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オンラインミュージックが音楽業界に与える影響 - (page 4)

John Borland, Evan Hansen and Mike Yamamoto2003年06月16日 10時00分
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マイクロソフトはアップルの永遠の敵
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 数週間前のこと、Mark Ishikawaはロサンゼルス・ヒルトンで食事中に、あるカップルがKazaaのような音楽無料ダウンロードサービスの利点について話しているのを耳にした。

 Ishikawaはレコード会社や映画撮影会社にかわり、ファイル交換サービスの著作権侵害を監視している会社BayTSPのCEOである。職業上その2人の会話に興味をそそられた彼は、レストランの中を歩きつつ会話の主を確かめた。2人組の学生の姿を想像していたところ、驚いたことにそこにいたのは年配のカップルだった。無料ファイル交換の習慣が広く普及していることを如実に語る例のひとつだ。

 Ishikawaは言う。「ファイル交換サービスは中高生から大学生といったプロトコルを理解している若年層から広まり、利用者の大半はまさにそういった若年層だった。それがこのカップルのような人々の間にも、コンピュータ科学の単位を持つ若者のような考え方が浸透し、サービスの利用者層も幅広くなった」

 音楽配信が本流へと成長する中、Apple Computerやデジタル音楽配信会社などはファイル交換の普及という現状に直面している。Macintoshユーザーにはファイル交換利用者は少ないが、Windowsユーザーで全く制約を受けずに無料の音楽ファイルを入手している人の数は数百万にものぼり、iTunesはそれを相手に戦わねばならないのだ。

 無料音楽サービス業者は弱音を吐くどころか、音楽会社やインターネット小売店がファイル交換技術と協調していく以外に選択肢はないだろうと強気な姿勢を見せる。有料サービスの登場で音楽配信サービスに対する消費者の認知度が上がることや、無料サービスに有利な判決が続いていること、そして法規制の適用方法が変化したことなどは、無料音楽サービス業者に言わせれば、新しいファイル交換サービスの誕生を示す兆候である。第1世代であるNapsterが世を去り、第2世代で苦労を強いられ、これらを乗り越えて第3世代が誕生したのである。

 Kazaaのファイル交換サービス経由で有料コンテンツの配信をしているAltnetのCEO、Kevin Bermeisterは、Appleなどの対戦相手はPtoPを始めとする無料コンテンツ配信サービスのユーザーで、その数は膨大だと言う。「これらの課題に直接取り組んで膨大な数のユーザーを掌握しない限り、コンテンツ企業はインターネット上で多くの顧客を取り込むことはできない」

 数百万ドルものマーケティング費用をかけて展開中のAppleのMusic Storeは、主要レコード会社にとっても長年の定説の真偽が問われる試金石だ。レコード会社は、簡単で適正な価格の合法的サービスがファイル交換ネットワークと互角で戦えるはずだと唱え続けてきたのである。Appleは5月にサービス開始後16日間で200万曲を売り上げており、出だしは好調だ。

 200万曲という数字は相当な数に見えるかもしれないが、無料ファイル交換サービスの利用数と比べれば実はたいした数ではない。Music Store開店初日にKazaaのファイル交換サービスにアクセスしたユーザー数は、瞬間数値で420万人にものぼる。CNET Networksが運営するソフトウェア統合サイトDownload.comの調べでは、サービス開始1週間でiTunesは100万曲を販売したが、その間Kazaaソフトウェアのダウンロード件数は250万件だった。同ソフトウェアをダウンロードしたユーザーは、通常そのソフトを使って多数のファイルを入手している。ざっと見積もって、月に数十万から数億万のファイルがKazaa経由で交換されているとのことだ。

 さらに、昨今の予想に反する勝訴を追い風に、ファイル交換ネットワークは僅か2カ月前には考えもしなかったような強気の計画を検討し始めている。それは、無料・有料サービスが隣同士で、または一緒に売られる市場が生まれるというものだ。

 PtoPサービスとして人気のGroksterのプレジデントWayne Rossoは言う。「PtoPは水道水のようなものだ。水道水はいつでも手に入り、しかも無料だ。だから人々は水道水を利用する。しかし、一方でボトル入りの水の製造者も相当の利益をあげている」

 変遷期当初の音楽業界水面下で交わされた好戦的な物言いと比べれば、随分と巧妙なコメントである。しかしこのような態度の軟化も、PtoPが生まれたての頃、短命で波乱に満ちた生涯を遂げたNapsterが置かれていた状況を思えば納得がいく。数百万ものインターネットユーザーが無料で数百曲の音楽をダウンロードできる可能性を切り開いたNapsterは、当時四方を敵に囲まれていたのだ。

 Napsterの創造者Shawn Fanningはサイバー業界の歴史にその名を残したが、ファイル交換サービスの原型となった同社のサービスそのものは米レコード協会(RIAA)による著作権侵害の訴えで突然のサービス停止へと追い込まれてしまったのである。

 Napsterの次世代として台頭したのが、KazaaやGroksterのようなシステムや、 FastTrackというPtoP技術を用いたStreamcast Networks社のMorpheusだ。オープンソースのGnutellaもある程度の成功を収めているが、特にKazaaは急激に成長しており、Napsterのピーク時をかなり上回るほどの人気を博している。

戦いの相手は企業から個人へ

 長期間のNapster論争で調子づいたRIAAとその関連映画会社Motion Picture Association of Americaも、この間ますます態度を硬化させている。彼らはFastTrack関連企業を相手に訴訟を起こし、インターネットサービスプロバイダや大学に対してユーザーのファイル交換を辞めさせるよう求め、数百件から数千件の著作権侵害通知を送付し、また著作権法侵害の疑いがある個人に対してインスタントメッセージの送付を開始している。

