テレビやビデオ、デジタルカメラをはじめとした家電やマルチデバイスがネットワークと連携することで、ユーザーはどういった恩恵を受けられるのか。そしてまた、開発者たちにとってはどのようなビジネスチャンスが生まれるのか。
8月29日に開催されたシーネットネットワークスジャパン(現:朝日インタラクティブ)主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference2009〜ネットサービスで変革する情報機器・家電の世界」(CJIC 2009)では、そんな「ネット連携」のこれからについて語るパネルディスカッションが開催された。
「ネット連携で広がる家電・情報機器の未来」と題された同パネルディスカッションには、グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏、フリービット代表取締役社長CEOの石田宏樹氏、WillVii代表取締役社長の塚崎秀雄氏の3人が登壇。モデレーターはCNET Japan編集長の別井貴志が務めた。
パネリストはそれぞれ、家電メーカーや家電と連携するネットワークインフラの提供者として、「家電とネットの連携」について考えてきた識者たち。かつてソニーで商品企画を担当していた塚崎氏は、同日開催されたCJIC 2009の各セッションや展示された製品を見て、「メーカーにいた時に描いていたものが、いよいよ現実になってきた」と語る。
家電などがネットと連携しはじめた今、本当にネットと連携すべき家電とは一体どういうものなのだろうか? ISP事業をはじめとして通信インフラに携わってきた石田氏は、「インフラ屋として最高の家電は冷蔵庫だ」と語る。「常に通電しており、家庭内に場所も確保されている冷蔵庫をハブにすれば、いろいろな機器の連携ができる」(石田氏)。また、車車間通信による交通の安全性向上についても期待しているという。
辻野氏は、家電について、(1)洗濯機のように、作業の時間を節約するための「時間節約型」のもの(2)テレビやレコーダーのように、そのものを使って時間を消費する「時間消費型」のもの--この2種類に分かれると説明。ユーザーがどういった目的や役割で家電とネットを接続するのかをまず考えることから、ネットと連携すべき家電を考えるべきだとした。
このように識者からの意見は挙がるものの、一般のユーザーにとって、家電とネットワークの連携はまだまだ黎明(れいめい)期。普及に向けてどういったことをすべきなのだろうか。
石田氏は「製品を早く作って早く修正する、それができる文化作りが重要」と、作り手の姿勢の変化を求めた。iPhoneやWindows Mobile端末をサーバやストレージとして利用できる同社の「ServersMan」も、「本来企画会議を通らない製品」(石田氏)だが、こういった文化があるからこそ素早く開発し、提供できたという。
また塚崎氏は、「操作性」について語る。製品がネットワークとつながり高機能化することで、操作が難しくなっていることが普及を阻害する1つの要因と分析。仕様を固め、操作やインターフェースを統一することも、ユーザーの利便性の観点から忘れてはならないとした。
では、実際に家電とネットワークが連携して一般ユーザーにまで広く普及した場合、メーカーや開発者にはどんな課題やチャンスがあるのだろうか。
辻野氏はまず、サービスや製品の作り方を変える必要があると注意をうながす。同氏は「旧来の作り方をしているとコストがかかり、ハードウェアをどんなに作ってももうからない。プラットフォームのないところに新しいプラットフォームを持ち込み、作り方を一新しないといけない」と語り、プラットフォームを共通化した開発手法の重要性を説いた。そして「自社の宣伝だが(笑)」と前置きをした上で、Googleが提供するモバイル向けOS「Android」やウェブブラウザ「Google Chrome」を紹介。「こういった『材料』をうまく使って世界に出てほしい」(辻野氏)とした。
プラットフォームの重要性については石田氏も同意し、「ケータイでもPCでも、日本はプラットフォーム化で負けてきた」と語る。「我々の技術はいろいろ組み合わせて使えるが、『どう使うか』という発想が出てこない。大事なのは世界観で、プラットフォームはそれを支えるためのもの」(石田氏)。
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