Apple Computerは米国時間4月5日、「Boot Camp」のパブリックベータ版をリリースした。このソフトウェアは、Intelプロセッサを搭載するMacでMicrosoftの「Windows XP」をネイティブで動かせるようにするものだ。
Mac OS X 10.5「Leopard」に搭載される同ソフトウェアは、現在Appleのウェブサイトからダウンロード可能になっている。Appleによると、同社は8月の「Worldwide Developers Conference(WWDC)」でもBoot Campのプレビューを行うという。
AppleのPhilip Schiller氏(ワールドワイド・マーケティング担当シニアバイスプレジデント)は声明のなかで、「Appleでは、Windowsの販売もしくはサポートをしたいとは考えておらず、またそうした計画もない。だが、われわれがIntelプロセッサを採用したことから、Appleの優れたハードウェア上でWindowsを動かすことに多くの顧客が関心を示している。Boot Campがあれば、移行を検討中のWindowsユーザーにとってMacが一層魅力的なものになると思う」と述べている。
Appleは、「Windows Vista」のサポート計画には特に言及しなかった。Vistaは「Windows XP」の後継OSで、現在は度重なる延期の末に出荷予定が来年はじめにずれ込んでいる。
Microsoftは、AppleのソフトウェアがVistaで動作するかどうかについてはコメントしていない。同社が5日午後に出した声明のなかで、Microsoft Windows Client担当ディレクターKevin Kutz氏は、「われわれは、Appleの顧客が(Windowsを)利用できることに興奮していること、そしてAppleがその期待に応えていることをうれしく思う」と述べている。
また、今回のAppleの動きがWindows PCの売上に与える影響も明らかではない。市場調査会社のIDCは、すでに今年のPC売上予想を下方修正しているが、その一因としてVistaの出荷延期を挙げている。また、Vistaのリリース延期によってAppleの売上が伸びると予想するアナリストもいる。
Boot Campを利用するユーザーは、Intel Macを起動する度に、Mac OSかWindows XPのどちらかを選択できる。
この流れは、AppleのCEO(最高経営責任者)Steve Jobs氏がIntelベースのコンピュータへの移行を発表した昨年6月から始まっていた。Appleはさらに、IntelチップとIBMのPowerPCチップの両方に対応できるように、Mac OS Xを開発してきたことも明らかにした。Macにはそれまで、PowerPCプロセッサしか採用されていなかった。
Appleは2006年1月に、IntelのDuoデュアルコアチップを搭載した初めてのIntel Macをリリースした。Appleによると、このマシンの動作速度は、PowerPCチップを搭載する従来のモデルより2〜3倍速いという。この発表以来、同社がMicrosoftのOSをMac上でネイティブに動かせるようにするのではないかという憶測が流れていた。
Appleは、自社のコンピュータ以外ではMac OS Xが動作しないようにしているものの、Macユーザーが自分のマシンでWindowsを動かそうとするのを妨げるようなことは一切してこなかった。ただし、同社はこのアイデアを積極的に支持していたわけではなかった。AppleのシニアソフトウェアアーキテクトCameron Esfahani氏は、3月に行われたIntel Developer Forumでこの点を明確にしていた。
しかし、顧客らはWindowsへの対応を強く望んでいた。そして、最近ではXPをMacで動かそうというコンテストまで行われていた。
JupiterResearchアナリストのMichael Gartenberg氏は5日、「これにより、Macintoshの採用を妨げていた多くの問題が解決される。一部のプログラマーは、Intel MacでWindows XPを動かすことが完全に可能であることをすでに証明していたが、そのための方法はエンドユーザーにはなかなか試せない巧妙なハッキングに近いものだ」とブログに書き込んでいる。
「全体的にみると、これはAppleによる素晴らしい戦術であり、同社のプラットフォームとシステムが一段と魅力的なものになる」(Gartenberg氏)
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