新たに発表された研究の成果として、高温で動作しても冷却装置のいらない強力なプロセッサや、極めて厳しい動作環境にも耐える電子機器が誕生するかもしれない。
米国時間26日に発売された英科学誌「Nature」によると、愛知県にある豊田中央研究所の中村大輔氏率いる研究者らが、炭化ケイ素(silicon carbide:SiC)ウエハを、欠陥率を低く抑えつつ製造する方法を開発したという。このプロセスはSiCを使った電子機器の大量生産に不可欠だが、ただし実用化には最長で6年ほどかかるかもしれない、と研究者らは述べている。
この新しいプロセスでは、高温のガスからSiCの層を形成するが、これにより最もきれいな面だけ化合物が結晶化する。研究者らによると、この手法を用いることで、欠陥発生率を従来の100〜1000分の1に抑えつつウエハを製造できるという。
「これはかなり以前から取り組まれてきた難問だった。この技術は、社会に非常に大きな影響を与えることになる」と、電子工学を専門にするニューカッスルアポンタイン大学のNick Wrightは、Natureに語っている。
Wrightによると、この技術は家庭用機器や高温で動くエンジンの制御を大幅に効率化するなどの用途にも応用可能だという。産業技術総合研究所のは、シリコン製のものと比べて効率が高く電圧容量も大きが、電力損失ははるかに少ないというSiCトランジスタの試作品を開発している。
カーボランダムとも呼ばれるSiCは半導体だが、あまりに堅いことから電子部品での利用には制限があった。SiCはシリコンの2倍に達する摂氏2700度の融点と、ダイヤモンドに近い硬度を持つため、加工は不可能だとされてきた。これまで、大衆市場向けの電子機器でこれを採用したのは青色LEDや半導体レーザーの一部だけで、ダイオードやトランジスタはやっと出回り始めたところだった。
市場調査会社のYole Developpementによると、昨年のSiCウエハの全世界合計の製造数は約25万枚だったという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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