 訴訟、警告、教育を組み合わせての戦いは困難を極めるが、それでも著作権保有者たちは、メッセージを広めるためには何でもする構えだ。

 「時間のかかるプロセスだ」とRIAAのプレジデントCary Shermanは言う。「生まれた頃からダウンロードに慣れ親しんでおり、レコード店にCDを買いに行った経験の無い子供たちに、我々のメッセージを伝えようというのだ。一夜にして文化を変えることは不可能だ」

 PtoP発展の次の段階では、企業よりも個人を対象とした法的措置が中心となるだろう。この新しい考え方は、最近人々を驚かせた無料サービスに有利な判決の影響で生まれたものだ。偶然にも、その判決はAppleがiTunesを発表した数日前に下されている。

 そこでは米国で初めて、分散管理型のファイル交換ツールの配信は合法であるという連邦裁の判決が下された。Stephen Wilson判事は自身の意見として「Groksterと Streamcastは、ビデオデッキやコピー機のメーカーと同様に、それらを利用した著作権侵害の可能性や著作権侵害行為の責任を負う義務はない」と書いた。

 判決が二審で覆される可能性はある。しかし、この判決はファイル交換サービス業者を勇気づけ、またレコード会社のオンラインサービスに対する戦いを一時的に困難なものへと変えてしまった。レコード会社幹部は、個人を相手とする法的措置をとらざるを得ないことを認めている。それは、消費者からの反動への恐れからこれまでは避けてきたことだ。

 RIAAは現在、Verizon Communication のネットワーク上におけるKazaaソフトウェアのユーザーを必死で特定しようとしている。また大学内でファイル検索ツールを運営していた学生4人に対する訴訟を起こしている。今後は、これらがNapsterの訴訟などに代わる典型的なPtoP訴訟となっていくかもしれない。

 「Groksterの決断に対する法的対応も必要かもしれないが、短期的にはプラットフォームよりもユーザーへと対象を移していくことになる」とあるレコード会社幹部は言う。

 レコード会社にとってさらにことを複雑にしているのは、音楽ファイルの交換を高速化・簡易化する技術の存在だ。現在人気を得ているサービスは小さなサイズのファイル交換に有効であるが、eDonkey やBitTorrentのような新技術は映画などの大きなサイズのファイル交換に有効で、数十万人のファンを獲得し始めている。法的追及を受けたくないユーザーはFreenetのようなIDを隠す技術を利用することもできる。

カギとなるのは使いやすさ

 とはいえ、無料音楽サービス配信業界も大変革の時期にさしかかっていることを自覚している。当面の脅威はなくとも、有料サービスとの初めての大きな戦いが始まったからだ。Napsterが爆発的に成功したのは、当時は膨大な数の音楽にアクセスできるオンラインサービスが存在しなかったからである。だが、iTunesのような有料サービスは環境を急速に変えようとしている。

 「このような音楽の利用法を知らなかった人々が、今では簡単に利用し始めている。ITunesの成功は潜在需要の大きさを示すものだ。今までは、みなこの種のサービスについて一般大衆に説明するという手間を避けてきただけのことだ」と、BMG Musicの最高戦略責任者であるThomas Hesseは言う。

 レコード会社幹部の中には、ファイル交換サービスともっと直接的に対決する方法はないかと思いを巡らせている者もいる。ひとつのアイデアとしては、レコード会社後援の無料サービスを提供し、消費者が曲を無料で試聴したりダウンロードできるようにするというものだ。消費者が、その曲を手元に保存しようとCDに焼いたりコンピュータから移動させたいと考えた場合は、代金を支払わなければならない。

 有料サービスとPtoPサービスがその距離を縮めているケースもある。レコード会社後援のMusicNetは、サービス開始当初はファイル交換サービスを提供していたが現在はそのようなサービスの提供は行っていない。

 「誰もが新しい方法を見つけようと積極的だ。顧客を取り戻すためには、レコード業界も大きく変化する必要がある」とあるレコード会社幹部は言う。

 Kazaaネットワークを用い、著作権保有者の認可済みコンテンツを取り扱っているAltnetは、AtariなどのTVゲームメーカーや主要レコード会社に所属していないアーチストの音楽などを中心に、これまでに2000万個のファイルを配信してきた。レコード会社とKazaaの法的対立もあり、このサービスで大きな取引が生まれる可能性はなさそうだが、Altnetのサービスには既存のPtoPネットワークを利用して合法的なファイルを配信する可能性があることを浮き立たせている。

 更に意欲的なアイデアもある。例えばGroksterのRossoは、TiVo やReplayTVなどの双方向TVと連携する公認のPtoPサービスが生まれると予見する。サービス加入者はファイル交換ネットワークにアクセスして、他の会員が録画したプログラムを視聴できるというものだ。

 ただし、公認・非公認を問わず、これらの配信システムの成否を決めるのは、顧客にとって使いやすいかどうか、また価値があるものかどうかによるだろう。Appleは簡単な操作と比較的安い価格で顧客をひきつけられることを既に実証したが、iTunesの目新しさが薄れれば顧客は無料のMP3ファイルを求め続けるだろうという懐疑的な見方もある。

 「盗み出した音楽にはより高い価値がある」というのはMP3.com の元CEO、Michael Robertsonだ。「好きなだけコピーが作れる。それはPtoP交換のためではなく、個人として楽しむためのものだ。ほとんどの人は、使いたい方法で使えるから音楽を盗むと言っているのだから」

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