「華流ITマーケットウォッチ」では、中国・瀋陽に合弁会社を設立し、オフショア開発や中国市場調査を行うメイプルカンパニーの包偉(バオ・ウィ)が、中国のIT事情を紹介する。今回は、中国版の「秋葉原」をご紹介する。
秋葉原のような電気街は中国語で「電脳街」と呼ばれ、各都市に存在する。電脳街は秋葉原よりも規模が大きく研究学園都市のような性格を帯びていることが多い。電化製品やパソコン部品、ソフトウェアなどを扱った店が軒を連ねているかと思うと、そのすぐそばにソフトウェア企業や大学の入った施設が見える。これは、電脳街が発達した背景を考えれば簡単に理解できる。中国では、電脳街の開発が政府主導で進められていて、産学の連携が重視されているのである。このため、どうしても『優秀な大学があり、かつ産業が発達しているエリア』において電脳街が発達する。
もっとも、どこの電脳街も全く同じというわけではない。電脳街はそれぞれ、地域の特色を活かしながら独自のカラーを醸し出している。
以下に、中国で有名な4つの電脳街とその特徴を紹介しよう。
中国版シリコンバレー--中関村(北京)
北京の中関村科技園区は中国を代表する電脳街。国家政策として、国務院によって設立された超大型サイエンスパークで、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれている。総面積は約100万平方キロメートルにも相当する。
中関村は、5つの開発モデル地区(海淀園、昌平園、電子城科技園、豊台園、亦庄科技園)に分かれており、この地区にはIT産業だけでなく、医薬・バイオ、新素材、光学・機械・電子などのハイテク分野の研究施設が集まっている。また、北京大学、精華大学といった有名大学のキャンパスもある。
IT系企業に関して言えば、この地区には聯想(レノボ)やDTPソフトの方正など、中国国内の有名企業のほか、ノキアやヒューレット・パッカード、IBM、マイクロソフトをはじめとする1600社あまりの外資系企業がオフィスを構えている。また中関村に拠点を構えるハイテク企業の数は1万社以上にものぼる。
この電脳街は1988年5月に国家政策として設立されて以来、現在に至るまで、政府からの投資を受け続けている。中関村政府は2003〜2005年の間に、ここに進出する企業を支援するために3億元(1月9日現在における中国元の対円レートで計算すると約42億円)を拠出したと言われている。そんな中関村は過去10年間、経済成長率30%を維持している。
中関村に対抗心を燃やす?--珠江路(南京)
南京の珠江路は北京中関村を模して作られた華東地区で最大の電脳街である。"北には中関村、南には珠江路"と言われるほど中国では有名だ。こちらも地域産業の振興を目的として、政府によって仕組み作りが行われてきた。
珠江路の周囲には大型の販売店が設けられており、デジタルカメラなどのデジタル商品やノートパソコン、通信機器、OA機器など様々な機器が売られている。なかでも中国南部では最大の規模を誇る有名な販売店として、中心部には「雄獅」「高宏」「華海」「谷陽」、東側には「東来科技大厦」、西側には「新世界中心」「長発数码大厦」などがある。珠江路の電脳街は、全長が4.3キロメートルにも及ぶ。
中関村と比べて規模は小さいが、現在珠江路には2000社あまりの企業が集まっている。
ソフトウェアのメッカ--三好街(瀋陽)
瀋陽の三好街は、コンピュータ関係の店ばかりが集まった通りで、先に紹介した2つの電脳街よりも日本の秋葉原にイメージが近いかもしれない。ここの特徴は、ソフトウェア販売店が多いこと。ここでは東北地方の地域振興を促進するため、東北地方に支社や営業所を持つソフトウェア企業の商品が積極的に販売されている。
三好街の総面積は0.8平方キロメートル。6つのモデル地区から成り、630社のITサービスプロバイダや販売店が入居している。
都会的でファッショナブルな電脳街--徐家匯(上海)
上海の徐家匯は北京のような研究・学術拠点とは異なり、一般市民向けのIT市場として発展した。上海の西南部に位置する徐家匯には、コンピュータショップやオフィスのほか、多くの商業施設や高級マンション、娯楽施設等が集まっている。ここは、電脳街であると同時に、上海を代表する繁華街の1つにもなっている。日本の秋葉原と新宿・池袋をいっしょにしたようなエリアだ。
上海は人口約1600万人を抱える中国最大の都市であり、ここでは45%以上の家庭にパソコンが普及していると言われている。上海徐家匯は、この巨大な消費者市場にIT関連商品を供給している。一方、上海における高度先端技術の拠点は浦東地区に集結しており、繁華街からは遠い。
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