金融業界にはいまだに忌まわしい記憶が残っている。
世の中がドットコム・ブームに沸いていた当時、広告付きの無料インターネットサービスを計画し、そこから利益を上げようとしていたネット系の新興企業がいくつもあった。
しかし、そうした計画の多くがうまくいかなかったことは言うまでもない。ところがいま、広告収入を頼りに新たなネットサービスを提供する企業が増えている。このなかには、大手ITベンダーからごく小規模なシリコンアレーの新興企業までさまざまな企業が含まれているが、たとえばMicrosoftでは「Windows Live」プラットフォームを用意して、広告ベースのビジネスに本腰を入れ始めている。Windows Liveでは、電子メールやブログ、インスタントメッセージなど、インターネットベースのサービスが提供されているが、その大部分は広告が収益源となっている。
そう聞くと、昔のいやな記憶がよみがえるかもしれない。だが、業界の専門家らによると、そうした心配はまったくないという。現在では新しい広告トラッキング技術の登場しており、またProcter & GambleやFord Motorのような大手の広告主が先頭に立ってオンライン広告へのシフトを進めていることから、今回のオンライン広告ブームは成熟したもので、信頼性があるとアナリストらは考えている。これは、ネットバブルの当時には欠けていた部分だ。
前回のブームの際には、「大手企業が(広告媒体として)インターネットを受け入れていなかったため、成長のスピードが遅かった」と、WR Hambrecht + Co.のアナリストDenise Garcia氏は述べている。しかし、いまは「Procter & Gambleや大手自動車メーカーなどが、テレビをはじめとする他のメディアへの支出を減らす一方で、オンライン広告への支出を増やすと明言していることから、今回はそのようなことにならない」(Garcia氏) AdAge.comによると、たとえばFord Motorでは昨年、雑誌への広告割当て比率が23.5%から21%へと減少したが、インターネット広告の割合は3%から3.5%に増加したという(同社の宣伝費は全体としては横ばいだ)。また、FordやGeneral Motors、Absolut Vodkaでは、今年マーケティング予算の20%をネットに割り当てる計画だと報じられている。
GoogleやYahooなど、広告販売を主たる収入源とするインターネット大手各社が、有望な収入源を見つけ出したことは明らかだ。市場調査会社のeMarketerは、米国のネット広告市場の売り上げが2006年には156億ドルになると見積もっているが、Googleの売り上げはそのうちの約4分の1を占めると見込まれている。また、対するYahooの売り上げは20.7%を占めると見られていると、eMarketerのシニアアナリストDavid Hallerman氏は述べている。
こうしたことを考え合わせると、Microsoftが18カ月前から自社開発の検索エンジンを使い始め、先週には「adCenter」という自前の広告配信用エンジンを(米国で)発表したのも、とくに驚くことではない。
おおかたの見方によると、オンライン広告市場はまだほとんど未開拓の状態だという。eMarketerによると、オンライン広告への支出は、広告費全体のわずか5%セントを占めているだけだが、今年は24.4%の伸びを示すという。一方、テレビ、ラジオ、屋外広告、新聞、DMなど、全メディアを合わせた広告費の伸びは4.2%に過ぎない。
「新聞や雑誌、ラジオよりも、ネットに使う時間が増えている。いまでは、さらに多くの人々が日常生活の一部として、インターネットを利用している」(Hallerman氏)
広告業界団体のInteractive Advertising Bureauと、監査法人のPricewaterhouseCoopersが先月公表した調査結果によると、米国でのネット広告への支出は、2005年に過去最高の125億ドルに達したという。
さらに、市場調査とコンサルティングを行うParks Associatesによると、米国のネット広告関連支出は、2010年までに235億ドルに増加する見通しだという。一方、世界全体のネット広告関連支出は、2005年の195億ドルから2010年には550億ドルまで増加すると、Piper Jaffrayは予想している。
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