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買手市場に移行するIT業界 - (page 2)

Larry Dignan, Dawn Kawamoto and Margaret Kane2003年03月10日 10時11分
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 長引く不況で産業も経済も大打撃を受けている。しかし、米オフィス家具メーカーSteelcaseの最高情報責任者(CIO)John Deanは、そこであることを学んだ。彼は、ハイテク業界が低迷していることで、本当に必要な技術とそうでない技術を見極めるようになったというのだ。

「これから何に投資していくべきなのか、考え方が変わった」とDeanは言う。Steelcaseの2003年度IT関連支出予算は前年と同レベル。「業績が回復してもIT予算を下げていくつもりだ。これまで切り抜けることが出来たので、今後もこの状態でやっていけることはわかっている」(Dean)

 多くのハードウェアメーカーやソフトウェアメーカーは、景気の本格的回復に伴い販売業績も自然に回復基調に乗るものと期待しているが、Deanのような考え方は、これらのメーカーが今後もさらなる苦戦を強いられると予告しているかのようだ。最近のCIOや最高技術責任者(CTO)は以前に比べ賢明な選択をするようになっており、かつてのように業界のスピードに流されて商品を購入しなくなった。長年企業の判断に影響力をふるっていた売手本位の投資原則にはもう従わないのだ。

 例えばPCの寿命は3年といった考えがこれまで広く一般に認められていたが、この認識は今になって疑問視されている。財政の苦しい企業は、今やメーカー側のアドバイスをそのままには受け入れないのである。また、常に最新のOSを導入するという方針を見直している企業の数も増えており、次のキラーアプリの話を交えて営業トークを展開することもお笑い種とされる可能性がある。

 ここで新たに生まれた現実主義は、長年業界を支配してきた力関係を逆転させ、IT市場を真の買手市場に変えた。「継続的なアップグレードが必要だからというのではなく、機能性が判断の基準だ」と語るWireless Retail社CIOのChris McMahanは、機能向上の必要がない間は何もすることはないと考えているという。

 顧客企業の考えの変化に伴い、IT業界がかつての勢いを取り戻せるかどうかはますます見えにくくなってきている。3年サイクルでハードウェアをアップグレードするという今までの基準が崩れてきていることを考えても、業績回復を予測することはまるでギャンブルだ。

 先の見えない状況下において、各企業の財布の紐はさらに堅くなっており、今年のIT関連支出の合計はIDC社が「IT業界史上最悪の年」と呼んだ2002年と同レベルまたは微増と予測されている。Gartner Groupは、2003年のIT関連支出は2兆1000億ドルで昨年と比べ4.9%の増加にとどまると予測しており、他の調査会社の予測も似たようなものだ。

 Merrill Lynch社CTOのJohn McKinley Jr.も、複合成長率で再び13〜14%をつけることはないと見ており、「1997年から2000年にかけてのITバブルは我々に厳しい教訓を残した」と説明する。

 中でもIT責任者が学んだ最も重要な教訓の1つは、ドットコムブームの特徴である誇大広告に惑わされてはいけないということだった。1990年代には多くの企業が実績のない新商品を購入したり、あるいは会社をまるごと買収したりしたが、競争優位を失うことを恐れてのこれらの行動は企業間のハイテク化競争の激化を招き、さらには高額なテクノロジーを手にしながらもその効果がなく経営に行き詰る企業が数多く残されるという結果を招いた。

 そしてその反動として、ハイテク業界では滅多に口にされなかった昔のビジネスの考え方、つまり「壊れていないものを修理するな」という考えが復活したのである。

 General MotorsのCTOであるTony Scottは、PCの買い替え時期を先延ばしにするつもりだと語る。


コスト削減、サーバやアプリケーションの統合が話題となる中、ソフトウェアのカスタムメイド化を計画しているCIOは多い。

Wireless Retail社のCIOを務めるChris McMahanによると、同社のシステムのうち75%は内製とのことだ。2003年にはこの比率を50%程度まで下げる予定ではあるが、今後も社内でのシステム開発は続けるのだという。

「我が社では開発用の人材を確保し続けるつもりだ」(McMahan)

アナリスト曰く、ソフトウェアの内製化が進んだのはこれまでの誇大広告に対する疑念から生まれたものである。メーカーが「万能」と謳ったソフトウェアが全く役に立たなかったケースがいくつもあったからだ。そしてそれは、MicrosoftやBorland、Sun Microsystemsといった開発ツール販売業者にとっては幸運なことだったかもしれない。

McMahanはXMLとSunのJavaを使って新しいソフトウェアを開発、アプリケーションの統合を実現し、同社の急成長に貢献しているという。

内製アプリケーションの最大の利点は、会社独自のニーズに応じられることだ。GMの例では、カスタムメイドのアプリケーションを使用して自動車を設計している。

Cars.com社CTOのLaef Olsonも、開発の内製化は適当なソフトウェアパッケージがない場合は有効だと考えており、「アプリケーションの統合は2003年の当社にとって非常に重要となるが、内製も多く行うつもりだ」と語っている。

-- Larry Dignan

 各社CTOが支出を抑えるために最初に手をつけるのはPCで、長年言われ続けてきた3年買い替え説は無視されつつある状況だ。例えば、昨年は2000年問題対策で販売された1999年型PCの買い替え需要が見込まれていたが、結果は期待はずれ。3年サイクルを前提に販売急増を期待していたコンピュータメーカーは大打撃を受けた。

