ファイル共有を理由に顧客を訴えるという、大いに物議を醸した音楽業界の戦略は、ほぼ終わりを迎えている。
全米レコード協会(RIAA)は米国時間12月19日、デジタル音楽ファイルの海賊行為が疑われる人々に法的措置を講じることは、もはや計画していないと述べた。しかしRIAAは、違法にファイルを共有している人の大半を追及しないと言うべきだった。音楽業界のある情報筋によると、RIAAは今後も、最も悪質な人物に対しては提訴を続けるという。筆者が話を聞いた大手レコード会社のある人物は、「1カ月に5000曲か6000曲をダウンロードする人は、今後も訴えられる」と述べた。
音楽ファンを告訴する戦略は、アーティストや消費者、さらには一部のレコード会社幹部からも、長年にわたり批判されていた。批判派は、そのような戦略が楽曲の購入者を遠ざけており、さらに重要なことに、戦略は奏功していないと発言してきた。だが今後、音楽業界には新しい保護の形がある。インターネットサービスプロバイダー(ISP)だ。
RIAAの新しい戦略に関するニュースを伝えたThe Wall Street Journalの記事によると、特定されていない複数のISPが、ファイル共有の常習者に対する「サービスを縮小する」ことに同意したという。サービスの縮小にはどのようなものが含まれるのか、正確にはわかっていない。しかし、この件に詳しい情報筋によると、ユーザーの帯域幅を制限する行為、通称「スロットリング」には、どのISPも同意していないという。
新しい規制システムの流れでは、まずRIAAが、ファイルを共有していると思われる顧客をISPに通報する。ISPはこれを受け、問題の人物に、ファイル共有が疑われている旨を通知する。顧客の行為が変わらない場合は、さらに何度か電子メールを送る。顧客がこれらのメールを無視した場合、ISPはその人物に対するサービスを一時的に停止するかもしれない。それでも改善されなければ、ISPがサービスを打ち切る可能性もある。
ニューヨーク州検事総長のAndrew Cuomo氏が仲介役を務めたこの計画では、音楽業界に顧客の個人情報は知らされない。これは、ISPが法的な執行力の枠組みに取り込まれたことを意味する。ISPには中立でいてほしいと願う人たちにとって、こうした事態は常に最大級の危惧になっていた。
インターネットの権利擁護団体、電子フロンティア財団(EFF)で法律ディレクターを務めるCindy Cohn氏は、次のように述べている。「これは非常に厄介だ。法廷で審議もされずに、法を犯したという主張に基づいて、インターネットにアクセスできない人の名簿が作成される。(RIAAが)個人を訴えるのをやめたがっているのは良いことだが、彼らは最初からそんなことをするべきではなかったのだ。私が特に懸念するのは、レコード会社が個人をあるISPから追い出し、次に別のISPから追い出したり、ブラックリストを作成するといったことが可能になるのではないかということだ。個人に法的な対抗策をとることについて、われわれが恐れていたのは、まさにこのことだ」
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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