開発途上国に流れる欧米の使用済み電子機器--環境保護団体が警鐘

Dinesh C. Sharma(Special to CNET News.com)2005年08月19日 12時09分

 インドや中国の工場の床に積もった細かいちりは、米国の消費者や企業が捨てたPCやテレビが実はその後どんな風に処理されているのかについて、多くを物語っている。

 Greenpeace Internationalは最近、使用済み電子機器の解体と、多くの場合は再利用のための分類作業が行われている作業場に、鉛などの有害金属や難燃剤などの化学薬品が存在することについての詳細な報告書をまとめた。同グループは、その結論の部分で、使用済み電子機器の再利用に伴う作業にはあまりにも規制が無く危険であり、また電子機器メーカーが自社製品についてより多くの責任を負担する必要があることを物語る新たな証拠であると述べている。

 「廃棄物と(廃棄された電子機器の)処理に使われる有毒化学薬品は、一般的に、作業者や周辺住民の健康や安全を全く考慮することなく扱われており、環境への配慮も全くなされていない。全体として、深刻な汚染が生じている」(同報告書)

 米国時間17日の同報告書の発表に併せて、米国内の環境保護活動家らは各州の議員に対し、消費者に手数料を負担させる代わりに「製造者による使用済み製品回収制度」を通じた対策を講じるよう強く求めている。電子機器メーカーは使用済み製品の管理にも責任を持つ必要がある、また使用済み機器の発展途上国への輸出を禁止すべきだと、彼らは主張している。

 「われわれが本当に必要としているのは、全米および全世界レベルの効果的な制度だ。製造者側が使用済みの自社製品にも責任を負うことになれば、最初から有害物の少ない製品を設計しようとするだろう」と、米国のComputer TakeBack Campaign代表者でありSilicon Valley Toxics CoalitionのシニアストラテジストでもあるTed Smithは語った。Silicon Valley Toxics Coalitionは、責任ある電子機器の再利用を推進する団体だ。

 製造者に使用済み製品の回収を求める法案は、2004年にメイン州で初めて提出された。また、オレゴン、ミネソタ、ミシガン、ウィスコンシン、ロードアイランド、そしてワシントンなど多くの州でも検討が進められている。この製品回収制度は、使用済み電子機器の処理責任をメーカーに追わせるもので、消費者が製品購入時にリサイクル料金を支払うことを求めるカリフォルニア州のElectronic Waste Recycling Actとは対照的である。Smithは、使用済み製品回収制度が、同業者からのプレッシャーと競争優位性という側面から企業の規制対応を促すものであることから、カリフォルニア州の制度よりも好ましい制度だと述べている。

 環境保護団体や議員らは最大限の努力を行っているが、それでも北米/欧州市場で購入された製品が、中国やインドの廃棄物処理場に堆く積まれることにならないという保証はないと、Smithはいう。

 Greenpeace IndiaのRamapati Kumarによると、たとえばインドのニューデリー周辺には小規模な解体業者が集まっており、同国で出る使用済み電子機器の約40%を処理しているが、このうちの半分近くは米国や欧州から違法に輸入されてきたものだという。これらの多くは「再利用や慈善行為」という名目の元で集められ、時にはインドの法律で輸入が認められている「混在型の金属スクラップ」という形で回収業者から送り込まれてきたものだ。

 Kumarによれば、回収処理場の敷地内には、HPやIBM、Dell、東芝など、あらゆる大手メーカーの製品が転がっているという。これは、大手メーカー各社がリサイクルプログラムで引き取った製品が、米国や欧州のリサイクル業者や貿易業者を経由し、最終的に発展途上国に流れていることを示すものと同氏は述べている。こういったことが起こる理由としてて、同氏はコストの問題を挙げている。たとえば米国ではPCのリサイクルに1台あたり20ドルかかるのに対して、インドでは2ドルしかかからない。

 ただし、これらの企業は一般的に、自社製品だけでなく、さまざまなメーカーのPCや電子機器も引き取っている。また、大手小売業者などのなかにもリサイクルサービスを提供しているところがある。

 海外の一部の地域では役人の腐敗も無視できず、それが状況をいっそう複雑なものにしている。Smithは、先ごろあるカンファレンスで米環境保護局の職員が話した例を挙げた。それによると、使用済み電子機器を満載したコンテナの上に100ドル紙幣を置いておけば、何も質問を受けずに検問を通過できるという。

 Greenpeaceでは、この問題がいかに大きなものであるかを伝えるために、国連環境プログラムを引用している。それによると、毎年全世界で2000万〜5000万トンの電子機器が捨てられており、中国だけでも年間400万台のPCが廃棄されているという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]