米AOL傘下のヌルソフト、旧バージョンWinampへ逆戻り

 米America Online(AOL)の子会社の米Nullsoftは、MP3プレーヤーWinamp3の不評を受け、旧バージョンのWinampを復活させる。

 昨年8月に動画再生/ストリーミング機能を追加したWinamp3は、プログラミング言語のWasabiをベースとしている。このアップグレードは、単なるオーディオ再生ソフトのWinampをフル機能装備のメディアプレーヤーに変身させる狙いだった。しかし、「動作が重い」としてユーザーの間で不評を買い、コアユーザーの多くは旧バージョンに戻ってしまった。このためNullsoftは、Winamp 5で両バージョンの機能を組み込むまで、広範な改良を保留している。

 一方AOLは、Wasabiを利用したプラグインのサポートを打ち切り、代わりにWinamp3のグラフィカルインターフェース、「スキン」をWinamp 2.xに組み込む方針を発表した。

 デジタルメディア技術は、インターネット経由のコンテンツ配信を管理する戦略的手段となりつつある。そしてAOLは、パートナー企業の米RealNetworksや長年のライバルである米Microsoftなどのマルチメディア製品の代替として、Nullsoft技術への移行を始めている。

 一部のNullsoft批判派は、「Winamp3のアップグレードは、Netscape Communicationsがブラウザソフトを変更しようとした際の顛末に酷似している」と指摘する。Netscapeは1990年後半にブラウザを一から書き直したため、アップグレード周期が大幅に遅延し、その間ブラウザ戦争でMicrosoftが勢力を増した。あるWinamp開発者は、「Netscapeとまったく同じだ。すばらしい機能を備えていたが、それをプラットフォームに変えようとした。しかし、ユーザーはそれを受け入れなかったのだ」と語る。

 Winampもその絶頂期には、最もダウンロード件数が多いプログラムの1つだった。AOLが1999年11月にNullsoftの買収を発表した際、Download.comサイトにおけるWinampのダウンロード件数は、1週間で25万件にも上った。しかし、現在はMicrosoftやRealNetworksなどの製品におされ、人気は褪せつつある。米Nielsen/NetRatingsによると、2003年5月、MicrosoftのWindows Mediaのユーザーは4310万人、RealNetworksのRealOneは2600万人、米Apple ComputerのQuickTimeは1350万人を数える。これに対し、 Winampユーザーは550万人に過ぎない。

 NullsoftがWinampの方向づけに苦しむ中、AOLはデジタルメディア分野でMicrosoftとより密接に協業する方針を明らかにしている。AOLは5月にMicrosoftとブラウザ訴訟で和解し、MicrosoftのWindows Mediaソフトウェアのライセンス供与を受けるという提携を結んだ。

 AOLによるWinamp3サポートの打ち切りが、長期的に見てWinampにどのような影響をもたらすかは不明だ。また、AOLがNullsoft技術を使ってデジタルメディア分野で戦っていけるのかもわからないが、プラスに働くことにはならないだろう。Winamp3の不振が、ライバル企業のデジタル音楽事業に急成長のチャンスを与えた可能性はある。

 MicrosoftとRealNetworksは、スキンのカスタマイズ、音楽ライブラリ、CD再生機能など、かつてWinampが普及させた多数の機能を自社のメディアプレイヤーに追加してきた。両社の製品は主流ユーザーを引きつけ、一方Winampは熱心な愛好家向けという位置付けとなってしまった。

 しかし、Winampは流通経路を失ったわけではない。世界最大のISPである親会社のAOLは、2001年から独自のデジタル・メディア・プレイヤーとして、Nullsoftを利用している。AOLは今夏、Nullsoftチームが開発した新しいメディアプレイヤー、 Llama(開発コード名)を含むオンラインサービス、AOL 9.0をリリースする。新サービスでは、これまでと同様にMicrosoftとRealNetworks形式をサポートするほか、AppleのQuickTime形式への対応を追加する。なお、従来と異り、Nullsoftのオーディオ形式NSAと、ビデオ形式NSVを推進する。AOLサービス上のストリーミング配信で独占契約を結んだコンテンツプロバイダは、Nullsoft形式を使用しなくてはならない。

 Winamp3計画は後回しとなったが、消滅したわけではない。Winamp3とWasabiの要素はより高速で軽いWinamp 2とともに、次期バージョンのWinamp 5に組み込まれる。Winamp 5は、2003年後半にリリースする予定だ。

 一方で、Nullsoftを立ち上げた開発者チームには、不安感が漂っている。その中心にいるのが、最初にWinamp3を開発したJustin Frankelだ。Frankelは小規模グループでファイル共有を可能にする自作のプログラムWasteをNullsoftのウェブサイトでリリースしたが、その翌日にAOLは、同プログラムへのリンクをウェブサイトから削除した。FrankelはAOLのこの行為を受けて、自身のウェブサイトで辞職の意思を示した。FrankelはまだAOLにとどまっているが、今後のことは不明だ。

 Wasabiの開発者は今回の動きを受け入れているが、「AOLのサポート中止は時期尚早ではないか」と惜しむ声もあがっている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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