆるコントロールポイントに引き込まれてしまうことはない」とZeitlerは語る。

 顧客を自社製品で縛ろうとしたことで逆に顧客離れを招いたIBMだが、現在はオープンな戦略が報われている。Illuminataのアナリスト、Jonathan Euniceは、サーバ上でJavaを実行するためのIBM製ソフト「WebSphere」やLinuxの採用、さらに同社がオープンソースのプログラミングツール「Eclipse」をサポートしたことに言及し、「オープンであれば、成功する」と述べた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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