【第1回】ソーシャルメディア化する世界

藤崎実(アジャイルメディア・ネットワーク)2012年06月22日 08時00分

 近年のソーシャルメディアの発展と普及、テクノロジーの進化は今が過渡期といえます。そこで時代をひも解く手がかりとして、アジャイルメディア・ネットワークが連載を担当することとなりました。

 これから数回にわたり、ソーシャルメディア時代の変革や、新しいコミュニケーション、今後知っておくべき動向など、多角的な視点からリレー形式の連載をしていきます。新しい時代に帆をあげ、大きく前進していくためには、まずは時代の風をきちんと感じることが大切です。みなさん、どうぞお楽しみに。

ミスUSAの選考でTwitterが活躍

 6月3日にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催された「ミスUSA」の最終選考会で、Twitterが活躍したというニュースが報じられた。

  • 「ミスUSA」のウェブサイト。2012年からTwitterと連動した

 どういうことかというと、水着審査とイブニングドレス審査の生中継で、視聴者からのTwitterを通じたコメントが放送されたというのだ。さらには一般からの質問を、選考の前週からTwitter上で受け付け、そこから選ばれた質問が最終選考に残った5人へインタビューされたとのこと。(これは今でも「#AskMissUSA」のハッシュタグでツイートを見ることができる)

 この報道で大変面白かったのは、栄冠に輝いたOlivia Culpo(オリビア・カルポ)さんのこともさることながら、そこで活躍したTwitterの存在に大きなスポットライトが当てられていたことだ。

 審査における一般視聴者からのコメントのリアルタイム性と劇場性。それらが大きな盛り上がりをみせたことは容易に想像できるし、世界中から寄せられたツイートからどんな質問が選ばれるか、そのドラマチックな演出もまさに今っぽいものだといえる。

 ちなみに1952年に始まった「ミスUSA」は60年の歴史を誇るが、2011年大会で初めてインターネットによる投票を取り入れ、2012年においても視聴者から投票を募ったそうだ。そして2012年、ついにTwitterと連動したのだが、さてこれら取り組みは一体何を意味するのか――。

 それらは全て、視聴者参加型という主催者側からのメッセージと受け取れる。つまりミスUSAは限られた審査員による閉じられた審査で決まるのではなく「みんなで決める、みんなのクイーンなんだ、だからみんなで盛り上がろうよ」というメッセージが読み解ける。もちろんイベントとしての話題性やショーを盛り上げる演出になるという意図もあったろう。しかし、それ以上にここで大切なのは、ただ見るだけではない参加性の用意であり、さらにはみんなで作る(決める)、という“参画性”が、非常に重要であることがわかる。

大統領選挙も今やソーシャルプロモーションの時代へ

 そういえば、2009年のカンヌ国際広告祭のチタニウム部門(これからのコミュニケーションの方向を示唆する最も革新的なキャンペーンに与えられる賞)でグランプリを受賞したのは、何とObama米大統領の「選挙PRキャンペーン」だった。

 もちろん大統領当選は、オバマ氏の政策能力やスピーチ力など本人の実力も大きいが、ソーシャルメディアをいち早く活用し、さまざまな施策を組み合わせることで多くのファンと寄付を獲得し、社会を動かし、当選に至ったことは紛れもない事実である。

 考えてみれば大統領選挙は国民からの支持を得るという意味でコミュニケーション戦略の最前線ともいえ、歴代の大統領候補はそれぞれ時代の最先端となる戦略ブレーンとともに選挙に望んできた。その意味で、オバマ大統領の選挙戦略はまさにソーシャルメディア時代の象徴であり、ミスUSAが“参画性”を意識していたとすれば、その原点はすでにアメリカ国民全員が体験済みだったというわけだ。

 ちなみに2012年の大統領選挙を控え、2011年よりオバマ大統領はソーシャルメディア上での活動を次々と活発化。この3月には、アメリカの女性層に圧倒的な人気があるといわれている「Pinterest」にもアカウントを開設した。これは現在最も旬なソーシャルメディアとして注目されているサービスであり、このような時代の風をつかまえたホットなコミュニケーションを即座に活用するあたりは、さすがというしかない。2012年の選挙キャンペーンも、やはり目が離せない。

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