カナダのバンクーバーで開催中のOptical Data Storage 2003会議で、東芝とNECがDVDの新たな記録技術、Advanced Optical Disc(AOD)をデモ展示している。AODは、これまでのDVD規格と比べてはるかに大きい記憶容量と、製造過程における少ない設備投資、が特徴という。
AODではディスクの読み取りに、これまでの赤色レーザーではなく、短波長の青紫レーザーを用いる。既存DVDのディスク片面のデータ記憶容量が約4.7Gバイトなのに対し、「AODは片面で最大36Gバイトで、家電製品やパソコン製品に利用可能となる」(東芝)という。
しかし、アナリストの意見はまだまとまっていなようだ。米IDCでリムーバブルストレージ分野の調査ディレクターを務めるWolfgang Schlichtingは、「現在、新たな製品ラインに対する投資意欲は薄れている」と語る。このため、小規模な設備投資で済むという青色レーザー技術の利点は、製造メーカーから共感を得られる可能性があるという。
しかしSchlichtingは、「(DVDに関する)技術は、エンドユーザーの需要を先走りしすぎているようだ」とも言う。「多くのユーザーにとっては、今のDVDで十分という状態」(同氏)という。
それでも、電子機器メーカーは自社技術を最先端のものにしようと努力を惜しまない。いざというときの需要に備えるためだ。メーカーは同時に、高い利益率やユーザーの買い替え需要をもたらす可能性のある、ハードウェア/メディアの新技術も求めている。これはここ最近DVD製品の価格が急落しているためである。IDCによると、DVDドライブの価格は2002年に33%下落したという。
青色レーザーを使うDVD記録技術にはBlu-ray方式もある。Blue-rayは、ソニー、日立製作所、韓国のLG Electronics、松下電器産業、パイオニア、オランダのRoyal Philips Electronics、韓国のSamsung Electronics、シャープ、フランスのThomson Multimediaの9社が策定した規格である。ソニーは同方式に対応したビデオレコーダーをすでに日本市場で発売している(関連記事)。
これに対し、東芝とNECはDVD Forumと呼ばれる業界団体と共同作業を行っている。同フォーラムの賛同企業は現在215社である。今回、2つの青色レーザーDVD記録技術が登場したことで、これまで赤色レーザーで繰り広げられてきた「DVD+R 対 DVD-R」のような競合関係が、青色レーザーでも生まれる可能性が出てきた。
東芝とNECによるとAODは現在のDVD規格と下位互換性を持つという。なお発売時期などについては両社からまだ正式な回答は得られていない。ただし両社は以前のインタビューで、「来年にもレコーダーが利用可能になる」と答えていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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