ブッシュ大統領政権が、2006年10月から米国の全パスポートに遠隔からでも読み取り可能なコンピュータチップを搭載すると発表した。
米国務省が米国時間25日に新たに発表した規制によると、2006年10月以降に発行されるパスポートには、所有者の氏名/国籍/性別/生年月日/出生地/デジタル顔写真といった個人情報を伝送するRFID(無線認識)チップが搭載されるという。同政府は、最終的には「指紋や虹彩のスキャン」などのデータをこれに追加していく意向だ。
パスポートを携帯する人や車に向けられた強力なアンテナを使用することで、個人情報を盗み出そうとする者がチップ内の情報をかすめ取るのではという懸念を受け、この1年間で、RFIDチップのパスポート搭載に反対する声が大きくなった。2005年だけでも、国務省には本計画に関するコメントが2335件寄せられており、そのうち98.5%が反対意見だったという。不安が集中しているのは、主にセキュリティやプライバシー問題についてだった。
だがブッシュ政権は、国連組織である国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization)が立案した「国際的に相互運用可能な」標準に従いたいとして、パスポートに64Kバイトのチップを埋め込む計画を進めることを決めた。英国やドイツなども同様のプランを準備している。
国務省は25日に発表した規制の中で、チップにはプライバシー問題に対する対処策が施されると言及している。同省によれば、チップが搭載されたパスポートからは「個人の『特定』はできない」という。すなわち、「ある個人が通関地に到着し、携帯しているパスポートの正規所有者であると証明されたことは、政府組織にしか分からないようになっている。(政府組織にだけ情報が分かるというのは)従来のパスポートと同じである」というのだ。
個人情報の盗難に対する国民の不安を取り除くため、ブッシュ政権は、新パスポートの表紙には「スキミング対策素材」が使用されており、遠方で情報がひそかに読み取られる危険性が「緩和されている」ことを明らかにした。しかし、160フィート(約50m)離れた場所からRFIDチップを読み取るデモが行われたこともある強力なリーダーに対し、こうした技術がどれだけ対抗できるのかはまだ未知数だ。
匿名希望の国務省職員は米国時間25日、「パスポートに施されるシールドは、表紙が閉じられている場合にチップを読み取ることが非常に難しくなる」と述べた。ただし同職員は、この素材の組成について詳細を話すことはできないとしている。またこの日、同チップのスキミングに対する脆弱性を調査している米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology)から追加情報を得ることはできなかった。
プライバシー擁護派は、スキミング対策デバイスの導入は評価できると、CNET News.comに語った。しかし、ウェブサイトRFIDkills.comの開設者でプライバシーの保護に努めるBill Scannellは、パスポートの表紙が何かの拍子で開いてしまえば、元も子もないと指摘している。「政府は、人々のパスポートの中に小さなラジオ局を設け、それにコンクリートのふたをしようとしている。だが、ちっぽけな穴さえ開けば、音楽はそこから漏れ出てくるのだ」(Scannell)
Scannellは続けて、「何の対策も施さないよりはましだが、そもそもこんなリスクを冒すことに疑問を感じる」と述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス