ネット素人の学生ベンチャーが始めたイーファクター

瀬井裕子(編集部)2007年11月12日 21時19分

 創業から2カ月になる学生ベンチャーのイーファクターが、11月12日付けで増資を受けて事業拡大に向けて大きく動き始めた。増資はngi capitalが運用する学生起業家向けのファンドが引き受けて、1000万円を出資した。新規事業の準備と同社のサービス「Life Pedia(ライフペディア)」の機能追加に充てる。

071109_lifepedia.jpg「Life Pedia」では、ブログの記事が年表のように時系列に表示される。

 ライフペディアは、個人が持つ複数のブログをまとめて表示できるサービス。記事を時間軸で見せる視覚的な表示方法が特徴で、利用者はブログの記事を個人の年表のように見られる。ブログを登録しておくと、更新時に記事が自動的に反映されるため、複数のブログを持つ利用者にとって便利なサービスだ。10月からは「Twitter」など国内外の10種類のミニブログとも連携している。

「インターネットって何?」から創業へ

 イーファクターの代表取締役社長である佐藤航陽氏は、早稲田大学に在籍中。もともとは弁護士を目指していたが、大学入学後に司法制度の改革を知り、目指す方向性を変えた。「自分の腕一本でできるのは会社経営しかない」と起業を決意。初期費用が少なくてすむIT分野に方向を定めた。

 とはいえ、佐藤氏は大学生になるまでインターネットにほとんど触れたことがなかったという。サイバーエージェントなどIT関連の会社名は知っていたが「インターネットって何だろう?」と思っていた。その佐藤氏が大学でインターネットの授業を受け、同時に経済誌の特集などでグーグルやマイクロソフトの創業の物語を知った。大学院生が作ったシステムが世の中を変えてしまうことに驚き、ITの可能性の大きさを感じたという。

 佐藤氏は、自分が起こす事業によって「人間の生活や習慣をちょっとだけ変えたい」と語る。グーグルやヤフーは、検索という習慣を根付かせた。アマゾンはインターネットでの購入の習慣を根付かせた。佐藤氏は、物作りや製造業に関わって世の中を変えるのは大変だが、IT分野でなら変えられる可能性がある、自分でも変えられるのではないかという思いを強く持っている。

 創業を具体的にイメージし始めた時「頭の中で考えていることをウェブで実現したいならば、経営者でいながら開発者であることが必要だ。自分には技術力が必要だ」と、まず最初に友人の付き添いで秋葉原に行った。中古パソコンを買ったのが2007年1月。約3カ月かけてサイト構築と簡単なプログラミングを友人のサポートもありつつ独学でマスターした。

佐藤氏

 佐藤氏に、影響を受けたサービスは何かと聞くと、しばらく考えた後に「グーグル、ヤフー、アマゾン、You Tube」と答えが返ってきた。インターネット好きが高じて自分でも作ってみたというタイプではない。「ミクシィ」に参加したのも創業を決めてからだった。

 しかし、まったくの初心者の視点から生まれたのがライフペディアだ。SNSなどのサービスを使ううちに「複数のブログを使っていても、1つのブログに更新されている記事が他のブログには更新されず、もったいない」と感じたという。ずっと長く使い続けることができ、人生を見渡せるメディアがあってもいい、これまでにブログを使ったことがない人にも自分の歴史を視覚的に見られるものを作りたいという意識で作られた。

 現在の利用者は約1200人、登録記事数は約5万2000件。今後20万人の会員獲得を目指し、広告での収益化を狙う。

ITで消費を変えたい

 今後は、消費行動を変えるような情報を提供するサービスを準備中だ。具体的には、安売りなどのセール情報を時間と場所で横断検索し、それを視覚的に見られるサービスを作るという。

 また、ライフペディアも新しい展開に向けて準備を進めている。企業向けサービスの分野で会社情報を時間軸でまとめるなど、可能性は幅広い。ITで事業を展開するという強い意志と、その一方でインターネットのサービスに対して新鮮な初心者の目を持っているのが佐藤氏の強みだ。まずはライフペディアで2万人の個人会員を目標とし、事業を展開していく。

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