2月3日と4日の2日間、ニューヨークではOnMedia NYCというカンファレンスが開かれた。広告関連のベンチャー企業100社のプレゼンテーションがあったほか、大手メディア、広告代理店などが広告やメディアの今後について議論した。
OnMedia NYCに来ていたインターネット広告ベンチャーと話をすると、オバマ候補の選挙広告を扱ったという話をよく聞いた。大統領選とインターネット広告が深く関わっていたことが実感できる。実際、大統領選挙キャンペーンが行われていた2008年6〜9月期における米国のインターネット広告市場は、Interactive Advertising Bureau(IAB)の発表によると、前年同期比11%増の59億ドルを記録した。
オバマ大統領のインターネット選挙事務局には、Facebookの共同創業者であるChris Hughes氏が参加していたことはよく知られている。今回のOnMedia NYCに、そのHughes氏が出席し、大統領選を振り返るセッションがあった。
Hughes氏は、「Facebookでオバマ選挙用のコミュニティを作ろうとしたときには、既にオバマ支持者がたくさんいて、彼らがネット上で発言したり、意見をシェアしたいと思っていた。その枠組みをタイミングよく作れたので、今回のインターネット戦略が成功したといえる」と、今回の選挙を振り返る。
オバマ陣営のインターネットチームは、技術系とメディア系という2種類の人材で混成されていたという。Hughes氏は「IT系スタッフとライター、アーティスト、オーガナイザー、ビデオディレクターなどが同居していた。今回インターネット選挙が成功したのを見て、IT系の人材ばかりを雇用するところもあるが、それは間違っている」と語る。
インターネットについては米国内でもまだ様々な誤解があるようで、Spot-on.comの創業者Chris Nolan氏は、 「国会議員のなかには、いまだにAOLをインターネットのことと思っている人がいる」と笑った。Hughes氏も「インターネットユーザーは10代だという認識は間違っている。Facebookユーザーは10〜20代が多いが、オバマキャンペーンの支持者は30〜40代が多いはずだ」と指摘した。
Hughes氏は、「活発な議論を続け、意見を集約するという行為の価値は、マスメディアを利用しようとインターネットを利用しようと変わらない。テレビは依然として影響力がある。インターネットだけでは、選挙運営は成功しなかっただろう。しかしインターネットは、メディアというよりも草の根のオピニオンビルダーとして非常に役に立つことがわかった」と語る。
今回の選挙では、メールマガジンが口コミや支持者同士の連携に重要な役割を果たしたようだ。Nolan氏は、「デラウェア州に住んでいる私の母がオバマ氏のメールマガジンを取っていて、それがよく転送されてきた。メールは転送しやすいし、日常の会話のネタにもなる。日々のコミュニケーションが元になって、選挙で一番重要なパートである投票においても、『投票所まで車で送ろうか?』といったコミュニケーションが図りやすい」と実際の体験から利点を話していた。
Nolan氏は、「アイオワ州のキャンペーンを見て、オバマ陣営は本気だと感じた。集会の参加者の半分は会場で議論に参加していた。残りの半分はPCを開き、会場の議論をインターネットにアップロードしていた。これが、インターネット選挙なのだと実感した」と、リアルな議論をインターネット上で共有しようとする試みの模様を語った。
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