「未来検索ブラジル」という一風変わった名前のベンチャー企業がある。
「2ちゃんねる検索」やネット通貨「モリタポ」などのネットサービス、独自の検索エンジン「senna」の開発を行っている技術系のベンチャーだ。代表取締役は「まぐまぐ」の創設者である深水英一郎氏、そして取締役には「2ちゃんねる」の西村ひろゆき氏も名を連ねている。いったいどんな企業なのか--。
同社が入っている代々木のビルに潜入した我々は、側面にサーバルームが並ぶ狭い廊下を通り抜けて、近未来的オフィスにたどり着いた。そして、そこに登場したのは、同社ファウンダーでプログラマーの竹中直純氏と深水氏だった。
竹中もともと、「2ちゃんねる」で検索サービスが使えたら便利じゃないかと、ひろゆきも僕も思っていて、「レス単位できちんと検索できるような精度の高いシステムをつくろう」ということで2002年に始まったんです。
当初は、僕がやっていた別会社の「ディジティミニミ」の一事業としてやれればいいかなと思っていたんですが、いろいろ考えた末に会社化しました。そのときに、スレッド検索や本文検索のインターフェイスができたんですよ。「モリタポ」も1日か2日でつくりました。
ただ「2ちゃんねる」ユーザーにスケールするかどうか非常に不安だったので、パブリックベータとしてテストし続けました。実はひろゆきは、「モリタポ」には懐疑的だったんですが、とにかくやってみようということでリリースしたという感じです。
竹中:「社名を決めるぜ!」という日があって、ファミレスに集まってみんなで決めました。映画の『未来世紀ブラジル』をもじったものにしようと誰かが言い出して、「それにしよう!」と盛り上がったんですよ。映画は、個人情報を管理する情報省がゆがんでいくことで、主人公のサム=ラウリー(ジョナサン=プライス)がおかしくなる、という社会風刺の映画ですよね。でも、同じように情報を扱うけれど、僕らは、みんなが便利で幸せになれるといいなというのがあるんです。
竹中:2005年に僕がタワーレコードの取締役に就任(今年2月に辞任)するときに、代わりにこちらの代表取締役に就任してもらいました。タワーレコードはIPOを目指すという建前だったので、役員兼務が不可能だったんですよ。だから僕は他の会社も含めて役員を全部辞任したんです。深水さんの自宅に、「ブラジルをお願いできませんか?」とクリスタルの花瓶を持ってお願いに行ったのを覚えてます。
深水:……ここには尊敬する人たちが集まっているので、僕も寄せて欲しいなと思ってたんです。竹中さんなんて、自分で「天才プログラマー」って言ってるし、すごい人だなと(笑)。いまだにそれは思ってますよ。
竹中:はい。検索関連の仕事が中心というのは今も将来も変わりません。ただ、モリタポの用途が広がってきているので、「検索」と「モリタポ」という、2つの軸ができてきたというのが、最近のブラジルです。
モリタポを使ったサービスには、「2ちゃんねる」の本文検索や「p2」というブラウンジングサービスなどがあるんですが、最近「コッソリアンケート」というアンケート作成ツールもリニューアルしました。クロス集計や、細かいセグメント化までできるようになっています。質問方法によっては、偏りの少ない有用なデータが取り出せます。回答者には「2ちゃんねるユーザー」がやっぱり多いのでバイアスはかかってますが。カスタマイズも可能なので企業ユーザーさんにもどんどん利用してほしいんですよ。利用価格は、大手調査会社の10分の1です(笑)。
竹中:アクティブな利用者は約6万3000人で、非アクティブユーザーも含めると18万人前後です。「2ちゃんねる」ユーザーは、ブラジルが把握しているスレッド検索のログ集計だけですけれど、1000万人は軽く超えてるんじゃないですか?
竹中:現在リリースしているのは、「senna」のエンドユーザー版なんですが、エンタープライズ版も開発しています。こちらは、エンドユーザー版にはない機能を追加する予定なので、有料にしたいと思っています。
実は、このエンタープライズ版は、技術的にはグーグルに勝ってもおかしくないようなものを考えているんです。何万台とか何十万台になってもスケールするような分散機能とか。もちろんクローラーの開発も考えています。ただ、うちがグーグルと同じ事をしたとしても、「グーグルでいいじゃん」と言われて終わってしまうので、「ブラジル」でしかできない何かを見つけないといけないと思っています。
竹中:まず、セグメンテーションですよね。広く浅くではなく、深いセグメンテーションです。ブログならブログ、「2ちゃんねる」なら「2ちゃんねる」というような。端的にはサービス内容に表れるので、今後もその辺を見てもらえばいいんじゃはないでしょうか?
以前、ライブドアと組んでリリースした「未来検索ライブドア」も、ブログ検索に需要があるということで、やりはじめたんです。「俺はグーグルに勝てるような検索エンジンをやりたい!」って、堀江貴文が酒を飲んでたときに言うから「じゃ、やる?」ってことで。
竹中:対抗するとかそういうつもりはありません。ただし、国産のちゃんとした検索エンジンってほとんど死に絶えつつあるなかで、未来検索ブラジルはエンドユーザーからエンタープライズまで、ちゃんと使える検索エンジンを純国産で持っている唯一の会社なんですよ。それを、継続的に進化させてどんなに赤字でも捨てない覚悟を持った会社です。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス