インテル、新材料を用いた低消費電力のトランジスタを開発

Michael Kanellos(CNET Japan)2005年02月10日 21時09分

 シリコントランジスタの代替品探しが続くなか、IntelとQinetiqという欧州企業が、現行のプロセッサに使われているトランジスタよりも消費電力が少なく、処理性能で上回るトランジスタの製造に成功した。

 両社は今週、2年に及ぶ共同研究の末に、Qinetiqの開発したアンチモン化インジウムから「quantum well(量子井戸)」というトランジスタの製造に成功したと発表した。アンチモン化インジウムはIII-V化合物と呼ばれるが、その名称の由来は元素周期表の3列目(13族)と5列目(15族)の元素の化合物であるところから来ている。一部の通信プロセッサには、すでにIII-V化合物が使われている。

 量子井戸トランジスタは、電子伝導ではなく電子の状態によってデータの値が決定されるという点で、既存のトランジスタとかなり異なる。

 両社によれば、実験段階にあるこのトランジスタは、現在のトランジスタと同様の処理能力をもつにもかかわらず、10分の1の電力しか消費しないという。また現行トランジスタと同じ消費電力で動作させた場合には、処理能力は3倍にもなる。

 「われわれがQinetiqとの共同研究で行った実験の結果、アンチモン化インジウムが将来のトランジスタに使われる有望な素材であることが証明された」と、IntelのKen David(技術製造グループ、コンポーネント研究担当ディレクター)は声明のなかで述べている。

 大学や半導体メーカー各社は、シリコントランジスタの代替品探しに、ますます多くのエネルギーを注ぐようになっている。トランジスタはプロセッサ内部にある極小のオン/オフスイッチでデジタル信号の0と1をつくり出す。半導体メーカーらは、過去30年間にわたってシリコントランジスタのサイズを縮小し続けており、それが安価で高速なカメラやコンピュータ、電話などにつながる可能性を生み出してきた。

 しかし、シリコントランジスタは、サイズの縮小の限界が近づいている。一部のトランジスタ部品は、すでに原子数個分のサイズとなっており、これ以上はほんのわずかしか小さくできる余地がない。またトランジスタが小さくなると、熱やバッテリの問題を引き起こす電気の漏えい(リーク電流)が発生してしまう。

 研究者らは、シリコンと代替素材を組み合わせたハイブリッド型プロセッサが、約10年以内に登場すると述べている。ほとんど完全に新しい材料を用いたプロセッサが登場するのは、2020年代になるとみられる。

 これらの代替物がいつ現実のものとなり、それが何であるかは、議論の的になっている。トランジスタの代わりとして「crossbar」と呼ばれる画期的な部品を打ち出しているHewlett-Packard(HP)の研究者らは、ハイブリッド型プロセッサが2011年ごろに登場する可能性が高いと断言している。一方で、Intelの技術製造部門のゼネラルマネージャであるSunlin Chouなどによれば、その頃までに可能性のありそうな代替物にメドがつけばいい程度だとしている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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