一般用医薬品のインターネット通販を規制した改正薬事法省令の無効確認・取消を求め、ケンコーコムとウェルネットが起こした行政訴訟が12月24日に結審した。判決が下されるのは2010年3月30日。7カ月にわたり争われてきた規制の是非に東京地方裁判所(東京地裁)はどのような判決を下すのか。
改正薬事法の施行は6月1日。同法では、一般用医薬品を副作用のリスクの高い順に第1類〜3類の3種に分類している。具体的には、一部の胃腸薬や鼻炎薬、禁煙補助剤などが第1類に、風邪薬や漢方薬、妊娠検査薬などが第2類にそれぞれ分類されている。
そして厚生労働省(厚労省)が定めた省令では、第1類と第2類について「対面販売」による情報提供を前提とし、インターネットなどでの通信販売を禁じた。これまで同じ医薬品を利用していた場合や離島に在住する場合は例外的に販売を認めているものの、2年間に限定した経過措置という扱いだ。
こうした一連の動きの中、ケンコーコムとウェルネットは5月25日、一般用医薬品ネット販売の権利確認請求および違憲・違法省令無効確認・取消を求めて、国を相手取って東京地裁に提訴。これまで7月14日に「第1回口頭弁論」、9月1日に「第2回口頭弁論」、10月20日に「第3回口頭弁論」、が行われた。
第4回となる12月24日の口頭弁論では、原告が「準備書面(4)」および「準備書面(5)」を、国が「準備書面(3)」を陳述した。
原告の提出した準備書面(4)では、継続購入者と離島在住者以外に適用されない2年間の経過措置の問題点をはじめ、国が主張する対面販売の原則が、矛盾しており、論理破たんしているという指摘など、これまで繰り返して主張してきた内容に加え、規制改革会議における問題点の指摘(PDF)などをまとめた。
また、準備書面(5)は、国が陳述した準備書面(3)の反論に加えて、ドイツでの医薬品ネット販売禁止が緩和された事例を紹介した上で、薬事法改正に向けた検討部会で厚労省が誤った情報を提供したと論じている。
実はドイツでも、対面販売の原則のもと、1998年に医薬品の通信販売が全面禁止されたという経緯がある。しかしその後、ドック・モリス事件(*)などを踏まえて2003年末には薬品法や薬局法が改正され、2004年以降、医薬品のネット販売が可能になったという経緯がある。
今回の薬事法改正に向けた検討部会である、「厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会」は2004年5月から開始しているが、厚生労働省ではこの検討部会の第2回会合において「対面販売が必要であり、自動販売機及び郵送による販売は禁止(PDF)」と説明している。
しかしその一方で、2004年9月に発表した「定例報告 2003〜2004年の海外情勢」では、ドイツ国内で医薬品通販を認める改革が行われたことを明記している。
これらの事実を踏まえて、ドイツでの法改正を知りながら、検討会で誤った説明をし、訂正しなかった厚労省が「あえて規制撤廃されたことを明らかにせず、検討会の審議を誘導したのではないか」(原告代理人で弁護士の関葉子氏)というのが原告の主張だ。原告代理人で弁護士の阿部泰隆氏もドイツの事例について、「傍証ではあるが、普通の人から考えれば(国側が主張する)『通信販売であれば正しい情報が伝わらず間違って使う』という理屈は通らない」と語る。
ケンコーコム代表取締役社長の後藤玄利氏も「厚労省は、2004年に始まった検討会で(ドイツの事例を)隠し通し、『米国以外では対面販売しかできない』としてきた。一方で2003年の改正によって医薬品の通信販売を認めると言うことを正式な書面で書いている。さらに検討会の報告書にはその事実を『一部割愛』として載せなかった。誤った情報操作をして作ったのがネット通販禁止の実態」とコメントする。
ケンコーコムでは、一般用医薬品のネット販売禁止に関する意見を投稿できる「ストップ・ザ厚労省」を2009年6月に開設しているが、ここに寄せられた意見(12月18日分まで。計672件)も準備書面(5)にまとめた。意見の多くが「規制の意味が理解できない」「一般用医薬品がネットで購入できなくなり困っている」といったものだという。
裁判は第4回の口頭弁論にて結審した。これを受けて、2010年3月20日には判決が言い渡される予定。
「お互いの主張を見比べれば、国側の言っているに筋が通っていなことは確信している。主張することは主張したので、最後は裁判所の判断を待つだけ」(後藤氏)
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