現状、対外競争力がある産業としてコンテンツへの注目は集まった。そしてのその投入(人、物、金といった経営資源)に対する産出(売り上げや利益)の大きさが製造業のそれと比べて極めて大きく、波及的に製造業やサービス業の活性化にもつながるという産業促進政策的な点からも期待が寄せられている。
だが、コンテンツ産業を構成するセクターそれぞれがすでにそれなりの存在感を持っているために外部から手を入れにくくなってしまっている。さらには、その産業自体がデジタル化やネット化といった大きな波の中で大きく揺れ動いているがために、ますます政府の支援などに関して直接的な効果が出にくくなってしまっているのが現実だろう。
そのことが、CoFestaの実現過程で改めて明確化してきたのではないか。逆にいえば、どういうことが支援しやすいのかがわかってきたと言っていい。例えば、産業それぞれに支援をするのではなく業界を横断して必要な人材像やスキルを定義することや、支援の方法を見直すことこそが、政府や、新規参入者の役割ではないか(映像教育において、欧米で成果を挙げている手法と現状日本で行われている内容とを徹底的に比較し、その利点を習得するといった努力がどの程度行われているかについてはかなり疑問である。質的な担保を求めることは政府の責任とする…などを考えてもいいだろう)。
また、コンテンツ立国という発想の下で、コンテンツの概念の拡張が可能ではないかという発想も生まれてきている。
これまでコンテンツ業界という言葉が指す範囲は、主にエンターテインメントを中心としたメディア産業の周辺だった。が、実はエンターテインメントでないものや、コンテンツとは異なる業界と考えられてきた領域にも、きわめて広く「コンテンツ」の手法や発想が適用可能ではないか――むしろ、適用することで新たな、それこそ日本ユニークな価値を創出できるようになるのではないか、という発想も生まれてきた。
たとえば、教育的な側面を持たせたシリアスゲーム(ニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」といったタイトルなど)の成功や、モノづくりのブレークスルーとして顧客経験全体をデザインする「経験デザイン」に注目が集まっていることは、コンテンツをアプローチ面からとらえる重要性を示している。
コンテンツという、既存の産業領域を指す言葉から、その機能的な一般性を持つ側面をよりとらえた言葉として「クリエイティブ産業(セクター)」と呼ぶほうが、より適切な方向性を示しうるのではないか、といった議論も生まれている。
その点では、CoFestaと開催期間は重なったものの、独自開催となった「第40回東京モーターショー2007 」(10月26日から11月10日まで幕張メッセで開催)もCoFestaの一環とすることはできなかったのか、という指摘すら可能だ。また、非エンターテインメント領域におけるコミュニケーション手法もコンテンツの1つとして再定義することで、コンテンツスキルを有した人材の参入を促し、その流動化をもたらすといった可能性も出てこよう。
一部では「政府のバラまき的な支援策に過ぎず、不毛である」とすら批判されたCoFestaだが、クリエイティブ産業という視点の必要性を関係者にアピールできたのではあれば、それはそれで大きな成功ではなかったのかと考えられはしないだろうか。
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