1980年代にネットワークが普及し、1990年代にはインターネットが普及した。そして2000年代は、Web 2.0が時代の象徴となりつつある。Web 2.0を説明するために必要なキーワードは、「ウェブ=プラットフォーム」、そして「参加の時代」だ。こうしたキーワードは、多くの開発者が参加して作り上げるオープンソースソフトウェア(OSS)と共通点が多く、ソフトウェア業界へも大きな影響を与えている。
5月に開催されたNew Industry Leaders Summit(NILS)にて、「オープンソースソフトウェアの市場動向」と題したセッションが開催され、OSSに深く関わるスピーカーが勢ぞろいした。壇上に登場したのは、Palamida 最高経営責任者(CEO)のMark Tolliver氏、Socialtext CEOのRoss Mayfield氏、Zimbra 社長 兼 最高技術責任者(CTO)のScott Dietzen氏だ。モデレーターは、Mitsui & Co. Venture Partners インベストメントパートナーの竹内寛氏が務めた。
セッションの前半は、PalamidaのTolliver氏が単独でプレゼンテーションを行った。Palamidaはサンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業で、ソフトウェアのコードを分析し、ソフトウェアおよびそのコードの知的財産権を明確にするツールやサービスを提供している。OSSを利用するにあたって、法的な問題に発展しないためにも、所有権やライセンス体系を事前に知っておく必要があるためだ。
こうしたサービスを提供するPalamidaのCEOとして、Tolliver氏はOSSとの関わりも深い。そのTolliver氏がまず語ったのは、ソフトウェア業界に起こっている変化についてだ。
その変化とは、今後10年でWeb 2.0が普及し、インターネットがソフトウェアのプラットフォームになること、そして、Web 2.0がアプリケーションのあり方を変えつつあるのと同じように、OSSがソフトウェアのサプライチェーンを崩しつつあるということだ。「先進的なソフトウェア企業とその顧客は、こうした変化によって大きな恩恵を受けることになる」とTolliver氏は話す。
同氏は、Web 2.0が「Aggregation」(集団)や「Participation」(参加)というキーワードで語られていることから、「Web 2.0では集団の知性が生かされる。つまり、アプリケーションやサービスは利用者が多ければ多いほど良いものになる」と説明する。また同氏は、Web 2.0の時代では「データが中核的な役割を果たすことになる」としている。
その上でTolliver氏は、「Web 2.0の世界で起こっている現象はソフトウェア業界にも当てはまる」と話す。OSSがコミュニティの中で開発者の参加によって開発され、知識やデータが集まることでより良いものになっているためだ。「誰もSoftware 2.0という表現は使わないが、OSSの動向はWeb 2.0と同じだ」と同氏はいう。
こうした現象により、名の知れた老舗のソフトウェア企業が、OSSによってその地位を脅かされ、新しい企業がこの業界で活躍し始めている。例えば、データベースの「My SQL」や「PostgreSQL」、ミドルウェアの「JBoss」や「Beehive」、ERPやCRMの「SugarCRM」、「OpenERP」などがその一例だ。Tolliver氏は「これらの名前は3年前にはほとんど知られていなかったはずだ」と述べ、「OSSの普及により、価格帯や流通モデル、サポートモデルなど、ソフトウェア業界が変動しつつある」とした。
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