 3年サイクルの下で企業は継続的にPCを代替してきたが、現在企業が買い換えるPCの台数は月平均で保有マシンの3%程度というのが現実だ。

 例えば国際的広告会社Ogilvy & Matherも、保有するPCのうち30%の買い替えサイクルを4年に延長した。これ以上のコンピュータ能力は不要だという単純な理由で同様の策をとっている会社は他にもある。

 また、Concours GroupのCTO、Jay Williamsによると、今日のチップの性能はソフトウェアメーカーの要求を超えており、「通常業務で必要のないギガヘルツ級のチップを搭載したPCが出回っているが、2ギガヘルツのノートPCでさえ正当な購入理由を探すのは難しい」という。

 Steelcaseが保有するPCは3年サイクルのものだが、現在5年が経過しており、まだ使い続ける予定であるという。「デスクトップは3年、ノートブックは2年ごとに買い換えていたが、過去2年でルールを大きく見直した」と同社のDeanは語る。

 他社と同様、Steelcaseは余分な装備を省いたPCでサーバ内アプリケーションにアクセスできるCitrix Systems社のソフトウェアを使い、PCの寿命引き延ばしを図っている。「必要以上にPCの寿命を引き延ばしてはいるが、シンクライアントの導入でバランスをとっている。当社では全社員にデスクトップが必要という方針はとらない」とDeanは説明する。

 一方で、リース契約のため3年というサイクルに縛られてきた企業もある。しかしそれでも平均的に見ればPCの寿命は延びる傾向にあるようだ。米商務省経済分析局は、解体処分となるまでをPCの寿命として試算しているが、2001年の計算ではPCの寿命が2.1年で、2000年の1.9年より延びている。また、その寿命はさらに延びると考えている者が多い。

「平均的には4〜5年になり、時とともにPCはさらに長生きすることになるだろう」とConcours GroupのWilliamsは言う。

 もちろん、PCを永遠に使い続けることは不可能だ。Oglvy & MatherでCIOを務めるAtefeh Riaziも、2004年にはPCや他の基本的インフラの買い替えで大きな需要が生まれると確信している。

 しかし、たとえインフラ需要がうまれても、企業は今度はそれまで必要とされていた他のテクノロジーにかけるコストを切り下げようとするだろう。IT責任者はPCのみならず、大規模なソフトウェアのアップグレードに対しても後ろ向きだ。業務の継続に新しいソフトウェアは必要ないからである。

 例えば、かつてはPCの買い替えと同時にWindows OSやソフトウェアを自動的にアップグレードしたものだが今は違う。実際そのため、メーカー側は評判の悪い販売促進策を選択せざるを得ない状況に追い込まれている。

 ソフトウェアメーカーが旧型ソフトの補修やサービスを停止し、ライセンス付きモデルの販売に切り替えたのもそういった販売促進策の1つである。特に、Microsoftの最近のライセンス契約の変更はリースモデルの普及を狙ったものだったが、一方でIT責任者の批判の的となっている。

「このライセンス契約にみなサインアップしているが、これはまるでソフトウェアのレンタルだ。当社はサインアップするつもりはない」とMerrill LynchのMcKinleyは言う。「我々はMicrosoftのテクノロジーを使っているITの申し子かもしれないが、契約まで結ぶ気はない」

 McKinleyのような意見を考えると、2003年は新たなライセンス販売が盛んな年になるかもしれない。Cicala & Associates代表のPat Cicalaは、「特に創造性を身に着けなければならないのはソフトウェア業者だ。自分たちが世界ナンバーワンなのだというお決まりの宣伝文句は通用しなくなるだろう」

 それが本当ならば、ハイテク営業マンが頼りにしている商品、つまりキラーアプリという究極の武器が予想外の打撃に打ちのめされることになるかもしれない。今まで何度も言われてきたことだが、キラーアプリにあまり期待していない人々の数は驚くほど多い。CIOにとってキラーアプリはおとぎ話の中の妖精ぐらいの存在だという。

 例えばドーナツショップKrispy KremeのCIOであるFrank Hoodには、キラーアプリが必要だとは思えない。「キラーアプリ自体はアプリケーションではない。ひとつの原理だ。ドーナツショップのCIOとして重要なのはビジネスの過程やドーナツの製造であって、高性能のコンピュータではない。言ってみれば我々のキラーアプリはむしろドーナツだ」

 もちろん噂されている次のキラーアプリに期待するCIOも中にはいるだろうが、それでも大きな市場活性効果は予想されていない。XMLやWebサービス、アプリケーションサーバなどは大きな市場活性効果をあげたといえるだろうか。

 1990年代のテクノロジーブームで、多くの企業が数億ドルを投じてERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)、SFA(セールス・フォース・オートメーション・システム)などを導入した。ソフトウェアメーカーやコンサルタントは、これらのシステムが業務の流れを整え収益を大幅に改善すると謳った。

 だが成功例もあるとはいえ、多くの場合投資に見合う成果はなかった。スポーツ靴メーカーのNikeや菓子メーカーのHershey FoodsもERP導入で失敗している。

「みな新しい大きな何かを探しているが、むしろ既に存在するキラーアプリを有効活用する必要がある」とOglvy & MatherのRiaziは言う。

 GMのScottによると、今日の小さな一歩が明日の革命をもたらす礎となるとのことだ。その鍵を握るステップは、WebサービスとID管理の組合せにより、あらゆる場所であらゆる形式の情報が得られるようにすることなのだと彼は見ている。

「人々は、居場所に左右されずに情報を手に入れたいと思っている」とScottは言う。「次のキラーアプリは現在構築中だ。それは情報の透明性に関するもので、実現すればどこにいても情報を手に入れることが可能となるだろう」

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