社団法人トロン協会はこのほど、「2006年度組込みシステムの技術動向、利用動向に関するアンケート調査報告書」(PDF形式)および「トロン仕様関連製品実態調査結果」(PDF形式)をまとめ、公表した。
アンケート調査は1996年度から毎年秋に、組み込みシステム技術に関する展示会とカンファレンス「Embedded Technology」において継続的に実施しており、組み込みシステム開発技術の現状とリアルタイムOSの問題点や選択基準、ITRON仕様OSの利用動向などを調査している。11回目となる今回は、Factory Automation(FA)、コンシューマー、通信、運輸など、さまざまな組み込み分野の約480人から回答を得ている。
調査によれば、「システムに組み込んだOSのAPI」は、56%がITRON仕様およびT-Kernelだった。また、「今後採用予定のOSのAPI」は60%がITRON仕様およびT-Kernelで、日本の組み込みシステムでは、トロン仕様が圧倒的に多く使用され、また、将来も使われると予想される結果となった。
組み込みシステムのプログラムサイズの遷移をみると、1Mバイト以上のものが年々増えている。組み込みシステムに使用されたプロセッサは、SH、H8、ARM、PowerPCを中心に多種類にわたっている。
ITRON仕様OS上で使用したTCP/IPプロトコルスタックの過去5年間の推移をみると、ITRON TCP/IP APIの比率が年々拡大し、2002年の11.2%から2006年には23%になっており、トロン協会では「小さいシステムに適した、優れた仕様であるというユーザーの評価が徐々に浸透してきている」とみている。
一方、トロン仕様関連製品実態調査は、トロン仕様関連製品の情報を、組み込みシステムの開発エンジニアに提供するためにまとめたもので、トロン協会、T-Engineフォーラムの会員会社を対象に、各社が開発・販売している機器組み込みシステム向けの製品(OS、ミドルウェア、開発環境、応用製品)について調査している。
調査によれば、ミドルウェアと開発環境については、ミドルウェア256製品、開発環境72製品と、多数の製品が流通していることが分かった。
TCP/IPやファイルシステムなど組み込みシステムに共通して需要の多いものから、音声コーデックやテレビ電話統合ミドルウェアなど携帯端末の開発において特に必要とされるものまで、各社は幅広い用途に応えられるアイテムを用意しており、ITRONとT-Kernelをはじめとするトロン系OS向けのソフトウェア部品や開発環境の品揃えが豊富となっている。
開発環境は、デバッガやエミュレータの品揃えの充実に加え、「統合開発環境」を半導体メーカー、ツールメーカー各社が提供しており、トロン系OSを使用した開発がより効率的にできるようになっている。
また、応用製品については、自動車エンジン制御、カーナビゲーションシステム、デジタルビデオカメラ、IP会議システム、プリンタなど、多岐にわたっていることが分かる。
今後、トロン協会とT-Engineフォーラムでは、製品情報の追加・更新を随時受け付け、最新の情報を組み込みシステム開発者に提供していくとしている。
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