文:Stefanie Olsen(CNET News.com)
翻訳校正:大熊あつ子、福岡洋一
2006/12/13 19:46
ティーンの子どもをもつ親にとっては、「PAW」「MOS」「CD9」といった3文字の略号が、卑猥な4文字語以上にいまいましいものにちがいない。
これも時代の特徴だと言える。この年頃の子どもたちは、インスタントメッセージ(IM)や携帯メールなどのツールに、ごく自然にあっという間になじむ。そうした場面では、話の内容を仲間以外に知られないために頭文字語やスラングが使われることがある。しかし親にしてみれば、こうしたIMスラングはあまり心地いいものではないはずだ。「PAW」は「parents are watching(親が見ている)」の略。「MOS」は「mom over shoulder(母親がすぐ後ろにいる)」の略。「CD9」は「Code 9」の略で、これも親が近くにいることを意味する。調査によると、4人に1人の子どもが、日々こうした暗号を使って、チャット友だちが不用意に立ち入った話をしないよう合図を送っている。
しかし、何の略かは秘密にされているにもかかわらず、インターネット利用に長けた親たちは、暗号解読のツールを次々と手に入れる。そして、親と子のいたちごっこが続く。監視ソフトウェアを使ったり子どもの後ろから見ていたりして、「wu」(what's up:「調子はどう?」の略)や「plox」(please:「お願い」の意)など、わけのわからない言葉を見つけると、親はNoSlang.comやTeenangels.org、Teenchatdecoder.comといったサイトに行って、すぐさまその略語の意味を調べる。子どもたちはさぞかし歯ぎしりをしていることだろう。
余暇にNoSlang.comを運営しているエンジニアのRyan Jones氏(25歳)は、「親からは称賛され、子どもたちからは憎まれる」と述べた。Jones氏は最近のサイト更新で、数千に及ぶ略語を新たに追加し、「Firefox」や「Internet Explorer」で検索しやすくするためのプラグインもダウンロードできるようにした。
「私が親に手がかりを提供したことで、自分たちが小言を言われるものだから、怒っている子は多い」(Jones氏)
確かに、この年頃の子どもは親との間に線を引き、つきあう仲間の範囲をはっきりさせようとすることが多い。ピッグラテン[語の音の並びを入れ替えるなどして作る隠語]から手を使う符丁まで、昔から子どもは自分たちだけの秘密の言葉を案出してきた。そうした行動の今風の表れがIMの略語というわけだ。
しかし、略語を使うのは親を煙に巻くためだけではない。それは、オンラインで連絡を取り合っている子どもたちを見ていればよくわかる。調査によると、子どもたちはまるで曲芸師のように、3つから5つのチャットを同時に進めていたりするという。オンラインで何か調べたり、宿題をしたり、音楽を聴いたりしながら、友だちと会話を続けていることも多い。携帯電話ではテキストメッセージに文字数の制限(たとえば160字まで)がある。したがって、メッセージは簡潔でなければならない。
「子どもたちは、言葉を短縮する方法をつねに見つけて、会話のセンスを磨いている」と、Pew Internet & American Life Projectのシニアリサーチスペシャリスト、Amanda Lenhart氏は話す。
もちろん、頭文字語は子どもたちだけのものではない。プログラマーやゲーマーなども、自分たちの専門用語を略語化してきた長い歴史をもつ。そして、IMやメールに親しんでいる人であれば、「OMG」(Oh my God:なんとまあ)、「LOL」(laughing out loud:爆笑)、「WTF」(what the f**k:いったい何)といった略語は誰でも知っている。
しかしネットの事情に詳しい人によると、ティーンに関して言えば、独創性がすべてだという。
たとえば日本では、携帯メールに真っ先に飛びついたのは中高生の女子だった。いまやテキストメッセージの文化は日本のほぼ全域に浸透しているが、その水準を引き上げてきたのは少女たちだった。南カリフォルニア大学Annenberg Center for Communicationで若者とテクノロジの研究をしている伊藤瑞子氏によると、日本の少女たちはさらに新しい「ギャル語(ギャル文字)」と呼ばれる独自の特殊な文字を使い始めた。これは、日本語の文字や記号を独創的に組み合わせた複雑なコミュニケーションシステムだ。こうした特殊な表記の数は数百にのぼるという。
「こうしたことはサブカルチャーで多く見られる。若者たちは、主流の文化から自分たちを区別するために、自分たちだけの言葉を開発する」と、伊藤氏は話す。
Teenchatdecoder.comなどのサイトには6000種近い頭文字語が登録されていて、親がオンラインで調べることができる。そのため、子どもたちは尻尾をつかまれないよう、また新語を作らなければならない。たとえばJones氏は、親が近くにいることを伝えるのに、「Code 9」の代用として「Code 8」を使うことにした子が、それを「CD8」と書いているのをよく見かけるという。
カリフォルニア州バークレーに住むAtalya Stachelさん(17歳)は、4年前の8年生のときからAOLインスタントメッセンジャー(AIM)を使っていて、テキストメッセージはハイスクールに入ってから利用しているという。Stachelさんは、友だちとの間で「LOL」や「BRB」(Be right back:すぐ戻る)、「TTYL」(talk to you later:あとで話す)など、一般的な頭文字語の多くを使っている。普段の生活で内緒の話をしたいときは、すべての単語の間に「ittica」を挿入するなどして、バレにくくしてしまうこともある。チャットやテキストメッセージで特にプライバシーを守りたい場合は、自分たちだけの言葉を編み出すという。
Stachelさんは、次のように話している。「ときどき、たとえばドラッグの話なんかだと、『マリファナ』だなんてあからさまに言いたくないこともあるから、『あなたに作ってあげたオレンジジュース、もう受け取った?』とかいう聞き方をする。別の言葉を使っても、友だちにはそれで通じる」
Stachelさんはさらに言う。「その場で言葉を作ることだって何度もある。でも、友だちは私をよく知ってくれているから、それで言いたいことがわかる」
確かに、ティーンのトレンドが変わるのは早い。それだけに、親が子どものトレンドについて行くのは大変だ。Pewの調査によると、固定電話を使って友人と話をするほうがいいと答えたティーンが52%いた一方で、24%はIMのほうが好きだと答え、12%は携帯電話で話すのがいちばん好きと回答したという。しかし、ちょっとした会話なら、IMかテキストメッセージを好む傾向がある。
ティーンが安全にネットを利用できるよう教育するプログラム、Teenangels.orgのウェブサイトを開設したParry Aftab氏によると、親は、監視ソフトウェアを使って子どもの行動をチェックしていても、子どもが何を言っているのか見当もつかない場合が多く、そうしたときに意味を調べられるプロジェクトが役に立つという。親が近くにいることを伝える略語以外にも、「MIRL」(meet in real life:直接会いましょう)、「E」または「X」(Ecstasy:「エクスタシー」というドラッグ)、「NIFOC」(naked in front of the computer:コンピュータの前で裸)といった用法に親は注意すべきだと専門家は指摘する。
ペンシルベニア州在住で、15歳と17歳の息子がいるSteve Lanichさんは、子どもが友だちと交わしているチャットのメッセージを、ときどき後ろからのぞいて見るそうだ。そして、会話に出てきた言葉や略語がわからない場合、息子たちに何の話をしているのか聞くこともあるが、こっそり調べることもあるという。
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