難しいコンピュータ計算問題に取り組みたいなら、1万個を超えるヘリウム風船をアニメーション化するために必要なアルゴリズムについて考えてみるといい。風船にはそれぞれに糸が付いているが、同時にほかの風船と相互作用しており、風船の束全体で小さな家を空中に持ち上げるというものだ。
これはPixar Animation Studiosの制作チームが映画「カールじいさんの空飛ぶ家(原題:Up)」の制作に着手したときに直面した課題だった。「カールじいさんの空飛ぶ家」は、Pixarの10作目の長編映画で、制作に5年をかけた。米国では米国時間5月29日に公開されている。
同チームにとって、風船を手描きでアニメーション化することは全く考えられなかった。風船の数が5桁であり、特に風船の束では2つの風船のあらゆる相互作用が連鎖反応を引き起こすということを考えていたからだ。連鎖反応とは、1つの風船が別の風船にぶつかると、その2つ目の風船が動いておそらく3つ目の風船にぶつかり、これが次々と続いていくというものだ。この動きのすべてを、スクリーン上で見えるようにする必要があった。
「カールじいさんの空飛ぶ家」のストーリーは、主人公である78歳のカール・フレデリクソンを中心に展開する。カールは平凡な日常がいやになって、自分の家に無数の風船を結び付けて南米へと冒険に旅立つ。1人の少年が空飛ぶ家に取り残され、愉快な旅が始まる。
風船の束は、「空飛ぶ家」と題する映画において、ブランディングの中核を成すものだ。そのため、Pixarはこの映画を宣伝するにあたり、世界的な風船飛行の専門家2人の協力を得て、何十もの色とりどりの巨大風船を付けたアームチェアで実際に空を飛ぶイベントを含む、全米ツアーを開催した。
「カールじいさんの空飛ぶ家」のスーパーバイジングテクニカルディレクターSteve May氏は次のように語る。「空を飛ぶ家についての映画ができた。これはかなりとっぴなアイデアだ。子どもたちのパーティの経験から、風船の束がどのように動くか、誰もが知っている。そこで、本物らしく風船をアニメーション化することができたなら、家が空を飛ぶということの信ぴょう性が受け入れられるだろう」
May氏や、同映画のプロデューサーJonas Rivera氏、監督のPete Docter氏、そしてこの映画の制作に携わった多くの人たちにとって、空飛ぶ家の物語という文脈においてさえ、信ぴょう性が重要だった。この信ぴょう性をもたらすものの大部分は、よく練られた上で書かれたストーリーと脚本だが、疑い深いこともある観客を納得させるためには、アニメーションも負けず劣らず大きな役割を果たす。
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