MicrosoftのWindows Vista環境においてActiveXを利用すると、不具合が生じる可能性があることが問題化していた韓国。その波紋はまだ収まっていない。
ウェブサイトの標準化運動を行っている団体「オープンWeb」は1月、金融決済院などを相手取り、損害賠償請求を求める訴訟を提起した。
決済院は決済に関連するさまざまな業務をつかさどる機関で、「公認認証書」の発行や、オンライン金融決済における情報保護といった業務を遂行している。ちなみに公認認証書とは、オンライン上で本人確認を確実に行うため発行される電子書類だ。電子政府関連のオンライン手続きやインターネットバンキングなどでは必須で、対応OSおよびブラウザはWindowsとInternet Explorer(IE)のみだ。
オープンWeb側の主張の核心は「公認認証書の発行がMicrosoft製品だけに対応しているのは差別的というもの。ほかのOSやブラウザ上でもこれを可能にして欲しい」という点にある。彼らはインターネット上で原告団を募集しており、当初83人だったが、後に「二次原告団」として63人が追加されている。それに伴って損害賠償額も4億1500万ウォンから7億4000億ウォンに膨らんだ。原告は今後も増える見通しだ。
実は決済院ではMicrosoft以外のOSやブラウザでも公認認証書が発行できるよう以前から開発を行ってはいた。しかしMicrosoft以外のOSやブラウザにおいては、公認認証書関連サービスを有料提供するという主張している。また「公認認証書に関する規定内にすべてのOSやブラウザに対応することを義務付ける項目はない。また多くの金融サービスやインターネットバンキングなどでも、WindowsやIE対応のためその他のOSやブラウザを利用するユーザーに公認院証書を発行しても意味がない」という趣旨の主張を曲げていない。もちろんオープンWeb側ではこれに強力に反発しており、双方の折り合いをつけるまでにはかなり難航しそうだ。
このたび、決済院に対してもう1つ訴訟を提起しようとする企業が現れた。それが決済代行業者PayGateだ。
同社はどんなOSやブラウザでもオンライン決済が可能なソリューションを開発、これを実際にサービスしている。ところが現在、オンラインショッピングモールなどで30万ウォン以上の金額を決済しようとすれば、ActiveXを利用した公認認証書による本人確認をしなければならない。韓国でインターネットサービスを利用しようと思えば、WindowsとIEとを必ず利用する構造になっているのだ。
4月11日付けのZDNet Koreaの報道によると、PayGateでは「決済院が公正な環境下で公認認証書を利用できるようにしていたなら、すべてのOS下で利用できるソリューション開発を行っていた2006年の1年間も無駄にならなかっただろうし、また多くのビジネスチャンスも失わずに済んだだろう」と主張している。決済院はこのような動きに関連した、明確な返事を回避した。
ActiveX問題は、決済院とさまざまな団体や企業の対立の構図をも生み出してしまった。しかし決済院の態度もなかなか強力で、現時点では方針を変える様子は見えない。Microsoft製品を利用するようにできているインターネットの構造から、そのユーザーも多数派となって久しい状況の中、今さら他社製品に対応したところで利用する人も少数だろうというのが、決済院の見方だろう。この分野で主導権を握る決済院が、Microsoft以外の製品にも目を向けない限り、決着はつきにくいかもしれない。
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