CNET Japan Live 2013

サイバーエージェント×ヤフーが語るスマホ市場の戦略--PC市場の成功体験から次へ

 朝日インタラクティブは12月10日、「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」を開催した。スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの普及が進むとともに、FacebookやTwitter、LINEといったソーシャルメディアの急拡大による影響を受け、大きく変貌してきたマーケティングに焦点を当て、さまざまな角度から、考察、論議した。

 PC市場で成功を収めるサーバーエージェントとヤフーは、今後スマートフォン市場でどんな取り組みを行っていくのか。サイバーエージェントの取締役である小池政秀氏とヤフーでクリエイティブマネージャーを務める内田伸哉氏を招き、CNET Japan編集長の別井貴志がモデレーターとして話を聞いた。

手のひらの中のインターネット--PCとの違い

Amebaのスマートフォン戦略
Amebaのスマートフォン戦略

 サイバーエージェントの現状について小池氏は、「2004年にスタートしたアメーバブログは10年目を迎え、コミュニティも含めて3500万人のユーザーを抱えるまでに成長した。数あるコミュニケーションサービスの中では頭一つ抜ける形でサービスビューを稼いでいる」と説明する。ただし、ブログは永続的なサービスとは考えておらず、スマートフォンのプラットフォーム化に2011年から7割の人員を割いて取り組んでいるという。

 具体的には、1年で100近いサービスを立ち上げ、うち半分はクローズするという早さで開発を進め、2012年9月に正式にサービスインした。課金はアメーバピグのみだが、ゲームにチャネルを拡げ、コマースはフリマやオークションの形で一部展開している。広告展開も始めるなど、課金、コマース、広告を基本に今後の戦略を進めている。

ヤフーのスマートフォン戦略
ヤフーのスマートフォン戦略

 ヤフーといえば、PCでは日本トップのポータルサイトとして大成功しているが、それに甘んじてはいない。「google、Yahoo!のどちらでもいいかな、と思っている人は結構いる。そこにどうアプローチするか」(内田氏)。PCで体験したヤフーの良さを継続しつつ、スマートフォンのホーム画面にいかに入れてもらうかを課題とし、アプリを地道に改善しているとした。

 アプリ開発はスピードも大切で、主要なものについては毎日検討会を行い、マネジャーが日々アップデートしているという。社内の風通しを良くすると同時に、生の声を聞くことを心がけているとも話す。若い世代には「ヤフーがダサい」という声もあるとし、存在感が薄れているという危機感を持っているとした。

 アプリはダウンロードしてもらう必要があるため、アプリを「入れておきたい」というイメージを強める必要があるとし、ブランド強化にも力を入れる。全方位的な対応を行っており、最近はじめたヤフオクのTVCM放送はその一例という。

ヤフーでクリエイティブマネージャーを務める内田伸哉氏
ヤフーでクリエイティブマネージャーを務める内田伸哉氏

 具体的な展開についてヤフーは、スマホ向けリッチコンテンツの開拓に挑戦中という。PCのクリエイティブをそのままスマートフォンに移行しただけでは拡散できなかった経験から、新たな方法を模索していると語る。PCとは異なり接触のタイミングを見る必要があるなど、インフラも含めてリサーチ中で、そうした経験をスマホからPCへ、さらにタブレットへ展開していこうとしている。収益は、プレミアムモデルは残っているものの課金は基本無料のため、ユーザーにも楽しんでもらえる広告を提供することで相乗効果を生み出す効果を狙う方向にあるとした。

 一方、サイバーエージェントでは、主にママやティーンズ向けというターゲットの特化で、すでに広告のリーチが取れるようになってきているそうだ。方向としては、ピグの成功で築いたコミュニティへの強さを活かして課金を伸ばそうとしており、そのためのプラットフォームを機能させるのを課題としている。さらに小池氏は、2014年の春ごろには新しいピグを展開するかもしれないとコメントしている。

スマホで儲かっているLINE--ポータルがタイムラインに進化

サイバーエージェントの取締役である小池政秀氏
サイバーエージェントの取締役である小池政秀氏

 PCとの戦略の違いについて別井編集長が質問したところ、内田氏はタイムラインにヒントがあるのではないかと回答。調査によるとコミュニティへの流入は検索かブログのブックマークが中心だったのに対し、ブログの代用であるFacebookやTwitterが増えているという。年齢の問題もあるかもしれないが、ポータルという概念がも早くもなくなりつつあり、タイムラインに流れるコンテンツをどれだけ作れるかが鍵になるのではないかと分析している。

 また、スマホ市場で大きな成長を見せているLINEの動きは両社とも注視しており、内田氏はアプリよりもインパクトがあり、キャラクターとサービス名が知られているという点で強敵であるとコメント。小池氏も「LINEはモチーフが良く、自分たちが出したかった」とした。

CNET Japan編集長の別井貴志
CNET Japan編集長の別井貴志

 ヤフーは防災アプリなど別のジャンルで認知度を高める。サイバーエージェントはブログが予想以上に好調という。スマートフォン市場へのシフトで既存のPCユーザーに逃げられるのではないかといった声も懸念に終わった。それぞれ堅調な足場を元に次の展開を狙うが、その方法は真逆だ。新しくなる技術やデバイスに対して経験を重ねていこうとするサイバーエージェントに対し、ヤフーは一点集中で何が便利で楽しめるコンテンツであるかを追求していくとしている。

 PCでの成功体験をどうつなげていくかという質問に対しては、両社ともこれまでの経験が応用できるのではないかとコメント。デバイスや画面の違いよりも何がユーザーにとって必要であるか、コンテンツの内容を見極めていく段階であり、すでに取り組みは始まっている。今後、どのようなおもしろい仕掛けが出てくるかを楽しみにしたい。

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