東京・有明の東京ビックサイト会議棟にて10月27日、「2005年東京国際デジタル会議」が開催された。10月26日から29日まで開催されているWPC EXPO 2005との併催で、午前のキーノート・セッションと午後からのフォーカス・セッション(事前選択制)という構成だ。
キーノートにはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の代表取締役 兼 グループCEOの久夛良木健氏が登場。「『PS3』が映し出すデジタル近未来へのシナリオ」と題し、SCEの次世代ゲーム機「PLAYSTATION3」(PS3)の展望と周辺技術への影響などを語った。
まず久夛良木氏は、東芝、IBM、ソニー、SCEが開発を手がける高性能プロセッサ「Cell」を紹介し、同プロセッサを搭載予定のPS3によるデモンストレーションムービーを3本披露した上で、「実際は現実世界と見まごうばかりのハイクオリティな映像世界を、プレイヤーが自在に動かせる」ことを強調した。
Cellを搭載したPS3の核となるキーワードは「リアルタイムな世界をリアルタイムに創出する、Reality Synthesis(リアリティの合成)」。エンターテインメント市場にPS3が与えるインパクトは大きく、スーパーコンピュータにも匹敵する処理能力を活用したエンターテインメントコンテンツ作成はクリエイターにとっても大きなモチベーションになる。従ってPS3は、デジタルエンターテインメントを牽引していく存在になる、と久夛良木氏は明言した。
さらに、Cellプロセッサはワイドダイナミックレンジ(映像信号の再現能力)とノイズフリー、フレームレートの劇的な向上をももたらし、フルHD画質でのマルチストリーミングが可能になると紹介する。例えば自宅でのゴルフゲームと実際にゴルフ場で行っているゴルフプレイをリアルタイムで進行させたり、デジタル放送を大画面で自在に拡大/縮小させたりするほか、インターネット上に数多くある動画や高解像度画像などのリッチコンテンツを50〜60個単位で同時に表示/再生するといったことを想定する。
これらを実現する具体的な方法として、久夛良木氏はCellを複数基搭載したホームサーバーを提唱している。インターネット上にあるリッチコンテンツを、高速回線を利用してホームサーバーへダウンロードし、リアルタイムトランスコーディングやアップコンバージョン、メタデータの処理などを行い、PS3にてプレイするかたちだ。
「仮に2.5GHzの周波数を持つ複数のCellを結合させた場合、計算上では現行のスーパーコンピュータを遙かに上回る1P(ペタ)相当のFLOPSを実現することも理論上は可能」(久夛良木氏)で、めいめいの家庭からコンテンツを収納したスーパーコンピュータにアクセスし、コンテンツを楽しむ形態を提唱している。
久夛良木氏は最後に、「夢を見るのも、紡いでいくのも自分たち。市場とのコンセンサスとリクエストをくみ取りながら次世代へのイノベーションを起こしていく。全世界の人々が等しくその恩恵を受け取れるようにしていきたい」と話し、講演を締めくくった。
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