自民両党、「インターネットによる選挙活動は解禁すべき」と明言

永井美智子(編集部)2009年08月17日 11時45分

 インターネットを利用した選挙活動は解禁するべき――楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏らが提出した「eビジネス振興のための政策に対する質問状」に対する回答の中で、自由民主党(自民党)、民主党いずれも選挙活動におけるインターネット利用の解禁に前向きなことが明らかになった。両党の回答は楽天がポータルサイト「Infoseek」において8月16日に公開した。

 自民党は「誹謗中傷などに対する一定の規制を課した上で認め、速やかに解禁すべき」、民主党は「なるべく早い段階でインターネット選挙運動を解禁するべき」と、いずれも積極的な姿勢を示している。

 ただし、内容には若干差がある。自民党は「ホームページ(ブログや掲示板等を含む)に限って、すべての選挙を対象に、第三者による利用も含め解禁すべきであり、メール(メルマガやブログ等の更新お知らせメールを含む)については解禁しない」とし、現行公選法の文書図画、郵便や電話に対する規制とも整合性がとれる新たな規制が必要だとした。

 これに対し、民主党は「政党や候補者に加え、第三者もホームページ・ブログ・メールなどインターネットのあらゆる形態を使って選挙運動ができるようにするべき」と全面解禁を訴えている。

 このほか、楽天から受けたほかの5つの質問に対しても、両党はそれぞれ答えている。まず、ITの利活用によるeビジネスの振興については、自民党が(1)ASP・SaaSなど中小企業にとって使いやすい新たなサービスの普及促進、(2)消費者ニーズと地域産品をマッチングさせる仕組みの構築などを進めていくとコメント。民主党は(1)高速インターネット網や次世代移動通信のエリア拡大の支援を通じてeビジネスの利用者そのものを増やす、(2)ICTを活用したコミュニケーション教育の充実、(3)中小企業に対する税制優遇措置やIT向け職業訓練の促進、(4)中小企業への支援予算の増加などによる研究開発力の強化、(5)地方分権による地域経済の振興の5点を掲げた。

 ネットでの医薬品販売規制の問題を含む規制緩和については、自民党が「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行、サービスの仕組みそのもののあり方や運用などを、国民に利益となる形で抜本的に見直すことが必要」、民主党が「現行の事業規制はゼロベースで見直す」と両党とも前向きな姿勢を見せた。医薬品販売の問題については「継続して議論していく」(自民党)、「規制のあり方の見直しを検討する」(民主党)とした。

 また、青少年保護を目的としたインターネット上の有害情報対策については、自民党が「表現の自由などにも考慮しつつ、違法・有害情報の削除といった民間による自主的な対応を支援するなど、産業界とも連携を図る」としており、自主規制などに任せる方針を示した。民主党は「有害情報対策で大切なのは、情報社会の荒波を生き抜く力=情報リテラシー教育の充実と、多くのネットユーザーによる草の根での連携と協働の積み重ね」とコメント。問題になっている青少年の携帯電話の使用規制についても、それぞれの地域や学校などが実態に応じて適切に判断すべきとし、政策としては学校現場での人材の質と数の充実を掲げた。

 通信と放送の融合については、自民党が「通信・放送の法体系を全般的に見直す法改正については、2010年の通常国会で行う」と明言。民主党は、「行政の過度な介入を阻むため、放送通信行政を総務省から切り離し、FCC(通信放送委員会)を設置することにより、事前規制から事後規制に転換を図る」とした。また、同一の者が新聞・テレビ・ラジオなど複数のメディアを所有するクロスメディア所有の是非を含め、マスメディア集中排除原則のあり方を検討するとしている。

 楽天からは「諸制度の検討に当たっては、リテラシー教育を推進した上で一定レベル以上の消費者を基準に制度設計すべきであり、それからもれてしまう人たちに対しては別途セーフティネットを設けるというアプローチが社会的コスト低減の上で適当ではないか」という質問も寄せられている。

 これについて自民党は、「子どもの学力や情報活用能力の向上を図り、課題や目的に応じて情報手段を適切に活用したり、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造したりする能力、情報や情報手段の特性を理解する能力の向上に向けた取り組みを進める」とした。

 民主党は楽天の考え方に賛成とした上で、「規制に過度に依存するのではなく、ネットユーザーのモラルの啓発と奨励、情報(社会)リテラシー向上などにより、多くのユーザーの創発と共鳴の好循環を作り出すことによって、良質のコミュニケーションを増殖させ、健全なネット社会の進化が図られることが望ましい」とした。

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