「日本のIT革命は、まだブラウザという1つのアプリケーション上でしか起きていない。インターネットの可能性はもっと大きく、ダイナミックなものであり、現在は始まりに過ぎない」――フリービット代表取締役社長CEOの石田宏樹氏は、こう断言する。
これは、8月29日に開催されたシーネットネットワークスジャパン(現:朝日インタラクティブ)主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference2009〜ネットサービスで変革する情報機器・家電の世界」(CJIC 2009)での一幕だ。
フリービットは2000年5月創業。インターネット接続事業者(ISP)にインフラなどを提供しており、200社以上のISPを顧客に持つという。売上高の90%以上が継続課金の売り上げという、安定したビジネスモデルが特徴だ。2007年に東京証券取引所マザーズ市場に上場しており、2009年4月期の業績は売上高が107億6700万円、営業利益が15億7500万円となっている。
現在、フリービットが最も力を入れている事業が、ServersManという製品だ。これは家電や携帯電話などの端末をウェブサーバにするソフトウェアで、世界展開を前提に置いている。「ウェブの世界には言語の壁があり、日本語のコンテンツはどうしても世界に流通しにくい。我々が目指すのは、一切ローカライゼーションのいらない、インターネットの新しい利用方法だ」(石田氏)
フリービットは第3位の株主がソニーであることもあり、古くからネット家電の開発に携わってきた。そこで石田氏が感じたのは、「ネット家電はいままでの考え方でいいのか」「インターネットの可能性は、ウェブだけではない」という2点だったという。
ネット家電は既存の家電にインターネット機能を付けるという発想になりがちだ。しかし石田氏は、ネットワークがあることを前提に、ユーザーの行為自体を再デザインすることが求められていると話す。
「例えば冷蔵庫は、『食べ物を保存する』という目的で設計されたものだった。しかし現在、家庭にはインターネットやディスプレイがあり、近くにはコンビニがある。冷蔵庫は『食べ物のキャッシュ』であるのだから、コンビニから24時間商品を届けてもらえるようになれば、冷蔵庫の形も変わるだろう」
インターネットの可能性についても、「ブラウザ上での活動は、人間の時間が24時間しかないという限界を超えられない。でも機器同士がつながり、新しい価値を生み出すようになれば、既存の産業をインターネット上に移すというだけではない、新しい産業が生まれてくる」と期待を語る。
そうして開発されたServersManは、アプリケーション自体がIPv6のアドレスを持つ点が大きな特徴だ。端末ではなくアプリがネットワークのノードになることで、ServersMan専用のVPNを引くことができ、セキュリティが担保されたウェブサーバを簡単に開設できるという。
現在はiPhone版、Windows Mobile版があり、いずれもアプリのダウンロードは無料だ。アプリをインストールして会員登録をすると、携帯電話をウェブサーバとして利用できるようになる。端末内に保存した動画や写真、文書ファイルなどをインターネット経由でPCなどから閲覧できるため、小規模グループのファイルサーバとしても利用できるという。また、災害時用のバックアップとしても使えるのことだ。
家電にも広げていく計画で、第1弾として、PCに接続すれば撮影した動画をそのままウェブに公開できるデジタルビデオカメラ「ServersMan Scooop by EXEMODE」を9月下旬に発売する。価格は7980円で、9月9日よりエグゼモードのオンラインストアで予約受付を開始している。このほか、Android版やネットワーク接続ストレージ(NAS)版なども順次公開していくとのことだ。
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