マサチューセッツ州ケンブリッジ発--Wikipediaの共同創設者Jimmy Wales氏が、Wikimedia Foundationのこれからのビジョンを提示した。それによると、Wikimedia Foundationでは今後、オンライン百科事典Wikipediaの質を向上させることや、新しいプロジェクトや今までWikipediaが立ち上がっていなかった国々への「フリーカルチャー」の浸透を目指す計画だという。
Wales氏は当地で開催中の「Wikimaniaカンファレンス」で基調講演をした。今回で第2回目を迎える年次イベントのWikimaniaカンファレンスには、世界中から多くの人々が集まり、wikiと呼ばれる共同執筆のウェブページについて議論をした。Wikimedia Foundationは、オンライン百科事典Wikipediaとその周辺プロジェクトを運営する非営利団体で、Wales氏はその理事を務めている。
同氏は「世界中のあちらこちらに、フリーカルチャーを浸透させ、成長させるチャンスが満ちているとわたしは考えている。政治の世界もその一例だ」
同氏は講演のなかで、起伏に富んだ1年間を振り返った。Wikipediaは、ジャーナリストJohn Seigenthaler氏などの誤った経歴情報が掲載されたことで非難を浴びる一方で、Nature誌からは自然科学の項目について、誤まった情報が少ないとしてNature誌から評価されていた。
Wikipediaの人気は健在である。たとえば英語版Wikipediaには2006年に100万項目以上のエントリーが投稿された。しかしWales氏は、Wikipediaユーザー(「Wikipedian」とも呼ばれる)が、量よりも質を重視すべきだと述べている。Wikimedia Foundationには5人のフルタイム従業員がいるが、Wikipediaへの投稿はボランティアが行っている。
同氏によると、知識共有のための複数の取り組みを始めたWikimedia Foundationでは、コンテンツの品質を向上させるための取り組みを開始し、学者を擁する諮問委員会を立ち上げなら、事業を拡大していく予定だという。
Nature誌による調査では、サンプル1項目あたりの誤りの数が、Encyclopedia Britannicaでは約3件だったのに対し、Wikipediaでは約4件だったという結果が得られている。これについてWales氏は、「われわれは運がよかった」という。Wikipediaは自然科学の分野に強いが、人文科学の分野はこれに比べると弱いと、同氏は述べる。
同氏は「Britannicaを目標にしているが、まだ及ばない」と述べた。
Wales氏によると、ドイツではユーザーが荒らし行為をできないように機能が制限された「stable version」の試験を始めるという。
さらに、wikiを普及拡大させるための複数のプロジェクトと、投稿をより容易にするための技術プロジェクト1件を実施することを同氏は発表した。
マサチューセッツ工科大学のMedia Labで始まったOne Laptop Per Childのプロジェクトが、マシンのコンテンツレポジトリにWikipediaを含めることを決定したと同氏は述べる。
Wikimedia Foundationは1カ月以内に、あらゆる年齢層と言語を対象としたフリーのオンライン講座素材を作るプロジェクト「Wikiversity」を発足させる。6カ月間のベータトライアルは、3つの言語で開始される。
知識のある人をより多く呼び寄せ、Wikipediaに貢献してもらうために、Wikia(wiki運営のためにWales氏が共同出資した営利会社)はSocialtextと提携してwikiページの編集を容易にする予定だという。
Wales氏は「問題は、技術的な障壁だ。深い知識をもっているがコンピュータには詳しくないという人々が、エントリに書き込みにくいことだ。さらに悪いことに、この障壁は困った書き込みを防ぐ役には立たない」という。
WikiaとSocialtextで商用のwikiソフトウェアを製作するエンジニアらは、オープンソースのwikiエディタWikiwygを、Wikipediaのサイトでも利用されるバックエンドソフトウェアMediawikiと連携させるプロジェクトに従事する。このプロジェクトの成果物について、リリース日は明らかにされていない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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